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Eternal Connection<エターナル・コネクション>  作者: 鷹峯 彰
二章 -力を持つ者-
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第10話 風の音色,青藍の空

 「はーい、皆さん席に着いてください。今日は、編入生を紹介します。」

 私達2ーAの朝のSHR。担任である清水弥生(しみずやよい)先生が入ってくる。以前、清水という姓が気になって聞いてみた所、神凪中時代の私達3ーAの担任だった、清水麗香(しみずれいか)先生の年子のお姉さんだということが判明した。麗香先生と性格が似ていることから、生徒達からの人気はやはり高い。

 今日のHRの状況はどこか2年前に似ている気がする。もっとも、私と佳奈は編入生が誰かは分かっているのだが。

 教室のドアが開き、二人の編入生が入ってくる。神凪中時代のクラスメイトは予期せぬ再会に歓喜の声を上げ、高校からのクラスメイトは、初めて見る二人に興味を示しているようだ。

 「編入生の神条神大です。」

 「おなじく編入生の音神疾風です。」

 「えー、初めましての方は初めまして、よろしくお願いします。元神凪中の方には言っておきます。ただいま!」

 「「お帰り~!」」

 二人のことを知っている生徒達が揃って笑顔で言う。卒業式の日は、突然いなくなったので怒ってる者もいたのだが、今こうして再会すると、やはり喜びの方が強かったのだろう…。

 HRが終わると、元神凪中生とそうではない生徒を問わずに二人に詰め寄り、二人の周りには人だかりが出来ていた。

 これでようやく40人になれた。また二人も一緒の学校生活を送れる…。そう思うと、私の胸は高鳴ってくるのだった。


 由季との再会を果たしたあの日。珍しく甘えてくる(1年も会っていなかったので当然なのかも知れないが)由季を(なだ)めると、由季が聞いてきた。

 「それにしても…二人ともどこに行ってたの?卒業式の日にいなくなっちゃうし…。"俺達にしか出来ないこと"って何だったの?」

 当然の疑問である。俺としても、何も言わずにいなくなったのは悪いことをしたと思っている。俺は、今までのことを説明することにした。

 「さっきの…ってか前も見せたと思うけど、俺のあの"力"は、正確には神技(しんぎ)って呼ばれている。まあ、呼ばれている……って言っても、呼んでいるのは"力"を知ってる者だけなんだがな。……それで、この世界には3種類の、力を持つ者がいると言われているんだ。1つは、俺や疾風のように"神技"を使う神技使い。由季と佳奈を襲った奴らのように"魔法"を使う魔法使い。もう1つ……これはレアケースなんだが、"妖術"を使う妖術使い、だ。これらを使う者には、普通の人間には無いエネルギー…それぞれ"神力"、"魔力"、"妖力"と呼ばれるものが宿っているんだ。…っと、ここまではいいか?」

 「う……うーん……一応……。」

 由季の返事に頷き、俺は言葉を続けた。

 「それで、さっきの俺達が何をしていたかという話に戻るんだが、結果を言うと、さっき俺が述べた事を調べていた、ということになる。過程としては、卒業式の日、この島の北東に嫌な気配…力を感じたから二人で急行し、そこにいた奴ら…恐らく魔法使いの端くれだったんだろうな。そいつらを倒すと、魔法使いの頂点に立つあのお方が~とか言ってたから問い詰めたんだが消えちまって……。留守にすると由季達には悪いと思ったんだが、この島に危機が訪れるかも知れないと思うとそうも言ってられなくてさ……いろいろと調べてたんだ。」

 一旦俺が言葉を切ると、佳奈が反応してきた。

 「うーん…なんかよく分からないけれど…あれ?調べてた……って、言ってたけど、その神技とかって普通の人は知らないんでしょ?それをどうやって?」

 佳奈の疑問には、俺の代わりに疾風が答えた。

 「おー、いい質問じゃんか。そう…どうやって、って思うだろ?俺達も最初どうするべきか悩んだんだけどな?忘れてるかも知れねーけど、"力"について最初に説明した時に言ったろ、俺達と同じ年に、何人かの"力"を持ったものが産まれた……って。そこがミソだったんだ。そのことを俺達は調べたことは無い。最初から記憶の一部として持ってるようなものなんだ。それで考えた。なぜ俺達より明らかに歳上の奴らが"力"を使えるのか。考えてみると案外簡単だった。俺達と同じ年に産まれたのは、さっき神大が言ってた、"神技使い"なんじゃないかって。そうすれば辻褄(つじつま)が合うだろ?そして俺達は気づいた。裏を返せば、神技使いは俺と神大の他にもいるっていうことにな。」

 「……あ!もしかして……?」

 「そう。俺達は昨年、日本中で神技使いを探して回っていたんだ。まあ……思ったよりも神技使いの数が少ないのか気付かなかっただけなのかは知らないけど、見つけたのは二人だけだったんだよな…。」

 疾風の言葉に俺は続けた。

 「ああ……。でも、そいつらから、さっき俺が言ったことを知ることが出来た。何でかそいつらは逆に、15年前に何人かの神技使いが産まれたってことを知らなかったんだけどな。まあ、そんなこんで情報を集めた後には、少し修行をしてたんだ。早く由季達には会いたかったけど、これから先、強敵が現れでもした時に、二人を守れなきゃ帰っても意味が無い……って思ってな。それでそっからは、二人別々に修行して、この神器(じんき)を得て、今日戻ってきた……ってわけなんだよ。」

 俺が言い終えると、突然由季が俺の手を握ってきた。

 「ゆ、由季…………?」

 「いろいろ…あったんだね……。"力"とかについては難しくてよく分からないけど、これだけは分かるよ……?神大君達が、私達のために…この島のために、1年間頑張ってくれたってことが。……ありがとう。それに…帰ってきてくれて……本当に嬉しい。」

 眩しい笑顔で言われると、他のことはどうでもよくなってしまう気がしてくる。

 (この笑顔を……俺はずっと守りたいんだ……。)

 改めて、そう思わされた。


 そして今日。久々の4人での帰り道は、道が少し違うということもあり、どことなく新鮮だった。

 「……で~、去年は大変だったんだよ~?」

 佳奈が疾風に愚痴(ぐち)を溢している。疾風はそれを苦笑いで返している。久しぶりのそんな何気ない会話…何気ない日常が、今は何よりも幸せだった。

 暫く歩き路地裏に差し掛かったあたりで不意に疾風が立ち止まった。

 「どうした、疾風……?」

 「……しっ。静かに。何か聴こえないか?」

 疾風が指を立てて、真剣な顔で言ってくる。

 「何か……って何だ……?何も聴こえないが…。由季と佳奈は?」

 二人は首を横に振った。

 (……疾風だけに何かが聴こえている……のか?)

 「……そこ!」

 疾風が突然飛び出した。手には剣………神器が握られている。疾風が神器を振り抜いた。しかしその剣は何かに弾かれた。

 すると、そこに男の姿が現れた。

 「…私の不可視(インビジブル)を見破っただと?…いやまぐれだな…。そんなことは……ありえない!」

 再び男の姿が消える。俺は神器を顕現させ、由季と佳奈を背中に庇った。

 「疾風……気を付けろ!」

 俺は疾風に注意を促した。しかし疾風は、どこか不敵な笑みを浮かべている。

 「大丈夫だぜ、神大。何せ、俺の神技は……。…そこ!」

 疾風が神技を振るう。すると再び男の姿が現れる。見ると身体に傷が入っている。今度こそ疾風の剣が命中したのだろう。

 (何だ……どうなって………?)

 「……くっ…貴様……どうやって…?貴様の力は"風"のはずだ!風を使おうと…私は捉えられないようになっているのだ……!」

 男は俺と同じ疑問を抱いたようだ。すると疾風が言う。

 「ふん……。俺がいつ、俺の神技は"風"だって言った?……俺の神技は…"呼叫(こきょう)"だ。俺が使うのは、音の力だ。」

 「音………。」

 俺は驚きを隠せなかった。だがそれなら……。

 「それなら……何で風が……。…!そうか、呼叫…か!」

 俺の言葉に、意を得たりといった表情で疾風が頷く。

 「…そう。"呼叫"は、"音を使い攻撃・移動し、また音によって風などと共鳴し、それらの力を高める能力"だからな。そしてこの神器の銘は、呼叫の剣<リズヴェルド>だ。……神大、下がってろ。コイツは俺が倒す。」

 疾風が男の方に向き直った。

 「そんなもので私が……!…そこをどけ!私はその女どもを頂きに来たのだか…………」

 刹那(せつな)。言い終える前に、男の身体が真っ二つになり、(ちり)と化して消滅していた。

 (……速い!目で終えなかった…まるで音のような……音速の一撃……これが、疾風の…神技使い音神疾風の力か…………!)

 「……ふん。何が頂きに来た、だよ。佳奈も由季ちゃんもクラスの皆も、俺が護ってやる。指一本触れさせねぇからな。」

 そう言って疾風はこちらに戻ってきた。すると佳奈が疾風に駆け寄り、胸に拳を打ち付けた。

 「もう……カッコつけちゃって。……でも、少しだけカッコよかったよ……?」

 「え……何て?」

 佳奈の呟きは疾風にも聴こえなかったようだ。佳奈は疾風から離れると、輝くような笑みを作って言った。

 「なーんでもない!」


 こうして青藍の空の下、俺達は今度こそ帰路へと就くのだった…………。

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