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とらえた小鳥を口にくわえると、彼は手ごろな木の上にあがっていく。
そこで落ち着いたのだろう。かれはバリバリと小鳥の頭にかじりつく。羽が飛ぶ。血が散る。そして石渡さんの顔色はさらに蒼白になっていく。
蒼白な顔のまま固まっている彼女に声をかける。
「石渡さん、大丈夫ですか?」
「……あ、いや、なに、大丈夫だよ。ちょっと目の前で血が飛んだのに驚いただけだ。おかしいな。普段の仕事でも生き物が食べられるシーンなんてよく見てるのに。はは。いや、気にしないでくれ。大丈夫だから」
自分以外の生き物が何かの命を奪う光景というものには、それほど大きな衝撃は受けない。しかし、自分が何か生き物の命を奪う光景というのは恐ろしいものだ。それは感覚的にわかる。
今回は間接的にとはいえ、自分が先ほどまで生きていた動物にかじりついて食い殺すという光景を追体験することになったのだ。それはショックの大きいことだろう。
「別に強がらなくてもいいんですよ。スチュワートの食事の間だけでも目をつむっていても」
「いや、いい。大丈夫だから」
彼女はそういうと彼の食事風景を蒼白な顔のまま見続ける。まるで刻みつけるように。
「なんだか、たぶん、生きるってこういうことなんだろうな」
彼女のつぶやきの意図はボクにはわからない。
目の前に見える映像ではただ淡々とスチュワートの食事が続いていく。




