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うとうとしていたボクの目を覚まさせたのは、おでこに響いた軽い衝撃だった。いや、衝撃というほどのレベルではない。効果音をつけるなら「ペチペチ」という感じ。何かがぶつかっていると感じるだけで、いたくもなんともない。
ゆっくりと体を起こしながら目を開ける。そこでようやく衝撃の正体に気がつく。
「ああ、良かった。目を覚ましたんだね」
そこには先ほどまで気を失っていた小人がタオルで体を覆いながら立っていた。先ほどまでの衝撃は、彼女がボクを起こそうと、叩くなりけるなりしていたのだろう。
目を覚ましたボクに向かって、彼女はほほを赤く染めながら、何かを言っている。
「ふく」
小人の声はやはり想像通り小さく、何を言っているのかはっきりとしない。
「えっ? 何? よく聞こえない」
ボクは耳を彼女に近付ける。すると、息を吸い込む音が聞こえ、そして……
「服返せって言ってんだ!! エロ馬鹿巨人!!」
ものすごい音量の暴言が、耳の中に飛び込んできた。それは小さな体からは想像できないほどの大きさで、至近距離でそれを受けてしまったボクの耳は、「キーン」と耳鳴りをおこし、一瞬、聴力を失った。
「ああ、ゴメンね。ひどくぬれていたから脱がせてしまったんだ。今、千絵さんが乾かしてくれているから、少しだけ待っていて」
耳を押さえながらボクが言うと、彼女は顔を赤く染め、わなわなと震えだした。
「あんたが、脱がせたの?」
「えっ? なに?」
まだきちんと聴力が戻りきっていなかったボクは、彼女の言葉が聞き取れない。
「だから、あんたが脱がせたのかって聞いてんだよっ!!」
再びの大音量。しかし、今度は大声の気配を感じてとっさに耳を離したので、耳鳴りはせずに済んだ。
「ああ、うん。そうだよ。あのままじゃ冷え切ってしまうと思ったから、ボクが脱がせた」
ボクがそう答えると、彼女は震えを大きくしてから、一筋涙を流した。
えっ? と思っているうちに、彼女はタオルの中に完全に体をうずめて、声をあげて泣き始めた。
「うわあああああっ。巨人の男に服、脱がされて体を見られるなんて、もうお嫁にいけないいいいっ!!」
小さな体から発せられた悲痛な叫びは、タオル越しでもよく聞こえてくるのだった。




