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千絵さんに頼んで衣類を持ってきてもらう。そうする以外に落ち着いてもらう方法が思いつかなかった。
「千絵さーーーん!!」
本日二度目になる必死な呼びかけ。例によって少しの間を開けて、千絵さんが答える。
「はいはい。今度は何事でしょうか?」
「さっき乾燥を頼んだ小人の服なんだけど、急いで持ってきてもらえないかな?」
千絵さんは笑顔のまま2秒ほど固まり、そこからゆっくり困ったような表情になる。
「いえ、でも、まだきちんと乾いていませんよ? もう少し時間をかけないと……」
「うーん……でも、とにかく早くしてほしいんだ。ドライヤーか何かを使って、手早く乾燥できないかな?」
ボクの依頼に、今度は長めに思考時間5秒。戸惑いに笑顔を混ぜながら、千絵さんは答える。
「やれるだけ、やってみます」
千絵さんへの依頼を終えて部屋に戻っても、小人はまだタオルの中から出てきてはいなかった。よほどショックだったらしい。これまで一人で暮らしてきたボクには、そのショックの大きさはわからない。でも、気絶して目が覚めたらやたらと大きな人間の家にいて、しかも服を脱がされていたら、確かに泣きたくもなるかもしれない。そんなことを考えながら待っていると、千絵さんが部屋に入ってくる。
「芹沢さん。お待たせしました。でも、その……」
歯切れの悪い様子の彼女を見て、一抹の不安を感じながらも、勇気を持って尋ねる。
「どうしたんですか?」
彼女が差し出してきたのは、小人が着ていた服だった。ボクが依頼したとおり、その服はきちんと乾いており、すぐに着ても問題ない。ただ、一つ問題があった。元から小さかったはずの小人の服。それを無理やり乾かしたせいで、ボクの目で見てもわかるレベルで小さく縮んでしまっているのだった。
「これ、着れるんだろうか……」
小さくつぶやいたボクの声に、千絵さんは苦笑いを浮かべたまま何も答えなかった。




