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生命存略夢現  作者: 朝霞ちさめ
第五章 未来への助走
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80 - 大は小を兼ねるのか

 さあ、それでは本題部分こと、地味に洋輔にはまともな説明をしたことがない機能と、今気付いた機能を述べていこう。

 『強制発動』。

 あらかじめ指定した条件が満たされたとき、僕の意識とは関係無しに眼鏡の機能を有効化するという機能。主に緊急時、僕が怪我をしそうなときとか、あるいは洋輔が怪我をしかねない状況だとか、そういう時に勝手に『時間認知間隔変更』と『理想の動き』が有効化されるわけだ。

 ちょっとした応用として、色別を行う際、『色別で赤が見えた瞬間に発動する』ことでどんなに小さな赤でも確実に発見することが出来る。

「これはまだ常識的じゃない?」

「まあ、確かに便利なだけだな」

 『複合:剛柔剣色別』。

 剛柔剣表示で表示される矢印と色別を組み合わせた機能で、その動きそのものが主体にとってどのような影響を与えるのかを赤・緑・青の三色で表示する。これ単体で使うこともあるけど、大抵は『強制発動』で勝手に発動する感じだ。

 これにかぎらずあらゆる複合がだいたい出来る。

 たまに致命的に相性が悪いのか、複合できないものもあるけど。

剛柔剣(ベクトラベル)周りでの問題はむしろもう一つの方だろ」

「……そうだね」

 『剛柔剣(ベクトラベル)(アザー)』。

 洋輔の感覚としての『剛柔剣』をオリジナル、つまり『剛柔剣(ベクトラベル)(オリジン)』と表現したとき、それを魔法で再現しようとしたのが今の来栖冬華ことフユーシュ・セゾンで、その亜種としての剛柔剣を『剛柔剣(ベクトラベル)(アナザー)』と呼ぶ。冬華の場合は『感覚的に把握できないなら、感覚以外で把握すれば良い』と発想と連想をくみ上げ、魔法による矢印への干渉を可能としていたりする。

 で、僕のこれは『剛柔剣(ベクトラベル)(アザー)』。冬華が魔法で再現したならば、僕のコレは錬金術に由来すると言うべきだろうか? もっとも、名前は同じでも洋輔のソレと効果は全く違っていて、あくまでも『僕が触れたものの動きを、ある程度任意に指定する』程度のものである。

 この機能の存在は去年あたりに洋輔がちらっと予言してたんだけれど、いよいよ解析すると言い逃れできないレベルで確かに存在が確認されてしまったのだ、これ。

 ちなみに本質的には『剛柔剣表示』『時間認知間隔変更』『理想の動き』の複合機能で、『僕が触れたものの動きを、ある程度任意に指定する』という効果はつまり、『僕が触れているものならば理想の動きで微調整に微調整を重ねて求めた矢印が発生するまで調整を続け、完了したら処理を終了する』という力業なのでなんとも言えない。

「僕の場合はこの『視覚』を洋輔に最初の一回は貰わないと行けないから、二人ほど自由でもないんだけど……」

「それでもだ、俺の剛柔剣にせよ、冬華の錦にせよ、『観測して、干渉する』という点では変わらねえ。だからお前のソレも既に、剛柔剣の亜種だよ。俺が認める。佳苗も認めろ」

 『理想の裏返し』。

 『理想の動き』の亜種というか応用というか拡張系というか……。ちょっと表現が難しいけれど、『理想の動き』に何かが干渉した結果発生しているらしい効果。干渉しているのは十中八九『情報保存』だろう。

 効果としては、『極めて限定的な未来予測』というもの。具体的には『一秒にも満たない未来』を、僕はどうやら『感じている』らしい。視覚的に見ているわけではなく、また聞こえているわけでもない。しかもいつでも使えるワケではなく、いくつかクリアしなければならない条件がある。

 具体的には、何者かと対峙している状態で、かつその対峙している相手が行う行動が想像しうる場合にだけ発動できる、というか、勝手に発動する。ただし無駄なときには発動しないあたり、僕が必要としている時にしか発動しない、程度の縛りはできているようだ。

 で、これによって僕はどうやら、バレーで相手が打ったスパイクやサーブの矢印が表示されるよりも先に、『だいたいこっちにこうやって来る』とほとんど確信をしていて、その上で矢印を確認してからボールを拾えている……っぽい。

 相手のことを知っていれば知っているほど確信的になり、たとえばバレー部のメンバー相手にならばかぎりなく常に正解を取れるだろうけれど、初見相手だと『無いよりマシ』程度で、またバレー部相手だとしても、競技がバレーではない初見競技だったりするとやっぱり『無いよりマシ』になる。だからこそ、『情報保存』が干渉しているとほとんど断定できるのだ。

 尚、洋輔が相手の場合、この確信的がほぼ『確信』になる。それもほぼ全分野で。

 逆に葵くんあたりには全く通用しないだろうなあ。常に想像の外を行かれてしまう。

「滅茶苦茶ピンポイントな未来予測だな……。なんか最近佳苗のフォローがやたら早いとは思ってたが、それが原因か……」

「そうみたい。僕もびっくりだよ。まあもっとも、所詮は予測だから、そこまで信頼も出来ないかな?」

 『特異超等品:光』。

 ある周期で魔力を流すことで視線がビームとして発生できる。

 ちなみに威力は光線なので大気圏内では結構な減衰が発生するけど、十メートル程度の距離ならば厚さ一メートルのコンクリートを貫通できる程度だ。

 あくまで超等品……道具としての効果なので、魔力を消費しないエコ……なのか?

「…………。は?」

「いや僕も意味分かんないんだけど、なんか出来るみたい」

 『血液型表示:人間』。

 視界に入っている人間の血液型をABO血液型及びRhのプラスマイナスで表示する。ちなみに補正値でモードを変更する事で、より詳細まで表示できる反面、補正値を10以上に設定する場合、対象の血液が見えていなければならない。

「ん……? つまり、9番目までのモードでは血液が見えなくても血液型が解ると?」

「うん。たぶん体表に浮かんでる汗とかから解析してるんじゃないかな? 遺伝子情報撮っちゃった方が早いから、あんまり使わないだろうね」

 『受動翻訳:字』。

 どのような言語であろうとも、それが言語として正しく一定の規則性を持つのであれば、そこに書かれている内容を読み取る事が出来る。読み取る事が出来るだけで、原文を本来の言葉で読み上げたりはできないし、概ね正しく読み取れるはずではあるけど、細かいニュアンスの部分は省かれたり、少し意味合いが歪んでしまうことはありうる。

 象形文字とかでも意味は分かるので十分だろう。

 尚、この機能は『受動翻訳の魔法』の効果を字に限定することで任意に発動をオンオフできるように調整されているものなので、別におかしな機能というわけではない。

「……本当か?」

「うん。冬華も同じような道具を使ってるよ」

 『音視認』。

 音を『視覚的』に見るという機能で、あらゆる音が様々な色や音で視界にオーバーレイされる。オーバーレイなので通常の視界の上にうっすらと見える程度だけれど、この透明度は補正値で変更可能。

 また、音を明示的に制限することで、特定の音がしたときにだけ視覚的に表示させる……とか、あるいは特定の人物の声を指定しておくことでその人物が声を出したときにそれを表示させるなどが可能だ。

 但し、音が視覚的に見えるというのはグラフィカルでとてもいいのだけれど、初戦はグラフィカル。具体的に『見えている音』がどんな音なのかまでは解らない。

 少なくとも今は。

「まあお前だもんな。情報保存と混ざっていずれは解決するか」

「とはいえ、かなり時間が掛かるんじゃないかな……」

 『反響測位』。

 自身が起てた音が反射して帰ってくるまでの時間を利用したソナー……というか、文字通りにエコーロケーション。音の反射に頼るため、視覚とは違い誤差もそこそこ大きく出るし、必ずしも詳細までが分かるとは限らないけれど、光ではなく音を利用しているため、三百六十度全ての方向に対して観測出来る上、気合いを入れればエコー検査のように『内側』を覗き見るようなこともできる。

「は……? 全方位見えてるのか?」

「見えてるというか聞こえてる、だね。で、」

 『魔術測位』。

 魔術版反響測位。ピュアキネシス粒子の散布を先に行っておく必要があるけれど、それさえ出来ているならば、その空間内の微細な動きの全てを感知してくれるという機能で、冬華の剛柔剣・錦の観測の部分と効果的には似ている。

 但し、この機能は僕には使いこなすことが出来ない。

「ピュアキネシスを粒子状に発生させるところは手動だからさ。ぶっちゃけ、めんどくさい。そこまでして使いたい機能でもないし。あと冬華のと被るとすごい厄介なんだよね」

「ぶっちゃけたな……」

 『疑似・猫の視界』。

 猫の視覚を再現した視界で世界を見ることが出来る。

 猫の気分になりたいときに便利だけど、ぶっちゃけこれも不便なだけなのでいらない。

 これ使った後はエリクシルとか飲まないと目がかすむし。

「そんな機能は消してしまえ」

「いやあ、それがさあ……」

 『猫の視界:借受』。

 猫と話し合い、オッケーが貰えると、その猫の視界を複製して借りる事が出来る。現状では複数の猫から同時に借りる事は出来ないけれど、増やせる可能性が極めて高い。このとき猫から借りた複製視界は厳密には視覚ではないらしく、精神領域の共有を使って洋輔が見ることは出来ない。こっちの改善は……どうかな、椋鳥みたいにできるかも。

「なんだそのニッチな機能は……」

「でも以外と便利なんだよ。最近ずっと亀ちゃんの視界借りっぱなし」

 『空整看破』。

 対象が場所に限られるけれど、空間整理されている痕跡を赤くオーバーレイで表示するという機能。これは洋輔にも手伝って貰って作ったので今更だけれど、最近になって追加された機能だ。

 尚、今のところ有効に活用できた例はない。これを使うことで『検算』することはあるんだけど……。

「普通に見れば解るからね」

「それはなあ。まあ、仕方ねえな」

 『性感帯表示』。

 ……うん?

「…………。説明、要る?」

「要らん。つーかなんだその機能は」

 『錬金解析術:表示』。

 錬金解析術の解釈に基づいて、複数のグラフや数値でその道具の効果を推測するという道具。

 ぶっちゃけ僕の場合は僕が普通に見た方が正確だ。

「悲しいな……」

「ま、あえて排除するような機能でも無いけれど」

 『並列化』。

 様々な効果を一つの道具に与えたとき、その道具内部で複数の効果を同時に使えるようにするという効果。大体コレのせいで妙な派生は増えている。

「基本は恩恵だな」

「うん」

 『渡鶴連携』。

 渡鶴と眼鏡で連携を行い、渡鶴側の処理によって完成した図などを視覚に投影したりする簡易機能。もちろん普通に渡鶴を使った方が早いし確実だけれど、瞬間的に呼び出したいときとかならばこっちでも十分だ。

「……まあ、所々妙なもんもあったけど、あれだな。以外とその眼鏡、単純に便利だな」

「ね。もうちょっと変な機能が付いてるかな? とも思ってたんだけど、思った寄りかは常識的な範囲だった」

「常識的……?」

『かしら……?』

 洋輔と、そして冬華から突っ込みが入ってしまったけれど、でも本当にまだマシだと思う。

「ちなみにこの眼鏡って一時期、鼎立凝固体全種も格納できるようにしようかなって思ってた時期があってね」

「実現してたらとおもうとぞっとしねえな……。実際にはやってねえみたいだけど」

「どう考えても眼鏡に収まらなかったんだよね」

 なので鼎立凝固体は今の僕が作りうる最小の形で常に持ち歩いている。

 アクセサリーのように見えるのも困るので、服、それも下着に隠れる場所に付けているから、他人に気付かれることはまず無いだろう。

『え。それはどうかと思うわ、佳苗』

「ごめん冬華。冬華が何処を想像したのかはあえて問わないけれど、僕が装備してるのは足首のあたりだよ。靴下の内側になるようにって事ね」

『……あっ』

 靴下だって下着なのだ。

 うん。

 ちなみに冬華が想像したであろうもう一つの下着に当初装備する前提で作っていたのだけれど、いざ装備しようとした瞬間、『いやこれは挟まったら色々と酷い目に合うのでは……?』と気付いて辞めたという経緯がある。何がとは言わないけど。そこは男の急所なのだ。

「今のは流石に佳苗が悪い気もするけどな」

「ごめんってば」

『ふふふ、別に気にしないで良いのよ、カナエ・リバー。今度会ったら追いかけっこをしましょうか』

「まあ冗談はさておいて」

『そうね』

「そうなのかよ!」

 洋輔の突っ込みは一度横に置いて、僕は冬華と話を続ける。

「今までの説明を聞いて疑問に思うところはどのくらいあった?」

『もの凄くあった、としか言いようがないわ。よくもまあ一つの道具にそうどんどん効果を乗せられるわね……、あの世界のトップクラスの錬金術師だって、せいぜい一つの道具に十の機能が載せられたら「奇跡」のレベルよ。私もね。で、あなたはこれ以上乗せる余地がどの程度あるとみてるのかしら?』

「いっぱい。少なくともまだまだスペースはあるよ」

『…………。末恐ろしいわ。いえ、既に恐ろしいわ……が正しいかしら?』

 冬華は言葉遊びをしながらも、僕にそんな賞賛を述べてくれた。

「で、冬華向けへの本題なんだけど。この眼鏡の複製、要る?」

『欲しくないと言えば嘘になるわね。けれどそれ、たぶん私にも使いこなせないわ』

「じゃあ三つくらい用意しておくね」

『話が早くて助かるわ』

「待て、俺が話しについて行けねえ。段階を踏め」

「僕から説明しておくよ」

『ええ、お願い』

 冬華はそう言って椋鳥の接続を切る。

 その間際、冬華の視界には夏樹さんが映っていた。またあとで、というわけだ。

「で、なんで三つなんだ?」

「『使いこなせない』って言ってたでしょ。だから一つは冬華の自由に分解できるように。もう一つは錬金術の材料に出来るように。で、最後の一つが実際に使うようにってこと」

「ああ……観賞用、保存用、布教用みたいなノリかと思ったぜ」

 いや、こんな機密の塊を布教されては困る。

「解ってるなら軽々しく増やすなよ……」

「まあまあ。これで軽めの解析は終わったし。あとはじっくり腰を入れて解析していく感じだね」

 そう。

 ここまで述べた機能だって、僕が本腰は入れたとは言え、たった半日程度で『表面を再計測しただけ』に過ぎないのだ。

 ここから先は持久戦。というより、常に探りつつ使うという感じになる。

 とはいえ、隠れている機能はあったとしても二つか三つだろう。

 問題はだから、組み合わせ……。

 強烈なものがあるかもしれないし、実はないのかも知れない。

「というわけで今日はおしまい。洋輔、遊ぼうか」

「……それでいいのか、佳苗」

「急いては事をし損じる、だよ」

「……はあ」

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