騒がしい破壊と静かな目覚め
良ければ読んで下さい。
サルネス暦2136年8月21日午前8時5分。
木々が鬱蒼と茂る森の中、もはや廃墟と化し人も寄り付かない様な建物の周りに、多数の解体用機材が並び、その傍で数人の作業員が解体作業の準備を進めている。
「何だか不気味な建物ですね。僕、こんな古い建物初めて見ましたよ」
作業員の中で一番若いジャックという男は、今から解体される建物を見ると溜め息混じりに呟いた。
「そうだな、実は俺もだ」
ジャックの横で煙草を吹かしていた中年男のフィアースは、そう言うとしゃがみ込み、煙草の煙を空に向かって思い切り吐き出し、建物を見上げた。
「確か、この建物は三百……否、五百年以上前から建っている物だって聞いた事があるぞ」
「五……五百年!?そんなに前からですか?」
ジャックが驚きフィアースの方を見ると、フィアースは、
「ジャック、そんなに驚く事じゃないだろ。俺等が知らないだけで、他にももっと昔から建っている物が沢山あると聞いた事があるぞ。五百年なんてな、まだまだ若い方なんだよ、お前さんみたいにな」
と笑った。
ジャックは、それを聞いて少しの間機嫌が悪く膨れっ面をしていたが、建物を再び見ると、何かを思い付いた様に考え込んだ。
「そういえば、一つ気になる事があるんですけど、確かこの建物って五十年以上前に閉鎖されて、それからずっと使用されてませんでしたよね?五十年以上の間そのままにしておいたのに、何故今になって急に壊す事になったんでしょう?」
「今まではな、この建物の所有者が解体をせずに残しておくと言っていたんで、壊されなかったんだ。だが、その所有者が突然死んでな、その人物には血縁者も建物を引き継ぐ人間も居なかったもんだから、この土地も建物も国の物になった。でな、その国としては、もう使えそうもないこんな古いだけの建物なんて早々に解体しちまって、新しく建物を建てるなり何なりした方が土地が有効利用出来ると考えたんじゃないか?使えない物を残しておいても意味なんて無いからな」
「そういうものですか?……僕は、古い物をどんどん壊して新しい物に変えてしまうっていう考え方、あまり好きじゃないです……って、そうじゃなくて、もう一つ気になる事があるんですよ」
「ん?何だ?」
「何だかとても頑丈な建物でしょう?まさか、危険物かなんかが残ってる……なんて事ありませんよね?例えば、その……爆薬……とか……」
「爆薬?無い無い。ここの事はよく知らないが、上の連中の話しでは、そんな危険な物を扱う所じゃなかったらしい。だから、心配は要らねぇよ。そんな事より、皆準備出来たみたいだから、俺等も始めるぞ」
フィアースは、煙草の吸殻を携帯灰皿に入れクレーン車へと乗り込み、ジャックも別のクレーン車へ乗り込むと、解体作業は大音量と共に始まった。
この時、この建物の中に爆薬よりも恐ろしい物があった事を知る者は誰一人として居なかった。
そして、碌に調べもせず、そこに隠されていた物の存在を知らずに解体を始めてしまった為に、後に恐ろしい事が起こってしまうという事も彼等は知らずにいた。
しかも、この場所ですぐにそれが起こったわけではないので、この解体作業が悲劇への引き金になったという事を知る者は誰一人として居なかった。
しかし、この時確実に悲劇へのスイッチは押され、解体する音以外の音も無く静かにそれは眠りから目を覚ました。
はじめましての方もそうでない方も読んで下さりありがとうございます。
何かねぇ、始まりましたね。
謎がいくつか?散りばめられている……と思います……(笑)
次からもっと面白くなる予定です。
よ、予定ですからね?
では、次の作品でお会い?しましょう。
ここまで読んで下さりありがとうございました。




