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目を開けると、白の景色は地平線の彼方まで広がって、そこに風はなかった。
地平線の彼方まで続く景色の中に木や構造物があるわけではなく、まして空や海、そして大地があるわけでもない。
太陽というエネルギーの塊が無く、夕闇も朝焼けも訪れないここには、変則的に動く幾何学の光が満ちて目に痛い。首を動かして上を見上げると、そこには輝きを放つ霧状の帯が漂っているのがわかる。
それは白く、辺りを照らすキラキラと光る帯。
それは一時として同じ姿をしておらず、しかし一度も変わってなどいないような、幾何学の輝きだった。
白を知覚したのは、いつからだったのだろうか、他の色はどうして無いのだろうか。そんな疑問が静かにひろがる。
幾何学の光が乱反射して、揺らめいているようだった。揺らめきは辺りに広がって、天井も壁も地面もないこの空間に、波紋となって広がっていく。
上を、正しくは上ではないかもしれないが、見上げた時に見つけた帯状のきらめきが、ふわりと波紋を撫でつけた。撫でられた波紋はそこで形を変えて、新たな波紋となって広がっていく。
辺りの波紋とぶつかり、瞬き、そして弾けて消える。
白から青へ、青から赤へ、赤から黄色へ、そして白へ。
変わっていく色の中間に、きらめく紫や緑が、映っては瞳の中できらめいて、麗らかな光が、無邪気な子供のように跳ねまわる。
ふと、自分の色が気になって、足元を見下ろした。
胴の真ん中にぽかりと開いた穴から、どろりとコールタールのような液体があふれて、足元を汚していた。辺りでさんざめく光が、その黒い粘液に触れて、もがくようにスパークした後、その黒の中で絶命した。
溢れ出る黒い液体を押さえようと穴を両手で塞いでみるが、小さすぎる両手では大きい穴を埋められるわけでもなく、足元に零れ出て水たまりになって行く。
どんどんあふれる黒い液体、それと共にこみあげる喪失感は、両手の力を奪っていくようだった。
水溜りはやがて池に、池は湖に。
そうして、黒に囚われ数多の光は絶命した。




