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ともかくドロドロに汚れた状態のスチュワートを、シャツを汚しながらなんとか捕獲する。スチュワートを抱えたままでは、石渡さんを胸ポケットに入れて移動することはできない。一旦ネズミに形態を変更することも考えたが、形態変化にはそれなりに時間がかかるし、なによりスチュワートの体に負荷をかけるのでやめておくことにした。
結局、千絵さんを呼び梯子の上からスチュワートを渡すことにする。
ボクの呼びかけから数十秒後、千絵さんが梯子の下に姿を現す。
「はい。芹沢さん。およびでしょうか?」
「ああ、千絵さん。今日は何でも呼んですいません。スチュワートを渡すので、下で受け取ってください」
「はい。了解しました」
千絵さんは梯子の下から両腕を伸ばし、ボクは梯子の上からスチュワートを差し出す。この間のスチュワートはだらりとして大人しい。なぜなら彼は千絵さんが苦手だからだ。千絵さんに何度かしっぽを踏まれたこと、なでる時の力の使い方が下手らしく、毛が逆立つこと、ネズミモードのときに害獣と勘違いされて追いかけまわされたこと、もろもろの事情があって、彼は千絵さんを前にすると大人しくなる。彼女の前では大人しくしていることが一番安全だと学んだのだ。
「それから、スチュワートがひどく汚れているので、風呂場でよく洗ってから乾かしてやってください」
ボクの依頼に対して、二人はそれぞれに答える。
「はい! お任せください!」
「……ナァ」
人間にしか見えないロボットの彼女は、明るい笑顔で大きくうなずき、猫にしか見えないアンドロイドの彼は、絶望したようなせつない顔でこちらを見上げてくる。
「それじゃあスチュワートさん。いきますよ」
こうしてスチュワートは絶望の風呂場へと連れられて行くのだった。




