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硝煙のエリュシオン  作者: すずなか
― Case2:Jaldabaoth ―
32/39

???


 どうして。


 目の前を阻む氷柱を睨み、歯噛みした。

 アレがないと、神様をお迎えすることができないではないか。どうして私の邪魔をするの。私は尊い救いの為に動いているのに。


 許さない、許さない。


「あーあ」


 ふと、辺りの音が一斉に消失したかと思えば、何処からか声が聞こえた。

 キンと静まり返る静寂のなか気がつくと、氷の向こう側には≪天使様≫が居た。


 誰も気付いた様子はない。いつも、≪天使様≫が現れるのは私の前でだけ。この瞬間、私と≪天使様≫以外何もかもが止まる。音も、時の流れも。


「取られちゃったねぇ。これじゃあカミサマは呼べないなぁ」


 フードを目深に被った出立の≪天使様≫は、少し拗ねた様に言う。機嫌を損ねてしまったかもしれないと、私は焦燥に駆られる。彼らに見放されてしまったら、人類に救いが無くなってしまうのだから。


「でもま、()()()()()()()()()使()()()、それなりにマシなモノが呼べるかもしれないね」


 隙間から伺うことができる口元が、綺麗な弧を描いた。


 ああ。


 そこで私は悟りました。

 神様は、大いなる慈悲を持って、私たちを許してくださるのだと。


 もう恐れることはない。私たちは、光溢れる幸福の地へと導かれるのだ。




 女は喜びに涙した。

 戸惑いの表情を浮かべる他の信者達には目もくれず、与えられるものを受け入れるように両手を広げた。唇と瞳は、これ以上はないと言わんばかりの幸福に弧を描く。

 光が周囲を包んだ。

 それは神々しさとは対極にあるような、禍々しい光だった。


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