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「それじゃあとりあえず、スチュワートを探さないと」
「探す? プログラムや何かで、呼び戻せるようにはしていないのかい?」
「ええ、うちは放任主義なもので。呼び戻しができるようにプログラムを組み直すのも面倒ですし」
ボクの言葉に、彼女は少しあきれたように言う。
「アンドロイドなのに放任主義なんて、まったく何の意味があるんだか」
「いいんですよ。それで困ることも特にありませんし」
「事実今困っているじゃないか。主に私が」
石渡さんの切り返しに、ボクは頭をかきながら答える。
「まあ、そうですね。でも、いる場所に心当たりがあるのですぐに見つかりますよ」
ボクの答えに石渡さんはまだ納得がいっていないような顔をしていたが、ボクはそれに気がつかないふりをする。
「それじゃあ、とにかくそのアンドロイドを探しに行こう。私もついていく」
「ついていくって……体のサイズが違うし、ついてこれないと思いますよ? ここで待っていてください」
「そんなものはわかっているよ。でも、私のために探してもらうのに、ただ待っているだけっていうのは落ち着かない。だから、ついていかせてくれないか?」
石渡さんの言葉は理解できる。
「それじゃあ、こうしましょう」
ボクはシャツの胸ポケットを広げて、テーブルの高さと同じになるまでかがんだ。
一瞬怪訝そうな顔をしていた石渡さんだったが、すぐにボクの意図を察したようだ。彼女は少しためらった後に、ボクの胸ポケットの中に入ってくる。布ごしに彼女の体温が感じられて、温かいと思う。
「大丈夫ですか? きちんと入りました?」
ボクは胸元を見ながら問いかける。
「ああ、大丈夫。きちんと入れたよ。」
ポケットに収まりながら、石渡さんは笑顔で答えた。
「それじゃあ立ち上がりますよ」
ポケットにいらない衝撃を与えないように、ゆっくりと体を起こしていく。
「うわぁ……」
ポケットから漏れてきた感嘆の声に、ボクは問いかける。
「どうかしました?」
「高いなって。私もホビィで空からの景色を見てるけど、それとは違う高さだなって思ってね。巨人は普段からこんなふうに世界を見ているのか」
彼女の声は楽しげで、まるで子供のようだった。




