最期
読んで貰えると嬉しいです。
午後7時36分。
輸血を終え体調も戻ったカルロスとルークは、バグを駆除しに行くと言って出て行ったままいつまでも戻らないゲイルを探しに外へ出ていた。
ゲイルの出て行った隠し扉の先へ行ってみると、そこには小さめの庭があり、その中央に四角い小さな装置が置かれ、その装置の周りには数千数百のバグの死骸が落ちていた。
「バグの奴が死んでる……ゲイルが殺ったのか?……それにしてもどうやって……」
「あと、ゲイル君が何処に居るのかも気になりますね」
「そうですね」
カルロスとルークが心配そうに考えていると、庭木の影からゲイルに似た青年が腕を摩りながら歩いて来た。
それに気付いたカルロスが青年に近付き、
「キミ、こんな所で何をしているんだ?」
と訊き掛けて、
「いや、そんな事より、この辺で小さな子供を見なかったか?白衣を着た、金髪で左右の目の色の違う、キミにそっくりな男の子なんだ」
と言うと、青年は不思議そうにカルロスを見詰め、
「何を言ってるんですか?ボク、ゲイルですよ」
と言いしゃがみ込んだ。
「バグを駆除したら疲れましたよ」
「ゲイル?本当か?お前体がでかくなってるぞ」
「あぁ、そうなんですよね。バグを駆除する時、自分の体を刺させたんですけど、気が付いたらこうなっていたんですよね。視界が高くて変な感じです」
「何?そんな事したのか?」
「はい。ボクは刺されても死ぬ事はありませんし、それ以外に方法が無かったので」
「しかし、どうやって大量に集めたんです?」
「ボクの血を使ったんです」
「ゲイル君の血を?どういう事なんですか?」
「ローリング博士の言葉に、ボクの血がバグを殺す力があるというのがありましたが、他にもう一つあったんです。ボクの血が、バグにとって毒にもなるが、とても魅力的なものでもある、その血の匂いで全てのバグを呼び集める事が出来るという事が。それで、前に蜂を集める為に使ったこの装置の蜜を入れる部分にボクの血を入れ呼んだんです」
「で、自分の体を刺させたっていうわけか?」
「はい」
「……何やってんだよお前は!それでもしもの事があったらどうすんだよ!こんな沢山のバグのに刺されて死なないっていう保証なんてねぇんだ。それでもし死んだら……お前が死んでたりしたら、やり切れねぇじゃねぇか。それに、お前の命を犠牲にして自分が助かるなんて俺は嫌だっ」
涙目になりながら一気にそう言うとカルロスは、震える腕でゲイルを抱き締め、
「でも良かった。お前が死ななくて本当に良かった」
と微笑んだ。
それを見るとゲイルは、緊張の糸が切れた様にポロポロと涙を流し、カルロスがそれを見てオロオロし、
「ど、どうしたんだ?」
と訊くと、
「もしかしたら死んでいたかもしれないと思ったら急に怖くなったんです」
と震え出した。
「大丈夫だ、お前は生きてる、もう心配は要らない」
そう言ってカルロスがゲイルの頭を優しく撫でると、ゲイルは落ち着きを取り戻してバグの死骸を見下ろし、
「あれ、どうしたら良いんだろう」
と呟いた。
カルロスも、
「そうだな……」
と考え、バグの死骸を見ると、何かを思い付いた様にニヤリと笑い、
「燃やしてしまおう」
とライターを出し、周りに燃え易い物が無い事を確認し、ポケットから出した紙に火をつけバグの死骸の上へと放り投げた。
すると、バグの死骸は見る間にどんどん燃えていき、あっという間に灰へと姿を変え、カルロスはそれを見ながら、
「バグの奴も最期は呆気なかったな」
と呟き、まだ残っていた火を踏み消した。
「やっと終わった。これで一安心だな」
カルロスが微笑みゲイルの方を見ると、ゲイルは灰を見詰めたまま、
「ボク達人間がバグの様な存在にならないと良いですね」
と呟きカルロスの方を見た。
「あぁ、そうだな」
カルロスはそう答えると、ポケットから煙草を取り出し吸い始めた。
バグの様な存在……他の生物を殺し破滅へと追い込む者。
果たして人間はそうではないと言い切れるのだろうか?
人間もいつか、あのバグの様に他の生物から危険生物として駆除される時が来てしまうのではないかと。
しかし、カルロスはすぐに考えるのを止め、そうならない様に願った。
そして、ゲイルの方を再び向くとニヤリと笑い、
「これからオレの家でパーティーするぞ!」
と言い、
「今からですか?」
「何の準備も出来ていないじゃないですか」
と困惑するゲイルとルークを連れ嬉しそうに歩き出した。
はじめましての方もそうでない方も読んで下さりありがとうございます。
次がエンディングです。
楽しみな様な複雑な気分です。
では、次の作品でお会い?しましょう。
ここまで読んで下さりありがとうございました。