???
どうして。
目の前を阻む氷柱を睨み、歯噛みした。
アレがないと、神様をお迎えすることができないではないか。どうして私の邪魔をするの。私は尊い救いの為に動いているのに。
許さない、許さない。
「あーあ」
ふと、辺りの音が一斉に消失したかと思えば、何処からか声が聞こえた。
キンと静まり返る静寂のなか気がつくと、氷の向こう側には≪天使様≫が居た。
誰も気付いた様子はない。いつも、≪天使様≫が現れるのは私の前でだけ。この瞬間、私と≪天使様≫以外何もかもが止まる。音も、時の流れも。
「取られちゃったねぇ。これじゃあカミサマは呼べないなぁ」
フードを目深に被った出立の≪天使様≫は、少し拗ねた様に言う。機嫌を損ねてしまったかもしれないと、私は焦燥に駆られる。彼らに見放されてしまったら、人類に救いが無くなってしまうのだから。
「でもま、ここに居る全員分を使えば、それなりにマシなモノが呼べるかもしれないね」
隙間から伺うことができる口元が、綺麗な弧を描いた。
ああ。
そこで私は悟りました。
神様は、大いなる慈悲を持って、私たちを許してくださるのだと。
もう恐れることはない。私たちは、光溢れる幸福の地へと導かれるのだ。
女は喜びに涙した。
戸惑いの表情を浮かべる他の信者達には目もくれず、与えられるものを受け入れるように両手を広げた。唇と瞳は、これ以上はないと言わんばかりの幸福に弧を描く。
光が周囲を包んだ。
それは神々しさとは対極にあるような、禍々しい光だった。




