さよならを君に
愛していました
たった一言。
その一言を告げて、彼女は僕の目の前から消えた。
伸ばした手は空を掴んで、上げたはずの声は喉の奥から姿を見せなかった。
ねぇ、待って
喉の奥にいた声が、夜空を駆ける。
今更、なんて思う暇もなく……消えた彼女を探して走り出した。
違うんだ、違うんだ、違うんだ。
何が、なんて考える暇もなく、息が苦しいのに足は止まらない。
じわじわと滲む景色に嘘だと叫んだ。
そう、こんなのはきっと嘘だ。
だって僕はまだ……
耳の奥で車が必死に止まろうとする音が響く。
景色が二転三転する。
何が起きたのか、脳が理解していく。
ああ……! ああ、そうなのか……僕はもう……!
受け入れられないけれど、受け入れなければいけない現実。
遠く聞こえた「さようなら」に、彼女はもうこの現実を受け入れたのかと温かい雫が落ち、足が止まった。
ああ、君は強いんだな……それなら、僕も言わなくては……強くて、優しい君に幸福を。
「さようなら」