第23話 Eternal Connection
どんな時でも、どこにいても、俺達は繋がっている―。
神凪島北東。そこにある洞窟には、見えない封がされている。そこに、俺達神技使いと、由季達関係者は集まっていた。
「ここに何があるって言うんだ……?」
箱根旅行の際、突然襲ってきたドラゴンを倒した青年、龍。龍に、今日ここに集まるように言われて、俺達は集まったのだ。今日の日付は…………4月1日。
「……神技使いはここに神力を注いでくれ」
龍に言われるがままに、何も無いように見える空間に神力を注ぐ。すると、空間が切り裂かれ、奥への入口が現れた。
「……この先が、真実の間だ」
石の階段を下り、龍の後を付いていくと、開けた空間に出た。そこの中心には、大きな泉が見える。
龍が振り向き、言った。
「……俺が生まれた時から持っていた記憶。それは、"災厄を防ぐためには、2118年4月1日にこの洞窟に全ての神技使いが揃う必要がある"だ。……この先がどうなるかは、俺にも分からない」
「……ロスト・メモリー」
俺の呟きに、神技使い全員が反応する。
「俺達のこの記憶は、喪われた記憶……"ロスト・メモリー"というんだ。俺のロスト・メモリーは、"神技使いが集いし時、記憶の災厄は招かれ、隠された世界の真実を知ることになる。時を狂わせぬ為、その力を泉に注ぎ込まん"っていう長ったらしいものなんだが、泉ってのはこれじゃないかと思うんだ」
「神大お前……隠してたのかよ」
「……悪いな疾風。神技使いが揃うまでは、言えなかったんだ」
疾風は渋々と納得してくれた。
「早速だが皆……行くぞ」
俺の呼び掛けに皆が応え、泉に神力を注入する。すると…………泉が干上がり、大きな石碑が現れた。
そこには、古代文字で何かが書かれていた。俺にはなぜか、それを読むことが出来た。
皆に目を配る。頷くのを見て、俺はそれを読み始めた。
「西暦2100年4月1日、世界は消滅した。
刹那の内に世界そのものが、文字通り、消えた。
勉学に慎んでいた者、運動で汗を流していた者、仕事で疲労していた者、家族団欒をしていた者、色恋に現を抜かしていた者、飢餓に苦しんでいた者……全ての人類が、一瞬で消え去った。
全ての自然、全ての動物、全ての建築物が、消えて無くなった。
何が起きたかを知る術など無かった。瞬く間に何もかもが……消えたのだから。
そして西暦2100年4月2日、世界は再生した。
2100年4月1日…消滅の日以前の世界が丸ごと再生した。
ただ唯一再生しなかったもの…それは、4月1日の記憶だけだった……」
「これ……は…………」
神技使いも、由季達も、言葉を失った。
つまり……つまりここは……この世界は……本当の世界では無いということなのか…………。
「……ん? ……まだ続きがあるな」
続きの文字を読み上げる。
「再び創成された世界は、誰かの"想い"で創られた世界だった。
その想いは、世界に滅びの予兆が訪れた4月1日が訪れた瞬間、別の空間軸に世界を丸ごと転写し、生命をも転移させた。その転写された世界が動き出したのは、4月2日だった…………」
だから……だから4月1日の記憶が無いのだ……。
ガタガタガタガタ…………!
突如、揺れが訪れた。暫く続いたその揺れは、やがて収まった。
「災厄の……予兆…………」
龍が呟く。これが、書かれていた災厄の予兆なのか。……そうか。一昨日あたりから感じていた、時間の密度の薄ささえも…………。
「……止める方法は、1つだ。俺のもう1つのロスト・メモリー……それは……"4月2日、神技使い全員で空間軸を渡り、滅びた世界を支える"、だ」
龍がそう言った。
滅びた世界。その世界は別の空間軸上にあるが、それが何らかの弾みでこちらの世界に影響を及ぼしているのだろう。それを止めるためには……明日……別空間に……。
「……まず、一度帰ろう……」
俺達は一度帰り、明日集まることにした。
「神大君……いい…………?」
夜遅く、由季が部屋に入ってくる。明日の事に決まっている。もしかしたら俺達は二度と戻ってこれないかもしれないのだから。
父さんと母さんにはとりあえず、旅行に行ってくるとは言ってあるが、由季は…………。
「いいよ。……おいで」
由季は頷くと、俺の眠るベッドに身体を潜り込ませてきた。
「…………ねえ神大君、私ね……?神大君のおかげで強くなれたよ。」
確かに由季は強くなった。精神的にも、肉体的にも。
「本当はね……?行って欲しくない……」
「俺だって本当は……行きたくない……」
俺達は顔を見合せ、キスを交わす。身体を離した由季は薄く微笑んだ。
「でも……ね……私、信じてるよ?また……会えるって」
「え…………?」
俺は首を傾げた。
由季は穏やかに、かつ心強く、言う。
「私達は、家族だよ?神大君、言ったよね?同居している人・クラスメイト・恋人…繋がっていれば、家族だ、ってさ。私達は、その全てで繋がっている。全てに於いて家族なんだから……私達は、どんな時でも、どこにいても、ずっと繋がっている」
これは……俺が以前由季に宛てた手紙と……同じ……。
「だから神大君がいつの日か帰ってきて、「ただいま」って言ったら、私は笑顔で「おかえり」って返すの」
「由季…………ああ……そうだな…………」
俺の心には、もう不安は無かった。
「ねえ神大君……最期の夜になるかも……だよね」
由季が僅かに頬を赤らめさせて言う。
「そう……だな…………」
互いに抱き締め合い、キスを交わす。
「ん…………。…………神大君、私…………」
「……………………ああ」
俺と由季は……身体を重ねた。
明日には別れが待っている。滅びた世界では、この満天の星空が見れないかもしれない。愛しい温もりを感じることも出来ないのかもしれない。でも、必ず俺は……俺達は戻ってくる。
どんな時でも、どこにいても、俺達は繋がっているのだから。
Eternal Connection……"永遠の繋がり"がある限り…………。
世界は繋がる。
世界は繋がっていく。
魔はまだ滅びていない。
数々の事件の真相は解明されていない。
だがいつか……きっと……。…………彼らの、絆で。
世界は繋がる。
世界は繋がっていく。
"永遠の繋がり"はやがて、無限大に…………。




