表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小人の国  作者: 夏野ゲン
24/37

24



「お待たせしました。それじゃあ降りましょうか」


 ボクが石渡さんに向かって手を差し出すと、嫌そうな顔をされる。


「どうしました?」


 理由がわからずボクが問いかけると、彼女は不満そうに言う。


「そんな汚れたシャツのポケットの中に私を入れる気なのか?」


 言われてみて初めて、胸元が泥でひどく汚れてしまっていることに気がつく。


「ああ、すいません。この中に入ったらドロドロになっちゃいますよね。えっと、それじゃあどうしたらいいだろう?」


 ボクが悩んでいると、石渡さんはこわばらせていた表情をゆっくりと崩して、笑い始めた。


「えっ? えっ? どうしたんですか? 何かおかしいことでもいいましたか?」


「いや、ちょっとからかってみただけなのに、すごく困った顔をしていたから、面白くなってしまっただけだよ。私も外の世界を旅している身だし、汚れるのなんかなれっこさ。気にしないよ」


 そう言うと彼女はボクの差し出した手のひらに乗った。やはり彼女の体重は軽くて、もともと同じ生き物だったとは到底思えない。姿形は似ているのに、本当に全然違うと思う。

 手のひらに乗せた彼女をそっと動かし、胸ポケットの前に連れていく。


「汚れてしまって居心地悪いかもしれないですが、少しだけ我慢してくださいね」


 ボクの呼びかけに、石渡さんはポケットの中からこちらを見上げ、笑って答える。


「ふふ、別に居心地は悪くないよ。むしろ温かくて気持ちいいかな」


 ああ、ボクが彼女の体温を感じていたように、彼女もボクの体温を感じていたのか。

 当たり前のことに気がついたとき、何故だか胸が温かくなるのを感じた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ