bug(失敗作)
読んで貰えると嬉しいです。
午後2時28分。
カルロスは、一匹の虫の入ったガラス瓶を持ち、研究室へ入って行った。
そこにはもうゲイルが待っていて、
「お前、何匹捕まえた?俺は探し回ったっていうのに、一匹しか捕れなかった」
とガッカリした様子でカルロスが言うと、
「こっちは結構捕れましたよ。それに、ほら、肉も買っておきました」
と、虫の入ったガラス瓶と袋に入った肉の塊をカルロスに見せた。
「バグの奴には贅沢過ぎねぇか?」
「バグ?この虫の事ですか?」
「あぁ、自然のせつりに反している失敗作で、虫だからバグ。呼び名位無いと呼びずらいだろ、だから考えたんだ」
「そうでしたか」
「そういう事。それじゃあ始めるか」
ゲイルの傍に歩み寄り、自分の持っているガラス瓶を台に載せ、台の上に載っている大きな水槽にゲイルから受け取った肉の塊を入れ、透明で小さな空気穴の幾つかあいた蓋を少し隙間を作るように載せ、その隙間からバグを入れ、急いで蓋を閉じ、蓋が外れない様にテープでグルグルと目張りをし、中の様子を食い入る様に見詰めた。
水槽の中では、バグが獲物を狙う様に肉の塊の上をグルグルと旋回し、ゲイルはその様子をジッと見詰めているカルロスの横で、腕を痛そうに摩っていた。
「ん?ゲイル、腕どうかしたのか?……まさか、バグに刺されたんじゃあ……」
心配そうにカルロスがゲイルの方を見ると、ゲイルは、
「そんなんじゃありません」
と安心させる様に笑い、
「これは、バグを探す時に薔薇の棘で傷付けてしまっただけなんです」
と、腕を摩るのを止め、水槽の方を向いた。
水槽の中のバグは、ゆっくりと肉の塊の上に止まり、その尻の先の針をブスリと刺していた。
「成功したみたいですよ」
ゲイルが、目だけで横に居るカルロスを見ると、カルロスは水槽を見詰め、
「そうだな。後は、この肉をこいつの子供が食い破って出てくれば、完全に成功だ。それを見たら、こいつの殺し方を見付けるだけだ」
と頷いた。
「それじゃあボクは、殺虫剤の試作品をあっちで作ってますので、カルロスさんはここでバグの様子を見てて下さい」
ゲイルはそう言うと、薬品の並んでいる方へと歩いて行った。
マスクとゴム手袋をし、台の前の椅子へ座ると、色々な薬品の瓶を手に取り考え、その中の数種類の薬品を数滴ずつビーカーに垂らし、ちょっと違う、これならどうだ?と色々と試し始めた。
幾つか完成した薬を、蓋付きの小さな瓶にそれぞれ入れ、紙に使用した薬品を書いていると、急にカルロスが、
「で、出てきたっ!」
と叫び、ゲイルは薬品の入った瓶を倒さない様にそっと立ち、カルロスの許へ駆け付けた。
「出てきたって、早すぎませんか?」
そう言い、ゲイルがカルロスの横に立つとカルロスは、
「そうなんだけどよ、本当に出てきたんだよ」
と、水槽を指さした。
カルロスの指さした方を見ると、そこには今にも肉から抜け出そうとしているバグの姿があった。
他にも、もう肉から出ていたバグが、最初に入れた親バグと共に飛び回っていた。
「これで、こいつが原因だったって事が判明したな。後は、お前の作った殺虫剤が効くか試すだけだ、頼んだぞ」
カルロスが、そう言いゲイルの方を見ると、ゲイルは水槽を見詰めたまま、不安そうな顔で腕を摩っていた。
「やっぱりお前、刺されたんじゃないのか?」
再びカルロスが心配そうに訊くと、ゲイルはすぐに腕を摩るのを止め、
「違いますよ」
と力無く笑い、
「幾つか試作品は出来てるので持ってきます」
と、少しの違和感を感じさせつつ歩いて行き、試作品の入った小瓶を七つしっかりと腕に抱え戻って来た。
「刺されたんじゃねぇって言うなら、どうしてそんなに不安な顔してんだ?」
小瓶を全て台の上に置き、一つ目の瓶から水槽の蓋の空気穴に薬を数滴垂らしていると、その横でカルロスがゲイルの顔を覗き込み、怒る様な顔で訊いてきた。
ゲイルは、ビクッと驚いた様な顔をしたが、瓶の蓋をしてカルロスから少し視線を逸らし、
「もし、このバグを初めて見た時や捕まえた時に刺されてたら……と、考えたら恐ろしくなっただけです。心配しないで下さい」
と答え、台の上に瓶を置き、水槽の中の様子を見詰めた。
「そうか……」
カルロスは、一応納得した様に呟くと、ゲイルの事を気にしつつ、水槽の中の様子を見る事にした。
七つ目の薬を水槽に入れて30分が経った。
それでも、水槽の中のバグは元気で、どんどんその数を増やしていった。
それから、色々な薬品を幾つも入れ試したが効果は無く、火には弱いだろう、水には弱いだろう、電気には……と試したが、それも効果は無く、火がつけられたりする度、卵の姿に戻る様にして丸くなり、死から逃れていた。
「くそっ、薬も駄目、水も火も電気も駄目、やれる事やって全部が駄目だなんてどうすれば良いんだよ……」
カルロスが、イライラを抑えきれずに頭を抱え唸っていると、ゲイルは前に描いたバグのスケッチを見詰め、
「そういえば、前にこの絵に似たものどこかで見た事あるな……」
「えっ?それどこだ?どこで見たんだ?」
カルロスが驚いた様に顔を上げ、ゲイルの方を見ると、ゲイルは、
「どこだったかな?」
と考え込み、
「あ、思い出した。確か、ボクの祖父が使っていた研究所の書庫です。……でも、あそこは……」
と言いかけたが、カルロスはそれを聞かずに立ち上がり、
「よし、お前の祖父さんの研究所だな、行くぞ」
と、ゲイルの腕を掴み駆け出した。
はじめましての方もそうでない方も読んで下さりありがとうございます。
ワクワクすっぞ(笑)
では、次の作品でお会い?しましょう。
ここまで読んで下さりありがとうございました。




