表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小人の国  作者: 夏野ゲン
5/37

5


 沸かされた風呂からあがると、約束通りに温かいミルクティとパンが食卓にあがっていた。それだけで少し幸せな気持ちになれる。口にしたパンは素朴な味わいで、溶かしバターも作りたててまろやかな風味がある。ミルクティも人肌よりもいくらか熱い、ちょうどよい温度。思わず表情が緩んでいるボクを、千絵さんもまた緩んだ表情で見ている。心地の良い時間だ。


「ごほっ」


 ふとした拍子にミルクティと食べかけのパンが気管に入り、むせてしまう。その瞬間穏やかだった空気が一変する。


「芹沢さん、大丈夫ですか!? 病気ですか!? それとも、おいしくなかったですか!?」


 ロボットである千絵さんには、「むせる」、「咳き込む」、「くしゃみ」のような生理現象の感覚がわからないし、区別もできない。だからこそ、ただ食事にむせただけで、異常なほどに心配をしてくるのだ。


「こほっ、ああ、うん。大丈夫ですよ。ちょっとパンが引っかかってしまっただけです」


 ボクの答えても、彼女は心配そうな表情のままだ。


「ええ、本当に大丈夫ですよ。ほら、顔色も悪くないでしょう? パンもお茶もおいしいですよ。ほら、おいしくてもうなくなってしまった。うん、おいしいお茶だったからおかわりが欲しいな。千絵さん。お願いできますか?」


 おかわりを頼むことで、ボクを心配することより、仕事をすることの優先度が上がったのだろう。彼女は笑顔になってうなずき、おかわりの用意をし始める。こういうとき、やはり彼女は人間ではないんだなと改めて感じて、不思議な気持ちにさせられるのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ