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クラスメイト

「イルヴィス君。時間だから戻りますよ」


 イルヴィスが教室を出てから学園内を歩いていると、後ろからアレーナに声をかけられた。


「まだ少し時間がありますよね」

「予定の時間には、でしょ。他のクラスの生徒も皆自分のクラスに行きましたよ。あと残っているのはあなたくらいですよ」

「そうですか。それならそろそろ戻らなくてはいけませんね」

「1つ質問しても良いかしら」

「なんですか。時間がないので手短にお願いしますよ」

「さっきのアレックス君の件だけどどうしてあのようなことをしたの?いつものあなたなら最初から気にかけるなんてことはなかったと思ったのだけれど」


 教室に戻ろうとするイルヴィスに対してアレーナはアレックスへの態度が気になり質問をした。


「確かにいつもならもう少し様子を視たでしょう。

 ただ今回はある人物から頼まれましてね」

「頼まれたということはまたガルシア宰相から仕事ということ?」

「仕事ではありませんし、ガルシア宰相からでもありませんよ」

「えっ。仕事ではないんですか」


 イルヴィスの発言はアレーナを驚かせるには十分だった。

 以前イルヴィスに仕事を依頼したことがあるアレーナからすればイルヴィスは基本的にかなり親しい人物でもない限り、無償で頼まれ事をするような人物ではない。

 また、アレーナ自身は日頃からイルヴィスのことを友人として接しているが、イルヴィスは知り合い以下と思っているため、ガルシア以外にも友人が増えたことに驚きの表情をした。


「アレーナ先生、あまり首を突っ込まないようにしてくださいね」


 イルヴィスからの要求にアレーナはため息をついて返事をした。


「わかりました。この件はイルヴィス君に任せます。ですが、問題が発生しそうな場合は対処させてもらいますからね」

「問題はおこさせませんよ。もう時間ですし、教室に戻りましょう」

「私が呼びに来たのですが……」


 2人は会話を終え、教室に戻っていった。

 

 

 

 2人が教室に着くとそこにはすでに9人の生徒が座っていた。


「イルヴィス君以外は皆揃っていたみたいですね。イルヴィス君は空いている席に座ってください」


 教室には前列に3台、中列に4台、後列に3台並べてあり、イルヴィスは空いている前列の中央の席に座った。


「皆さん入学おめでとうございます。私はこのクラスの担任のアレーナ・ハルモニアです。よろしくね。一応副学園長なので一通りの授業を担任しますが、副学園長の仕事が多い場合は他の先生や副担任のケイローン先生が代理で授業を行ってくれます。ケイローン先生は今日は忙しいらしいので今度つれてきますね。私は武術よりも魔法が得意なので魔法の質問はいくらでもしてください。ケイローン先生は武術も魔法も得意なので本人の許可はとっておくので、ケイローン先生に質問に行っても構いませんよ。それではまず自己紹介を行ってもらいます。入学試験の成績の低い人からお願いします。まずはテオバルト・ホルツマン君」


 焦げ茶色の髪のがっしりとした少年が立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。はじめまして。テオバルト・ホルツマンです。強化魔法以外の魔法はあまり得意ではなく、武術の方が得意です。よろしくお願いします」


「次はステラ・マクベスさん」


 藍色の髪をした眼鏡をかけた少女が立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。はじめまして。ステラ・マクベスです。武術よりも魔法が得意です。特に風系統の魔法が得意です。よろしくお願いします」

「次はマカオン・ガレット君」


 マカオンが立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。はじめまして。マカオン・ガレットです。自分は武術の特に剣を得意としています。アレックス殿下の護衛も勤めています。よろしくお願いします」

「次はティナ・グリフィスさん」


 シュロスよりも少し濃い水色の髪の少女が立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。皆さんはじめまして。ティナ・グリフィスです。私は水系統の魔法が得意です。この学園では武術の腕を上げられるようにしたいです。よろしくお願いします」

「次はニコラス・レイフォード君」


 朱色の髪をした少年が立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。皆さん、はじめまして。ニコラス・レイフォードです。僕は火系統の魔法が得意です。実家が鍛冶師なので学園では武器のことや火系統の魔法のことを学びたいです。よろしくお願いします」

「次はシャルロット・ハンセンさん」


 黒髪の少女が立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。はじめまして。シャルロット・ハンセンです。私は特に魔法か武術のどちらが得意とかはないです。よろしくお願いします」

「次はシュロス・グリフィス君」


 シュロスが立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。皆さんはじめまして。シュロス・グリフィスです。自分はマカオンと同じくアレックス殿下の護衛をしております。魔法が得意で風系統をよく使用します。妹のティナ・グリフィスともどもよろしくお願いします」


 シュロスの言葉にクラスの半分はシュロスとティナを見比べていた。


「次はエレナ・ユーステスさん」


 緑色の髪をした少女が立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。皆さんはじめまして。エレナ・ユーステスです。武術はあまり得意ではないですが、土系統の魔法が得意です。実家が花屋と料理屋をやっているのでよろしければいらしてください。これからよろしくお願いします」

「次はイルヴィス・ヴェスパール君」


 めんどくさそうにイルヴィスは立ち上がり自己紹介を始めた。


「はい。イルヴィス・ヴェスパールです。よろしくお願いします」


 そしてすぐに座ったのだった。


「イルヴィス君。他に何か言うことはないですか」


 アレーナが呆れながらイルヴィスに質問するが、何もないとばかりに首を横にふる。


「魔法が得意とか、武術が得意とかはあるでしょう」

「言わないとですか」

「言ってください」


 イルヴィスはため息をつきながら立ち上がり再び自己紹介をした。


「魔法も武術もある程度はできます。特に糸魔法をよく使います」


 そう言うとアレーナが笑顔になったのを確認して席に座った。


「それでは最後はアレックス・ポスポロス君」


 アレックスはアレーナに名前を呼ばれると、少しイルヴィスのことを見てから立ち上がり、自己紹介を始めた。


「はい。はじめまして。アレックス・ポスポロスです。得意な魔法は火系統の魔法です。武術も多少はできます。クラスメイトの皆さんにお願いがあります。自分はこの国の第一王子という立場だが、皆には普通のクラスメイトとして接してほしい。もちろん、シュロスやマカオンの二人にもだ。これからの学園生活よろしくお願いします」


 アレックスの言葉にクラスにいるほとんど全員が驚いていた。

 特にシュロスとマカオンは今にもアレックスにたずねようと席から立とうとしている。


「皆さん落ち着いてください。今日は入学式とクラスの自己紹介のみで終わりにします。なにかやりたいことがあれば今言ってもらえれば準備できるものなら残りの時間で行いますが、何かありますか。周囲の人と話し合っても構いませんよ」


 少し騒がしくなっていた教室内を静かにし、アレーナはクラス全体にたずねたのだった。

 その言葉を受けクラス内ではお互いにやりたいことはないか周囲の人と話し合っている。

 その中でマカオンは真剣な表情をしてイルヴィスを見た後、アレックスのほうを向いて少し考えるそぶりをみせてから手を上げた。


「マカオン君、何ですか」


 アレーナはマカオンが手を上げるとすぐに反応してマカオンに質問した。


「自分はイルヴィス君と模擬戦を行いたいのですが………」

「マカオン!」


 アレックスがマカオンの言葉に驚きすぐさま止めようとするが、アレーナがその言葉を遮り話を進める。


「それなら問題ないですよ。模擬戦できる場所は確保していますし、イルヴィス君も問題ないので」

「待て、俺はそんなこと「問題ないですよね」」


 イルヴィスの意思を無視して勝手に決められたことに反論しようとするも、とても良い笑顔のまま言葉を遮るアレーナにイルヴィスは口を閉じたのだった。


「それでは他に何もなければ一先ず最初は模擬戦を行い、その後は時間をみて決めていくということでよろしいでしょうか?」


 アレーナがクラス全体に確認をとると特に異論もなく、そのまま演習場へと向かった。

 

 

 

 演習場につくと、イルヴィスとマカオンは模擬戦を行う四角形の白線の中に、その他の生徒は白線から少し離れたところで見学していた。

 アレーナは白線のすぐ脇で審判をするための 準備をした。


「それでは二人の準備ができているなら模擬戦を始めます。問題ないですか?」

「問題ないです」


 マカオンは木でできた訓練用の剣をもちながら返事をし、イルヴィスもうなずくことで返事をした。


「模擬戦はどちらかが敗けを認めるか、私が続行不可能と判断した時点で終了とします。また、相手にひどい怪我を負わせたりしないように注意してください。問題が発生した場合は私がすぐに中断させます。それでは模擬戦開始!」


 先程の模擬戦を観ていたマカオンはすぐに攻撃することはなく、自身に強化魔法の『身体強化』をかけると、火魔法『ファイアーボール』を作りだしイルヴィスに向かって打ち出した。

 対するイルヴィスはマカオンがすぐに攻撃してこないとわかると、『ファイアーボール』を避けながら、糸魔法『粘着糸』を発動し、粘着性の糸を球状にすると、糸魔法『伸縮糸』を発動させその先に『粘着糸』でできた球場の糸を付けてマカオンの様子を伺った。

 マカオンはさらに数発『ファイアーボール』を撃ち込むと徐々にイルヴィスとの距離を縮めて一気にイルヴィスに詰め寄った。

 これを読んでいたらしいイルヴィスはそのまま右側に糸を飛ばし、『伸縮糸』の能力を使い、その攻撃を回避する。


「何故、攻撃をしない」

「攻撃があまり好きではないからかな。それに必要ないし」


 突然マカオンから話しかけられイルヴィスは一瞬驚くも、すぐに返事を返す。

「必要ないとはどういうことだ 」

「そのままの意味さ。攻撃をするほどのことでもないからな」

「なら攻撃をさせるまでた!」


 イルヴィスの言葉にマカオンは感情的になり、そのまま真っ直ぐイルヴィスに向かって攻撃を仕掛ける。

 ここで待っていたとばかりに先程のアレックスとの模擬戦のようにイルヴィスは自身の正面に『伸縮糸』を張り巡らす。

 しかし、マカオンは後少しで『伸縮糸』にぶつかるというところで飛び上がり、糸を飛び越えそのままイルヴィスに向かって攻撃を仕掛けた。

 だがイルヴィスはこれも予期していたようにすぐさま新しい糸を自身の上に張り巡らした。


「予想済みか。ならば切るのみ」


 マカオンは空中で剣を振り下ろし一気に糸を切ろうとした。

 糸は始めこそ切れたものの何十にも重なっており、さらに『粘着糸』だったため、徐々にマカオンの身体と剣を粘着性の糸が巻き付き動けなくした。


「これで模擬戦終了だな」

「はい。自分の敗けです」

「マカオン君の敗北宣言により試合終了です」


 マカオンが敗北を認め、試合は終了した。

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