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小人の国  作者: 夏野ゲン
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 世界にはこれほどたくさんの人間がいるのか。それが僕の感じた最初の感想だった。

 今この仮想空間を生きあっている人間の数は、目に見える範囲だけで、僕がこれまでに出会ったことのある人間の数を優に超えていた。

 これほど多くのアバターの向こうに、人格を持った人間がいるのかと想像すると、それだけで途方もない気持ちになる。


「どうした、芹沢君?」


 戸惑いが表に出てしまったのだろう。僕は正直に答える。


「いえ、大丈夫です。これまでこんなにたくさんの人を見たことなかったから、ちょっと驚いてしまっただけです」


「えっ? 別に多くないぞ。これくらい。意識連動性も十分だし、脳波電動からの処理落ちもない。今日は空いてる方だと思うぞ」


 石渡さんの言葉に、僕は驚きを隠せない。


「なに驚いた顔してるのさ? 今の世界人口知ってるかい? 150億人だよ? そのうち脳波リンクネットワークの使用人口は80%を超えているんだから、それぐらい当然でしょう。今ここに見えているガラパゴスだって、サーバーが100以上あるんだから、ここに見えているアバターなんて、利用者のごくごく一部だよ?」


 ああ、知っている。教科書としては。世界人口が現状150億人以上いると。

 だけど、情報として知っているのと、実際に見てみるのとでは印象が全然違う。まさしく、「百聞は一見にしかず」今ではほとんど失われてしまったらしい「ことわざ」という言語の概念。

 しかし、本で学んだそれは面白く、僕の中に残っている。強く共感できることも多いうまい言い回しだと感じる。


「ええ、そうですね。でも、田舎者の僕はちょっとびっくりしてしまいました。……普段は人間より、鶏の方が多い家で生活していますからね。むしろ、ここにいるアバターがみんな鶏だったら驚きませんでしたよ」


「そうなったら私が驚くわっ!!」


 石渡さんは鋭い突っ込みを入れた後に、くつくつと独特の笑い声をあげ始めた。どうやら僕の冗談は、また石渡さんの琴線に触れてしまったらしい。

 石渡さんの笑い声に釣られるように、僕も自然に笑っていた。


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