怪物
ある時、突然岩に大きな衝撃が加わり崩れだした。
「バカな!」
村人に岩を崩す技術は無いはずだ。岩の欠片から身を守りながら岩が崩れ落ちるまで待った。いきなり腕を捕まれ引きずり出された、長い間陽の光を浴びてなかった腕は簡単に折れた。
叫び声をあげながら痛みに耐えていると、瞬く間に暗い場所へ投げ込まれた。
その一瞬に見えたのは自分が仕えた国の兵のマークが付いた鎧と、少しふっくらと太った村人が次々と兵達に殺されていく所だった。
扉が閉じる瞬間、カルダーは獣の声を上げて村人へ手を伸ばしたが、既のところで扉が閉じられた。
入れられたのは牢だった、音もなく光もなく、温もりもない。カルダーはついに兵に捕まってしまっていた。
村人達が虐殺されていく光景が目に焼き付いている。
狭い空間でカルダーは今までにないほど生きている気分だった。その目に光るのは、怒りと復讐心と憎しみ。
自分が身を削って仕えた王国が両親を殺し、自分が関わった村人を殺した。カルダーの目からは血の涙が流れていた。
体を縮めたまま食べる事も眠る事もせずただじっと壁を睨んでいた。
どれだけの夜が明けただろう。それはかなり長かったようにも思えたが、たった数分しか経っていないようにも思えた。
扉が開かれた。剣はカルダーから引き離されていたのでやせ細ったカルダーを兵士がまた引きずり出そうとした。
しかし、扉を開いた瞬間に出てきたものは、牙が鋭く尖った口と、黒ぐろとした体にべったりと赤いものがへばりついた人の倍はある怪物だった。
「なんだこいつは!」
兵が言葉を発したのはその一言だった。
怪物は数秒もせずに100人は居るであろう鎧の兵を鎧ごと噛み砕いた。
兵を噛み尽くすと、長くて大きい不快な音を口から出し、次の獲物を探すように歩き出したが、左の足の付け根に剣がひとりでに飛んできて刺さり、高く不快な叫び声を出しながら倒れた。
そのままひとつ夜かけて人の姿、カルダーの姿に戻った。
城の上から王はその一部始終を冷たく光る目で見ていた。




