表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

情報屋をやりながら学生をしています

 ガルシアの依頼を受けてからは一先ず王子と付き人の学力に関する情報を集めた。

 今回の依頼の性質上、王子の近くにいることが要求されるため、イリアス学園の入学試験の結果によって分けられるクラスは王子と同じになるのが好ましい。

 イリアス学園の入学試験は知識を問う筆記試験と魔法または武術を選択して行う実技試験がある。

 王都では秀才と言われている第一王子なので噂通りなら特に問題はないのだが。


 調査の結果判明したことは第一王子は噂通りの秀才で魔法や武術にも長けていること。

 付き人二人も王子と同じクラスになれるくらいには勉強ができるようだ。

 実技試験に関しても、こちらも王子はもちろん付き人二人もある程度は魔法や武術が使えるようなので心配はいらないようだ。

 これで安心してイリアス学園の成績上位者のクラス、Sクラスを目指せるわけだ。

 まあ、Sクラスは人数が少ないので他の貴族など面倒くさい奴等に絡まれることも減るからありがたい。

 絡んできたところであまりにも酷ければ足がつかないように情報を流して実家を潰せば問題ないだろうけどな。


 依頼を受けてから数日後。

 イリアス学園の入学試験の日になった。

 学園にはすでに多くの受験者とその家族がいた。

 この中から毎年130人の合格者が出る。

 王国にある唯一の国立学園ということでかなりの倍率のようだ。

 俺はさっさと受付をすませて筆記試験の教室に向かった。


 教室にはすでに20人ほどの受験者が来ていた。

 皆勉強しているようだ。

 俺はまあやることもないし取り敢えず指定されている一番後ろの席に着いて寝た。


 やけに静かだと思い、起きて周りを見てみるとどうやらすでに試験は始まっているようだった。

 ちなみに残り時間は半分弱。

 えっ、焦らないのか、だって。

 別に焦る必要はないのだ。

 なぜなら俺自身が国が発行する教師資格を持っているので入学試験ごときで解けない問題などないからだ。

 それならカンニングもできるのかといえばそういう訳ではなく、そこはガルシアがしっかり管理をしているようだった。

 まあ情報網を使えばすぐにわかることではあるのだが。

 さて時間もあまりないし、一番にならない程度に問題をひたすら解いた。


「以上で筆記試験を終了する。回収が終わるまで席から動かないように」


 試験官の教師の合図により、試験が終了し回答は回収された。


「このまま実技試験会場に移動する。全員、後をついてくるように」


 実技試験か~、実はこっちの方が面倒くさかったりする。

 学年首席なんて目指していない俺にとっては間違って高得点を叩き出す方が問題だ。

 筆記はは事前調査により王子より一点低い点数になるようにしたにも関わらず、ここで高得点と叩き出すと王子を抜かして学年首席になってしまう。

 王子と同じ組ならある程度調整はできるのだが。


 魔法を披露する受験者は教師の案内でたどり着いた室内演習場で5人ずつ魔法を披露することになった。

 ちなみに王子は情報操作の賜物で俺の2人前だ。


「それでは順番に的か丸太に魔法を放ってください。終わったものから部屋を退出して帰るようにしてください」


 この世界の魔法とは『スキル』のように『火魔法』や『水魔法』といったものを習得することで使用できるようになる。

 習得したかどうかは各々のステータスを視ることで判断できる。

 このステータスは前世のゲームのようにHPや筋力値などのような明確な能力値の数値を表すものではなく、名前やスキルや魔法などを知ることができるだけでだ。


 次はやっと王子の順番になった。


「フレイムボール」


 炎魔法の下級魔法である『フレイムボール』で的を貫いたようだ。

 王子だけあって火魔法の上位魔法である炎魔法を使えるようだ。


「次の受験者は魔法を放ってください」


 俺の番が回ってきたのでさっきの王子と同じよう的に向かって『フレイムボール』を放った。

 もちろん同じ威力や軌道になるように調整してだ。

 若干試験官の教師に驚かれたがさっさと退室した。



 試験を終えた学校では教師たちが会議を行っていた。


「今回の筆記試験のトップはやはり第一王子でしたか。噂に違わず流石ですね。実技試験も一位だったのでしょう」

「確かに実技試験も一位でしたが、実技試験は同率でもう一人、一位がいましたね」

「王子が使ったのって炎魔法だったんですよね。それじゃあもう一人の子も中位魔法を使ったんですか」

「そうですね。私が試験官をしていましたが、もう一人の子も炎魔法のそれも同じまほうである『フレイムボール』を使っていましたよ」

「同じ魔法を使ったということですか」

「はい。しかも私の見た限りほぼ同じ威力でさらにほぼ同じ精度で使っていました」

「まったく同じだと。そんなことが有り得るのか」

「私の見た限りでは、ですがね」

「俺も試験官をしていたが、同意見だな。あれは王子の魔法を真似た気がしたんだが」

「えっ。入学前の子供ですよね。そんなことができる子がいるわけないですよ」

「そうそう。偶然同じようになっただけでしょ」

「確認なんですけど、その子の筆記試験はどうなっているんですか」

「この子の筆記試験は一位と一点差で二位だね」

「狙った訳じゃないのよね」

「いや、そんなことあるわけ……ないよね?」

「そうですよ。そんなことができる子どもは僅か13歳にして教師の資格をとったケイローン先生以外にいるわけないですよ」

「そうですよね。そういえばケイローン先生の年齢って今いくつでしたっけ」

「えっと、たしか」

「私のことでなにか問題でもありましたか」

「えっ、ケイローン先生。なんでケイローン先生がいらっしゃるんですか」

「試験結果の集計などが大変だろうからと学園長から頼まれたのですよ。ほら、発表は明後日なんですから、話してないで早く片付けますよ」

「「「わかりました」」」


 こうしてイリアス学園の夜は更けていくのだった。





 試験の2日後、イリアス学園の合格発表の日となった。

 正直、結果は情報を集めてわかっているので来ることも面倒だったが手続きをしないと入学取り消しになるので仕方なく来た。


 すでに人で埋め尽くされているイリアス学園の中を突き進むのはごめんなので暫く様子を見ていると、徐々に人ごみが少なくなってきたので今のうちにと結果を見に行った。

 結果は予定通り、入試順位は二番目だった。


 入学手続きを終えたところへ情報屋に用があるものがいるということなので、導きをだし、仕事へ向かった。


「いらっしゃい。って、またガルシアか。今度は何のようだ」

「今回は合格祝いをしに来たんだ」

「どうせそれだけじゃないんだろうがな。もう一人来ているのだろう」

「やはりすぐにばれるか。まあ合格祝いのことは本当なんだがな。ばれていることだし中に入れるぞ。入ってきてくれ」

「はい」


 ガルシアに促されて外に待機していた一人の男が入ってきた。


「こいつは珍しい魔法を持っていてな。今回の依頼の報酬の一部にと思ってな」

「どんな魔法だ」

「鑑定した方が速いだろ。本人の許可は取ってあるから鑑定してみろ」

「それなら遠慮なく」


 ガルシアにも許可をもらい、ガルシアにつれてこられた戸惑っている男に鑑定を行った。


 名前:レン・ハーネス

 種族:人

 状態:正常

 スキル:「剣術LV5」「乗馬LV3」「器用LV6」「投擲LV1」「意思疏通:馬」

 魔法:「火魔法LV8」「水魔法LV2」「風魔法LV4」「星魔法:子馬座LV1」


 確かに珍しい魔法である「星魔法」を持っていた。

「星魔法」は俺の前世、地球に存在する星座と同じ名を持つ魔法であり、強力な力を持っているものが多い。

 だが、生まれつき持っていた場合を除き習得条件が難しいため持ち主はかなり少ない。

 鑑定したことにより俺の『魔法大百科(アーカイブ)』の効果が発動し、新しく「星魔法:子馬座LV1」が記録されたのだった。


「新人の兵士が珍しいものを持っていたな。まあ一応感謝はしておく。用がすんだならさっさと帰れ」

「レン。先に帰りなさい」


 レンという男は自身が新人の兵士だと言われたことに驚いた様子でだったが、それを横目にまだ話がありそうなガルシアは一先ずレンを帰してから話をしようと促していた。

 レンはガルシアの指示通り先に帰ったことを確認すると、ガルシアは話始めた。


「まずはイリアス学園への入学おめでとう。イルなら問題ないと思っていたが、少し不安だった」

「依頼をこなすのは当たり前だ。教師の資格を持っている俺が今更学生の問題に手間取るわけないだろ」

「確かにそうだな。イルは教師の資格を持っているのだから落ちるわけないか。入試順位は二番目たし、これも狙ったんだろ。流石ケイローン先生だ」

「ここでその名で呼ぶな」

「偽名なんだから大丈夫だろ。しかし今回は本名で受けたんだな」

「お前が指定したんだろうが。いいからさっさと用件をすませて帰れ」

「そうだった。この入学祝いを渡しに来たんだ。受け取ってくれ」

「なんだこれは」

「帰ってから開けてみてくれ。あと勇者に関する情報だか、はやければ一月以内に勇者召喚がおこなわれるようだ」

「わかっている。その時は手を貸してくれるんだろ」

「イルからの頼みだしこの事はそうした方が穏やかに済むからな。さて、そろそろ帰るか」


 そう言ってガルシアは立ち上がると出口から出て光に導かれて帰っていった。


「さて、帰ってからこの中身とさっき記録した魔法を視てみるとするか」


 俺はガルシアから渡された祝い品を手にもち、今日新たに手に入れた星魔法の確認とイリアス学園の入学準備のために自分の本拠地に帰るのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ