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胸ポケットに気を使いながら梯子を下り、2階に戻ってくる。梯子を降りるときにはキュッと握りしめられていた胸ポケットの力も、安心したようにふっと弱まる。
スチュワートの洗浄というボクには困難な作業も、千絵さんの手にかかればあっというまだし、スチュワートの洗浄が終わるまでそれほど時間はかからないだろう。それじゃあ先にコンピュータを起動しておくのがよいかもしれない。
2階から下りて、1階まで下りてくる。風呂場では水の流れる音が聞こえてくる。ボクがスチュワートを洗っていたなら盛大に暴れまわって、鳴き声や騒音が響き渡っていただろう。風呂場からすりガラス越しに千絵さんに呼びかける。
「スチュワートが洗い終わったら、コンピュータルームまで連れて来てください」
呼びかけてから一拍置いて、千絵さんの返答
「はい、わかりました。任せてください」
ボクはその答えを聞いてからうなずき、コンピュータルームへと移動する。
「コンピュータルームか」
石渡さんの言葉にボクは苦笑しながら言う。
「そんなに大層なものじゃないんですけどね。小人、いえ、『人間』のコロニーのコンピュータに比べたら何世代も前のものでしょうし。ボクのコンピュータの用途なんて、家畜の個体管理や飼料状況の確認とか程度ですし。あっ、でも家畜を卸すときには、コロニーや他の人間、いえ、『巨人』との情報の共有は必要ですから、一応ネットワークには接続できます」
「なるほどね。必要に迫られての設備か。わたしたちの世界のコンピュータのあり方とは真逆かもな……」
ボクの言葉に、石渡さんはなぜか少し疲れたような表情を浮かべる。
「コロニーのコンピュータのあり方?」
「いや、何でもない。大したことじゃないんだ。気にしないでくれ」
問いかけたボクに、石渡さんは浮かない顔でこの話題を続けることをやんわりと拒絶する。彼女の顔を見ると、ボクはそれ以上言葉をつなげることができなかった。




