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さて、一応ネットワークへのリンクはできたことだし、あとはスチュワートが洗い終わるのを待つだけなのだが……。
「さて、時間が余ったな」
「そうですね。どうしましょうか?」
コンピュータは少し古くなっているので、接続が悪くなってしまうことも多々あった。だから念のために早めに起動したのだが、今日は思った以上にすんなり接続できてしまった。
「なあ、芹沢君。さっき、このコンピュータ、小人の世界のネットワークにつながっているって言ってたよな?」
「はい。一応つながっていますよ」
石渡さんの質問の意図がよくわからなかったが、とりあえずうなずいて答える。
「それじゃあ、このネットワークは『ガラパゴス』にも接続できるのかい?」
「『ガラパゴス?』ああ、ええ、つないだことはないですけど、できるとは思いますよ」
『ガラパゴス』は、確か小人の世界のネットワーク上の大手通信販売サイトの名前だったと思う。名前の由来は、かつて多様な生物種を有していた『ガラパゴス諸島』という島々の名前から取ったらしい。多様な進化を遂げた、多様な生物種というイメージが、他品種を雑多に扱う通信販売サイトの名前としてはぴったりだったのだろう。
今ではガラパゴス諸島がどうなっているのか、正しい知識を持ち合わせている人類はほとんどいないのではないだろうか?
さて、そのガラパゴスにつなぐことができるのか? と問いかけてくるからには、石渡さんに何か欲しいものがあるということなのだろう。
「えっと、何か買い物ですか? 買い物したとしても、ここまで商品を届ける手段は無いんですが……」
商品を送り届けてもらうにしても、ここは小人のコロニーから離れ過ぎており、輸送範囲外だろう。
「いや、そんなことはわかっているよ。ただ、ちょっとみたい商品があるんだよ」
「へえ、一体なんですか?」
ボクの問いかけに、石渡さんは急に意地悪な笑顔を浮かべる。
「ああ、どっかの誰かさんに着ている服をきつきつになるほど縮められちゃったもんでね。新しい服が欲しくてさ」
ボクは笑顔のまま固まる。
「いやー。まったく困ったもんだよ」
「えっと、その非常に申し訳ないです」
ボクは謝罪の言葉をはさむ。それを見て石渡さんはまた満面の笑み。
「ふふふ。本当に君はまじめだなあ。ただの冗談だよ」
「冗談だってわかっていても、ボクは申し訳ないと思っていますから」
「いいんだよ。君には助けられたんだ。服なんて新しいものを買えばそれでいい。そうだ。せっかくだし、服選びつき合ってくれないか? 私一人だと、いつも同じような買い物になってしまうから、たまには違う誰かの意見を聞きたい」
彼女の提案に対してボクはうなずく。
「それが謝罪の変わりになるんだったら」
「本当に君は生真面目すぎるくらい、生真面目だな」
ボクの答えに石渡さんは苦笑で返した。




