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「『顔が大きすぎる』は、ちょっとあんまりじゃないですか? 石渡さん。それを言ったらボクにも石渡さんの顔は小さすぎてよく見えてなかったですよ」
「ふうん、そうか。それじゃあ同じサイズで対面してみてどうだい?」
彼女はいたずらっぽくウィンクして見せる。なんだか試されているな、と思う。
正直な話、ボクは同じサイズの異性どころか、小人の女性すら対面するのは今日が初めてだ(ロボットなら千絵さんや、他の作業用のものを見たこともあるけれど)。だから、「対面してみてどうか?」と聞かれてもうまい返しなんて何一つ持ち合わせていない。だからと言って正直にそれを口にするのも、この場合では間違いだろう。
小説の中の男のセリフのように、「きれいですよ」の一言でもいうシーンかもしれないが、それはボクの持っている情報では絶対に本心にならないから何か違うような気がする。
ということは、あり合わせの知識情報を使って、ボクは当たり障りなく答えるのが正しい。
「そうですね。目が二つ、鼻が一つ、口も一つで耳は二つ。肌の色も同じ。まるで同じ人間どうしみたいですね?」
小説のなかで誰かが言っていたちょっとした冗談のセリフ。そして今のボクの本心に限りなく近いセリフ。
ボクの答えを受けて、石渡さんは一瞬だけポカンとした後、急に下を向いてわなわなと震えだした。何かまずいことを言っただろうか、と思ったがよく聞いてみると、くつくつとこらえるような笑い声が聞こえてくる。
「なんだい、それ。うまいジョウダンだね。もう!!」
どうやら失敗ではなかったらしい。
「でも、それは初対面の女の子をほめるセリフとしては0点だね。『かわいい』の一言でも言ってくれりゃあいいのに」
彼女の言葉にボクも軽口で返す。
「『かわいい』ってほめてほしかったんですか?」
「『かわいい』って言われて、うれしくない女の子はきっといないさ。冗談でもね」
冗談めかして彼女は笑った。




