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生命存略夢現  作者: 朝霞ちさめ
第二章 極点候補者と深刻な問題
35/111

33 - 相談の後、裏では竪川

 夕飯を食べ終えて自室に戻り結局強化した鍵をして、洋輔を招き入れた上でカーテンをしつつ屋根裏倉庫に向かい、複写した例の人物の所持品を確認。

 衣服や眼鏡にアクセサリー類はもちろん、ポケットの中に入っていたICカードやハンカチなどなど、概ね綺麗に複写は出来たようだ。

「いつぞやはコピーなんて出来るわけがないって言ってたのにな、お前」

「あれから色々あったからね。渡鶴の補助がでかいかな……渡鶴抜きだと、ここまでの精度ではできないだろうし」

 渡鶴の補助があっても精度的に複写仕切れない部分もある。

 やっぱり機械系は全部ダメだな。品質値はそれなりにあるけど、あの時確認した現物とは大きく落ちている。

「ここで広げるのも狭いね。部屋に戻ろうか」

「発信器類は大丈夫か?」

「殆ど機能は喪失してる、と思うけど」

 はい、と洋輔に全部を纏めて渡すと、洋輔の回りに渦が発生、何も言わずバリッと雷をその身に纏った。

 錬金術だとアレをやるのも一苦労なんだけど、魔法だと発想と連想だけだからな。

「いや、この程度ならお前にも出来るだろ」

「まあね」

 とまあ、そんなわけで高圧電流による電気的機能の喪失を引き起こした上で二人揃って屋根裏倉庫から降りて、屋根裏倉庫はまた封鎖状態にしておく。

 考えてみれば最初からこうしておけば屋根裏倉庫に侵入される事も無かったのでは?

 …………。

 まあいいや。

「で、持ち物検査なんだが」

「案の定と言えば案の定、特にこれといって身辺特定できるようなものはないね」

 CIAのものらしき身分証、に限らず、国際免許証やパスポートも所持しているけど、その全ての名義がルイス・フォスターになっている。これといって怪しいところは無い。品質値は……、電気でバリッとした事を差し引けば標準程度、だ。まあもっとも、国家規模で運用しているような組織であれば、本物と同等の手続きで偽物は作れるだろう。ルイス・フォスターっていう工作員が居るのは事実だけど、その名前は複数人で共有しているとかならば真偽判定で引っかかった理由も素直に説明が付く。

 その辺の詮索はさておいて、眼鏡のフレームを分解。

 中には極小の機械類、チップにレンズ。カメラだろう。但し記憶領域があるようには見えないから、どっかにデータは飛ばしてるのかな……この大きさだと、映像を動画として送るのは大変そうだから、静止画を一定期間ごとに送るタイプかもしれない。

 ネクタイピンも分解、やっぱりマイクだった。こっちも送信タイプ……、眼鏡についてたカメラと同じような仕組みかな?

「つってもな。それほど小さいとなると、さほど電波も飛ばせねえだろ」

「増幅……アンプというか、分配器、ルーターみたいなのがあったのかもね」

 『スパイの秘密道具みたい』ならば見ていても楽しいんだけど、単に『スパイの秘密道具』で、しかも対象が自分自身であると分かっていると……まあこれはこれで楽しいかもしれない。

「おい」

「仕方ないよ、お年頃だもの」

「まあ、な」

 更に荷物を取り分けていく。ポケットの中に異物は無し、入っていたハンカチなども特に仕掛けのようなものはない。

 鍵は二つ、一つはカードキータイプで、もう一つは普通の鍵。但し後者の形状は車の鍵としてよくあるやつだ。カードキーの方が家、もしくは拠点かな?

「ビジネスホテル……とかで見るやつだな、それ」

「ということは、これも偽装の可能性が高いね」

「ああ。だが偽装だとしても実際に部屋を取っていたならば……」

 ここからあるいは身元が探れるかな?

 カードキーは電気でバリッとしたせいで焦げてしまい、判別が難しい。ので、ここは灰色のエッセンシア、ワールドコールをふぁん、と作成、カードキーに使用。

 新品まで元通り、だ。うん、さっきは読み取れなかったけど、ホテルの名前、電話番号、そしてカードキーの部屋番号なども記されている。それらの情報は眼鏡の『表示固定』に保存して、改めて洋輔に手渡し、洋輔がバリッと再度破壊。念には念を、ね。

「それで、このホテルにはどう確認する?」

喫茶店(パステル)でいいと思う。『運ばれるときにちらっと見えた』程度に伝えれば、あっちが色々と調べてくれるでしょ。少なくとも喫茶店(パステル)とはあまり仲が良い組織でもなさそうだしね……」

 喫茶店(パステル)としても、僕達に接触した人物の特定をしたがっている可能性が高いし、それならば取引に出来るはずだ。

「もし当てが外れて、向こうには全く興味が無かったら?」

「それでもお願いはしてみるよ。どうしてもだめなら最悪は渡鶴で再現かな……」

 あんまり乱発できないから、ここで使うのはちょっと遠慮したいんだけどね。

 といったところで例の人物については検証のタネが尽きた。

 無理をすればまだまだ行けそうではあるけれど、今のところはこれでいい。

「今のところは、ねえ……。最終的な検算は出来るようにしてるんだろうな」

「渡鶴を使って良いなら余裕」

「ダメだと言ったら?」

「それでも余裕だね」

 吊していた学生服のポケットから、小さなビニール袋を取り出す。その中には数本の、金色の頭髪が入っている。

「遺伝子情報は見ての通り入手済み。精神はともかく身体そのものは錬金術で即座に作れる。ま、『人形』を作るのはあまり趣味じゃないから、余裕でできるとは言っても自ら進んでやりたいことじゃない」

「お前にまだ理性が残ってるようで安心したよ」

 ため息交じりに洋輔は頭を振ると、話題を変えるつもりか、亀ちゃんに手を伸ばした。

 亀ちゃんは当然、洋輔の手を引っ掻いた。

「上様さあ。いい加減俺にも懐いてくれねえかなあ。俺は爪とぎじゃねえぞ」

「それも一つの愛なんだよ」

「俺はこういうのを愛とは呼ばねえ」

 ちなみに亀ちゃんはそんな僕と洋輔のやりとりの間にすすすっと洋輔の肩の上まで移動している。実際、猫にしては十分懐いている部類なんだよね。ちょっと辛辣というか、愛の形が歪なだけで。誰の影響やら。亀ちゃんのベースとなったイミテーションを作った洋輔か、それとも飼い主な僕なのか。どっちもか……。

「まあいいや。話を戻すというか変えるが、竪川先輩……響谷さんの方な、竪川先輩とのコネクション、面識は十分に得てきた。連絡先も当然ゲット」

「さすが洋輔。まあ、洋輔の目から見てたし聞いてたけど」

「だよな」

「それでも一応、説明は改めてしてくれるかな」

「ん」

 確認も兼ねて。

 竪川先輩はそもそも祭部長の親友だ。

 あの第一印象レビューの場には、祭部長の親友として、演劇部のお手伝いをする人員の一人として参加していた。その立場は洋輔と同一だったから、その面も含めて会話を進めて貰ったんだよね。

「その通り。竪川先輩にとっての鹿倉先輩が、俺にとっての佳苗だって説明をしたらすげえ納得されたよ。で、親近感がわくとも言われた」

 だからこそ連絡先が簡単に手に入ったと。

「そ」

「洋輔から見てその人はどんな人だった?」

「自己評価が低いタイプ。あくまでも自己評価で、実際のステータスはそこそこ高いと思うぜ。そつなく大概は出来るタイプ……但し、突き抜けて何かが出来るわけじゃないタイプ。万能には届かない、ギリギリで汎用と言えるって所か。表向きは」

「じゃあその実際はどうだとみる?」

「性格面では変わらねえよ。誰かが見てないところでは何かが出来るとか、そういうのも無い。『そう見える』通りに見える――」

 含みのある言い方だった。

「――そこまで強度は無いし、効果も微々たるもんだったが。『空間整理』を使ってたな。それも俺たちと似た使い方……空間を整理するんじゃなく、心理的な誘導をする方面で。もちろん意図的に」

「全部抵抗(レジスト)したんだろうけど、竪川先輩の反応は?」

「仲良くなって連絡先を交換した」

「それはさっき聞いたけど」

「だから、それだよ。たぶんあっちが『たまたま失敗続きだったのか』それとも『俺が何らかの抵抗をしていたのか』を確かめたがってる」

「自己評価が低いタイプならば前者で決めつけるんじゃ無い?」

「自己評価が低くて自信もそれほどないからこそ、なんで失敗したのかをしっかり調べて改善しようとしてるんだよ」

「……自己評価が低くて、努力するタイプか。厄介だね」

「ああ。ありゃあ味方にしないとダメだ」

 洋輔の言うとおりだ。

 自己評価が低く努力するタイプ。

 つまりどのような良い結果を得たとしても『まだ自分はできていない』と見做し、さらなる成長のための努力を惜しまないタイプ……最悪、その成長が青天井って可能性もある。滅多に無いけど。

 とはえ、成長が凄いだけとも言う。放っておいても本来ならば問題は無い。

 無いのだけど、今回は手を打った方が良い。

「あの手合いは敵に回るとどうしようもなく厄介だ。だから敵になる前に抱え込む。その方針で良いんだな?」

「うん。……そうだね、洋輔。この際だ、晶くん達についても考えようか」

「晶? って、ああ。弓矢の弟」

 そう。

 そして、『たち』と付けたのは、つまり。

「弓矢一家と村社もってことだな?」

「そうなるね」

「一気に増やしすぎると厄介、だと思うが」

「けれど避けられない道でもある」

 竪川響谷先輩の姉である竪川日比生は昌くんのお姉さん、日お姉さんと友人だった。

 つまりものすごいあっさりと、問題がリンクしてしまうのだ。

 もちろん、それを誤魔化すための空間整理応用編とかを仕掛けることは可能。但し労力に似合うかどうかと聞かれると……微妙だろう。

「そのラインを取った上で俺たちの推測が正しいならば、竪川日比生から喫茶店(パステル)とも通じるな。そこはどうする?」

「僕もソレはちょっと不安なんだけど……竪川日比生さんがどんな方向性でものごとを考える人かが分からないからね、まだ確実にどうとは言えない。それでもすぐさま喫茶店(パステル)に合流することはまず無い」

「根拠は?」

「あっちが僕達を信用できないからだよ」

 僕達はかなりの隠し事を喫茶店(パステル)に対して行っている。

 そしてあちらも僕達が隠し事をしていることを当然知っている。

 だからこそ、僕達が全面的に技術を教えたりでもしないかぎり、よくて協力関係の維持が限度だろう。というより、貴金属類はどこから手に入れたって話になるから、場合によっては一時的に換金はできなくなるというデメリットが発生するかもしれない。

 その辺も踏まえてあちらから僕達を取り込もうとするのは、結構先になるはずだ。

「それは……そうだな」

「でしょ?」

 だからそののリスクは考えないで良い。

 考えるべきは昌くんや郁也くんの反応、かな。

「やることが増えたな」

「そうだね。とりあえず、仲間にする前提で考……」

 いや、待てよ。

「ん?」

「……地下のあの空間のことを、日お姉さんは知っていた。日お姉さんならばもっと詳しく知っていると言う事を、晶くんは知っていた。けれど昌くんは何も知らなかった……」

「…………、ああ、潮来言千口に関連する話か」

「うん。……何だったかなあ」

 そう、たしか晶くんが言ったのだ。

 日お姉さんは見分けてしまう。

 だから家を出たのだと。

 会話の流れ的に、それは……、

「昌くんを遠ざけるため……みたいな、ニュアンスが強かったんだよね。それで、『なんでだろう』って思った記憶がある」

「そういやあ……そんな事も言ってたか」

「昌くん達を抱え込もうとすると日お姉さんと晶くんが反発するかもな……」

 まあ、その『昌くんを遠ざける』って言っても、『何から』遠ざけているのかは未だに不明瞭だけれども。

 あの時は単純に潮来言千口に関する事柄から遠ざけようとしたのだと思った。

 今はそれに加えて、昌くん達が経験した事件の隠蔽を行った竪川日比生……と、その事件の記憶そのものから遠ざけようとしているって可能性も追加されている。

 そもそも論を言うならば、潮来言千口から遠ざける理由すら無いはずだけど、そこはまあ後々考えるとして……。

「なら、弓矢と村社は保留か」

「…………。やぶ蛇になる可能性を考えるなら、そうだね」

「弓矢の弟だけでも抱え込むか? あいつもあれで『呪い(カーシング)』が使えるワケだし、それの訓練ついでに俺たちが取り込むのもアリだとは思う」

「昌くんに内緒で? 出来ると思う?」

「現状は無理だ」

 だよね。

「けれど現状は、な」

「…………、」

「竪川先輩を味方に付ければ、竪川先輩の空間整理に関する知識もある程度は利用できるだろ。そこからやりようは出てくるかも知れねえぞ」

 それは……、そうか。

「当面の目標を、定めるべきだろうね。まずは竪川響谷先輩を仲間にする」

「俺がメインで動くとして、時々は手伝って貰うと思うが。手段はどうする?」

「真っ当な手段だと言い張れるなら何をしても良いんじゃ無いの」

「錬金術の道具は使いにくいってわけだな」

「うん」

 竪川先輩だけにならばそれほど問題は無い。

 ただ、竪川先輩の姉、竪川日比生がどこまで勘付くかが分からない。

 だから使えない。

「となると……。普通のコミュニケーションを主体にしていく形か。いざとなったら大胆にやっても良いかもしれないな。お前が良いならだけど」

「あんまりいい気はしないけど、その数回で命運をきちっと握りきれると判断したなら良いと思うよ。ただ、あんまりそっちにばかり行くようだと僕が嫉妬するかもね」

 その時は亀ちゃんを始めとしたこの地域一帯の猫全部を洋輔達にけしかけよう。

 今の僕にならば出来ると思う。

「やめろ!」

「ならば精々、常識的な範囲外で済ませてね」

「ああ。……妙な経験値だが、活かせる機会だしな」

 それにそれが有効だと言うことはとてもよく分かるしね。

 道具を使わずにできるのは洋輔くらいだろう、ならば任せるしか無い。

「でもなんかずるいから、その分僕とも遊んで貰うけどね」

「お前は俺の体力が無限だとでも思ってるのか」

「リザレクションがあるし実質無限でしょ。ま、無限じゃないにしても」

「ないにしても?」

「帰ってきたらエリクシルで戻してあげるから。ファイト」

「…………」

 お前ってきっと良い拷問役になるよな、という目で洋輔は見てきた。

「そっちの方が良いならそっちでも良いよ? 僕、血も好きだし」

「遠慮します……」

 話の分かる幼馴染で善かった。

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