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Eternal Connection<エターナル・コネクション>  作者: 鷹峯 彰
二章 -力を持つ者-
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第11話 生徒会研修in沖縄

 「夏休みだぁ~!」

 LHRが終わった途端に佳奈が叫んだ。周りの生徒も喜びを(あらわ)にしている。

 「嬉しいのは分かるけどよ…お前、部活あるだろ?」

 疾風が容赦のない一言を放った。

 「うぅ………。それは言わない約束だよ!そっちもちゃんとやるって!だからさ…今年は~海!行こ!?」

 佳奈は弓道部のキャプテンであり、弓道は嫌いではないようなので、部活を休むということは無いのだが、それとこれとは話が別のようだ。

 「はいはい。佳奈は部活頑張ってますねー。海なんか毎年行ってるだろ……。あ、神大、海っていえばさ、あいつら元気でやってるかな?」

 疾風が佳奈を軽くたしなめつつ問いかけてきた。。

 「うーん……海斗(かいと)陽介(ようすけ)か……アイツらが元気じゃないなんてことは想像出来ん。なんせ、夏だしな。」

 「あ~……それもそうだな。夏だし。」

 二人で妙に納得し合っていると、生徒会関連の話で呼び出されていた由季が教室に戻ってきた。

 「おまたせ~。……なんの話してたの?」

 「おつかれ~由季。んー?海行きたいなーってさ。そういえば神大君、さっき話してた人って、誰?」

 俺は疾風と顔を見合せながら、答えた。

 「ちょっと前に言っただろ?去年日本を回って、二人の神技使いに会ったって。その二人だよ。火神(ひがみ)陽介と水神(みかみ)海斗。沖縄で会ったんだけどな……元気が有り余っているというか何というか………。」

 「ああ…………。さすがの俺でもテンションに着いていけなかったぜ……。神技の腕は確かなんだけどな…。」

 俺達は、二人のハイテンションを脳裏に浮かべながら微妙な顔になっていた。

 「ふーん。疾風でも着いていけないってことはよっぽどなんだね~。」

 「ああそうそう…………ってどういう意味だおい。」

 「アハハ!冗談だって!」

 二人のやり取りに苦笑をしながら、俺は由季に問いかけた。

 「そういや、生徒会の話って何だったんだ?」

 「あ、そうそう!それを言おうとしてたんだ。えーっとね、生徒会の研修で、沖縄に行くことになったの。」

 「はい由季さん連れていって下さい!」

 佳奈がビシッと手を挙げながら懇願(こんがん)する。

 「おいおい…………連れてって貰えるわけが……」

 「うん、いいよ。」

 「ほらな……って、は…………?」

 疾風のみならず、頼んだ佳奈までもが絶句する。もちろん俺も驚いていた。

 「んーとね、生徒会の担当、弥生先生でしょ?皆も連れていきたいなー、って話したら、生徒会の人数が足りてないから、入ってくれたら勿論いいよ、って。」

 人数不足は新設校ならではの悩みである。しかし、いきなり入っていきなり行っていいのだろうか?

 「はいはい私生徒会入ります!だから沖縄連れていって下さい!」

 「おいおい……お前キャプテンだろ……?」

 佳奈の宣言に疾風が冷静な反応を返した。が。

 「あ、その辺は大丈夫だよ。新設校だからかな?会計とかもほとんど事務の人とかでやってくれてるから、月1で軽い書類整理するだけだから。」

 「ほら見ろ~♪やった~!沖縄だ~!」

 由季の言葉に佳奈が跳び跳ねている。

 「ったくお前は……。アイツらに引けをとらないテンションだな……。ま、いいか。それぐらいなら俺もやらして貰おうかな。佳奈のお()りが必用だし。勿論神大も入るだろ?」

 何だかんだ言って疾風も沖縄に行きたいのだろう。俺も勿論沖縄に行きたいし、生徒会に少し興味がある。俺は頷き、生徒会に入会することにした。

 「じゃあ、決まりだね。それじゃあ皆、一回生徒会室に行くよ?」

 由季に促され、俺達は生徒会室へと向かった。


 「おお~、意外と綺麗だな。」

 「…どんなところだと思ってたの?」

 俺の素直な感嘆の声を、由季は苦笑で返した。人数が少ないということで少し心配をしていたのだが、さすが新設校といったところか、生徒会室の設備は整っていて掃除もされており綺麗だった。

 「いやー、もっと散らかってんのかとさ……ってあれ?他の役員は?」

 「いないよ?」

 「え……?」

 俺はすっとんきょうな声を出してしまった。

 「だから、いないよ?って言っても、所属していないわけじゃないよ?たださっき言った通り、活動らしいことをするのは月1だし、皆部活で忙しいからね~…普段は私しか来てないんだ。備品の細かい整理とかしかやってないけどね。」

 (そういうことか……。一瞬びっくりしたぜ……。)

 「あ、それで、沖縄に行くのも、私一人だけの予定だったんだ。たまたま皆大事な試合とかが重なってるらしいからさ~…。羨ましがられて、お土産も頼まれちゃった。」

 由季が苦笑しながら言ってくる。成程、それで弥生先生に相談したのだろう。一人で行くのはさすがに寂しいものがある。

 「じゃあ、4人……と弥生先生だけの旅行だね!気が知れてる仲間同士っていいよね!おーし、楽しみだ~!」

 佳奈がはしゃいでいる。気持ちは分からないでもない。俺としても、気の知れた仲間同士だけでの旅行というものは嬉しいものだ。

 「もう佳奈ったら。一応研修だよ?……あ、そうだ。一応役割決めないとなんだけど、皆どうする?副会長一人と書記次長二人が余ってるんだけど。」

 「はーい!私書記次長やります!」

 佳奈が元気よく手を挙げる。まあ、佳奈はこう見えて達筆なので、一応適任だろう。

 「なんかお前今日元気いいな…。んじゃ、俺も書記次長でいいか?神大は由季ちゃんのサポートしてやれよ。」

 「楽だから選んだな……?……まあ、いいけどさ。最初からそうするつもりだったし。んじゃ由季、よろしくな。」

 「うん、よろしくね!」

 こうして、1分もかからずに俺達の役割は決まったのだった……。


 そして夏休み半ば。俺達は沖縄…那覇へとやって来ていた。

 「に、にふえーでーびる!」

 空港で荷物を受け取った佳奈が、たどたどしく言う。

 「無理に沖縄便使うなよ…普通に"ありがとうございます"でいいだろ………?」

 「まあまあ……沖縄気分を出したかったんでしょうから多目に見てあげたら……?」

 疾風がいつものように佳奈の言葉を混ぜ返すと、弥生先生がやんわりと言ってくる。弥生先生は保護者的な立場のはずなのだが、麦わら帽子に派手な色のシャツと、完全に遊びに来ている服装である。

 「まあ、いいですけど……、というより、先生のその格好はどうなんですかね……。」

 「コレ?まあいいじゃない。せっかくの沖縄だし。」

 「……結局先生も沖縄に来たかっただけなんですね…。」

 疾風が呆れ返っていた。弥生先生と麗香先生の姉妹で違いを挙げるとすれば、間違いなくこういうところだろう。麗香先生は基本的に真面目だったのに対し、弥生先生はどこかふんわりとしている。まあ、それが弥生先生の良いところでもあるのだが。

 「…まあ、せっかく来たんだから、楽しまなきゃ…だな!」

 疾風が吹っ切れたように言い

 「ああ。それに、もしかしたらアイツらにも会えるかもだしな!」

 俺も期待を胸に言って

 「私もその二人に会ってみたいな。…それじゃあまず、宿を目指そっか!」

 由季が弾む声で言った。


 そして30分後、道に迷った。

 「どこだよ……ここ…。弥生先生、道会ってるんです……よ……ね……」

 弥生先生の姿が見当たらない。ふと疾風の背中を見やると、何やらメモが貼ってあった。

 「えーと、何々……?…"近くに友達の家があるので寄ってから行きます。宿にはこの先を真っ直ぐ行けば着くはずです。頑張って下さい!"…………あの教師め。」

 俺は呆れ半分で溜め息をつくと、皆に、書いていた内容を伝えた。恐らく、先程お手洗いに立ち寄った売店でメモを書き、さっきの曲がり角のあたりで貼ったのだろう。音に敏感な疾風が気付かないとは何か凄い才能の持ち主……ということはないだろう。

 

 メモの通りに真っ直ぐ進むと、右手に海が見えてきた。

 「海だ~!」

 佳奈がはしゃいで、海岸の方へと走っていく。

 「おいおい気を付けろよー?落ちたら危ないぞ?神凪の海と違って、サメとかいるかも知れないぞ~?」

 疾風が注意しつつ脅かしている。

 「やだな疾風~、サメなんかいるはずないでしょ~?」

 疾風の言葉が冗談だということは佳奈にも分かっているようだ。水質汚染の影響によるためか、サメの生息数も近年だいぶ減少している。もっとも、普通のサメが出てきたところで、神技を使えば余裕で対処出来るのだが。

 「もう、サメサメ言って、本当に出たらどう……す…」

 由季は言葉を濁すと、震えながら佳奈の方を指差した。

「……ん?って、ハァ!?でか!!…ってか佳奈、あぶねぇ!」

 佳奈の真上から、体長50mを超えるかと思われる超巨大なサメ…らしきものが襲いかかろうとしている。直線上に佳奈がいるため、神器を使うわけにもいかない。疾風はなんたることか靴紐を結んでいて気付くのが遅れている。俺は"裁き"を有効に使うべく、佳奈に向かって走り出した。

 (くそ……間に……合えっ!)

 "加速"を使うが、佳奈との距離がだいぶ離れている。このままでは間に合わない。"アレ"を使うしか…。そこまで考えた所で、佳奈の横の方から男が走ってくるのを視た。その男の手には、矛が握られている。

 「はぁぁぁぁ!」

 男が気合いを込めると、矛が炎を纏った。次の瞬間、炎の矛が巨大ザメを貫いた。

 俺は茫然(ぼうぜん)としつつも、男と佳奈の方に駆け寄った。そしてその男の顔を確認した途端、俺は先程の現象に納得した。

 「陽介……!」

 その男こそが、"炎"の神技使い、火神陽介だったのだ。

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