22
梯子の登りで一段飛ばしたり、早足ができたりするほど、ボクは運動能力が高くはないし、無謀でもない。階段の時のような冒険はせず、きつい斜度のついた梯子を一段一段慎重に登っていく。
梯子の半ばを過ぎたころに、誰かが胸ポケットをつかむ力が強くなったように感じられる。この梯子はボクですら高いと感じるのだ。小人の彼女が見たら相当怖いはずだろう。
梯子を登り終えて屋根裏に着くと、胸ポケットをつかんでいた力がふっと緩められる。怖かったのかと問いかけておちょくれば、また楽しい会話ができるかもしれないが、流石にかわいそうなのでやめておく。
屋根裏部屋までなんとかたどり着く。壁を伝い、手さぐりに電灯を探し当てて灯りをつける。
「ほこりっぽいな……」
彼女は胸ポケットの中から顔をのぞかせながら、彼女は言う。
「ええ、まあ。普段から物置程度にしか使っていないので、掃除もめったにしませんから」
うす暗く、掃除をしていなくてほこりっぽい。当然ネズミの1匹や2匹は出るし、それだけでネコが好むには十分な条件だろう
「スチュワート」
ボクは灯りの届かない暗がりに呼びかけるが、答えは帰ってこない。
「スチュワート!」
もう少し大きな声で呼びかけてみる。今度は暗がりの向こうで何かがうごめく気配がある。しかし、やはり返事はない。
「仕方ないな……」
ボクはズボンのポケットの中から、スチュワート用の餌が入った小袋を取り出す。
……ガサガサガサ。
部屋中に響くように音を立てる。
「ナァー」
餌袋の音に反応し、暗闇の向こうから黄色に光る二つの目がこちらをじっと見つめてくる。
「ほら、これやるからこっちにきなさい」
ボクの言葉の意味を理解してか、それとも餌に釣られてか、恐らく後者だと思うが、スチュワートは暗がりから灯りの届く範囲に姿を現した。
彼は足元にじゃれつきながらひっかき、目当ての物を要求している。
「はいはい。今やるから。それにしてもお前、またずいぶん汚れたね」
彼の毛は外を出歩いていたせいか少し湿り、泥もついていた。
その状態でほこりっぽい部屋に入ってしまったのだから、それはもうなかなか大した汚れっぷりだった。
「本当にアンドロイドなのか? ……こんな汚いのが」
石渡さんの問いかけに、ボクは苦笑で返すほかになかった。




