その向こう
解釈の仕方はそれぞれに任せますが、ハッピーエンドです。
扉を開こうとして、躊躇したあの日を思い出した。
その日は扉を開けることは出来なかった。
でも、もう一度その扉を見ることが出来るのなら、私はその扉を開けたい。
それが私に課された使命で、私の生きる場所へと繋がっててほしいから。
私は、扉の向こうに行きたい。
幼い頃、私の目には不思議なものが映っていた。
例えば羽の生えた四角形。
地を這う三角形。
泳ぐ円形。
とにかく、不思議なものだったのだ。
そんなものが見えていたあの頃を、今の私はとても面白そうだと感じていた。
結果から言ってしまえば今はもうそんなのは見えなくて、代わりに空を飛んでいるのは鳥で、地を這うのは虫で、泳ぐのは魚だった。
子供の頃の夢を、今の私は恥ずかしくて言えないだろう。
唯一覚えている、幼い記憶でも色濃く残っているその夢を。
学校が終わってから家へ帰るまで20分はかからなった。
その道中で、私は見つけることが出来たのだ。
その扉を。一歩前へ踏み出す私は、もう誰も追い付けないくらいの早さだろう。
さよなら、私。
扉の向こうに抱いた感情を抱きしめて、私はそっと扉を開けた。
たまたま読んでいただいたのであれば有難うございます。