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カルダーの約束  作者: アヤ
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カルダーの誕生

私がこれから話すのは、世界の果てにある土の中で今は安らかに眠るカルダーという男の物語だ。


過酷な運命に晒されながら生きた彼の物語はこうやって口伝えで語られる。


聞いて貰おうカルダーの物語を。


マエという女とロジという男の間に産まれたカルダーと名付けられる。


マエは純粋に子供の誕生を喜んだが、ロジは本職とする刀鍛冶の跡継ぎが出来たと大いに喜んだ。


ロジの野心は近所でも有名で、時に悪魔付きと言う言葉で表されることもあった。


マエがカルダーの変化に気付いたのはカルダーが1歳の年からだった。


寝床から遠くの床で遊んでいたり

危険だからと隠していた工具が寝床にあり工具で遊んでいてマエをヒヤッとさせたり

寝床から体が浮く事もあった。


マエは気が気ではなかったが動揺はしなかった。

マエも若い頃にその力を持っていたからだ。


「遺伝しちゃうのねぇ、そうならない事を願っていたんだけど…」


マエが両親と住んでいた村は王国から離れた過疎の村で、マエは力を出すことを楽しんでいると村人はマエの力を恐れ、魔女狩り寸前まで追い込まれ、夜逃げをして何とか免れた過去を持っていた。

ロジとは逃れた村で知り合った。

昔は一本義で優しい青年であったが、それが仇となり今は刀鍛冶で王室に入ろうするあまり取り憑かれてしまい、カルダーの変化どころかマエとの会話もままならなくなっている。


「ダメなんだ…これじゃダメなんだ…」


食事を前にしても、手も付けずに頭を抱え込んでしまう。


「あなた、お願いだから体を大事にしてちょうだい、せめて食事をしてください。」


「うるさい!女のお前に何が分かる!!」


そう怒鳴るとまた工房に入ってしまった。


この国では男が働き、女は働く事を禁じられている。


「私達は…今の生活で充分なのよ…」


マエはロジの背中に囁くように届かない言葉を投げた。


「かあちゃん、とうちゃんまた怒ったね」


カルダーは少し怯えながらマエの横に寄り添っている。


「大丈夫よ、男の人はあのくらいでなきゃ」


そんな嘘を自分の為にもカルダーに伝える。


「それより今日もお勉強をしましょうね」


考えた結果、カルダーの力のコントロールは本人に言い聞かせる事で自覚してもらうしかないとマエは思った。


「どこまで話したかしらね」


「人は自分の力以上の事をすると怖くなって思ってもない残酷なことをするのよ、からだよ」


それはマエがカルダーに話した一言一句そのままのセリフだった。

カルダーは理解するより先に驚異的な記憶力で言葉を覚えていく、まだ5歳にもならない頭脳は知識をたくさん欲していた。


次々に現れるカルダーの力に、マエはできるだけ動揺を見せないようにした。カルダーがびっくりしてしまわないように、それが当たり前であるように振舞った。


「そうね、よく出来たわ。そしてあなたが物を動かしたり体が浮いたり、物や植物の色を変えたりする力は人以上の事なの、だから人前でむやみにやっちゃいけないし、あなたはそれだけ選ばれた人だって事なのよ?」


「かぁちゃん、俺何に選ばれたの?」


「そうねぇ、それは天の声しかわからないから、いつか天の声が聞こえるようになったら教えて貰えるから、それまでは一緒に考えて行きましょうね」


カルダーは分からないなりにマエの言葉を理解しようとしているようで、精一杯マエの言葉に耳を傾けていた。


「カルダー、かぁちゃんの膝においで」


マエは愛しくなってカルダーを膝に抱き上げた。


「あら、ここどうしたの?」


カルダーの膝に擦れたような傷が付いていた。


「友達と遊んでたらいつの間にか付いてた」


「じゃあ薬草を付けときましょうね」


マエが薬草を練った薬を取ろうとするとカルダーは身をよじって嫌がった


「いいよ!唾付けとけば治るし、誰もこんな傷で薬草塗らねーもん!」


「そんなこと言わなくていいじゃない、かぁちゃんに塗らせてよ」


マエがカルダーを羽交い締めにしようと遊んだ。


2人がじゃれ合っていると外から叫び声と鎖の音、何かを激しく叩く音が聞こえた。


「ひと狩りだね、かぁちゃん」


「そうね」


この国では犯罪者やら反逆者はエドマックの村に送られる。エドマックは人肉食の村だ。

反逆者は捕まって人喰いに食べられる、それがこの国の定めだった。


「怖い国だわ、この国は…」


マエは悲しい目で叫び声の聞こえる扉を見つめていた。





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