6.ツァーリとヴェーラともみもみ
モミモミは赤ちゃんの頃の名残です
皇帝ツァーリ視点)
吾輩は猫である。
皇帝である。
気まぐれである。
好き嫌いははっきりしている。
そして――
ヴェーラは“特別枠”である。
---
✦ 一、柔らかい手が来た
その日、吾輩は廊下で丸くなっていた。
そこへ、白い影が近づく。
ヴェーラである。
「ツァーリ……今日もかわいい」
ふんわり笑って、
ゆっくり手を伸ばしてくる。
吾輩は目を細める。
(……来たな。我が好む“良い手”が)
ヴェーラの手は柔らかく、
優しく、
決して乱暴に触らない。
それだけで――
吾輩は即座に陥落する。
---
✦ 二、皇帝、モミモミを披露する
ヴェーラが膝をついた瞬間、
吾輩の身体は勝手に動いた。
ゴロ…ゴロゴロゴロ……♡
喉が鳴り、即座にヴェーラに抱かれながらうっとりした。
「ふふ……かわいい……ツァーリ」
(うむ!褒めよ!もっと褒めよ!)
そして前足が――
自然と、動く。
ヴェーラの胸もとを前脚で踏みならした。
もみ……もみ……もみもみ……♡
「きゃ……モミモミしてる……かわいい……」
(よかろう!我は皇帝、だがそなたには見せてやる!
選ばれし者にのみ許される至福タイムだ!)
---
✦ 三、そこへ現れる団長
案の定、
この“甘えタイム”を許さない男が現れた。
イーゴリだ。
「……おい」
「あ、イーゴリ。ツァーリがね、
モミモミしてくれて……かわいいの……!」
イーゴリの目が鋭く細くなる。
「……お前、俺にはやらねぇのにヴェーラにはやるんだな?」
イーゴリも好きだが、ヴェーラは殿堂入りである。
吾輩はうっとりして答えた。
(当然だ。
お前の手はでかくて少し雑だ。
ヴェーラは柔らかい。比較にもならぬ)
イーゴリはじとっと吾輩を見た。
「……俺にはやらねぇくせに」
(愚か者。
お前がヴェーラに嫉妬しているのであろう)
---
「ふふ……ツァーリ、甘えんぼさん……」
もみもみ♡もみもみ♡
吾輩は至福であった。
(うむ!そなたの胸元は柔らかくて気持ちよい!)
イーゴリがながめながら段々と口をへの字に曲げてきた。
「……おい」
その顔は――
嫉妬7割、羨望2割、煩悩1割。
吾輩
(ふむ……あからさまだな?)
---
✦ 四、形が変わる胸を、見る団長
ヴェーラに寄りかかった吾輩が
胸元をもみもみするたびに、
柔らかい部分が
ふにゅっ
と形を変える。
そのたびに――
イーゴリの目が動く。
・一瞬止まる
・そらす
・また見る
・そらす
・頬が赤い
・息が少し荒い
吾輩
(……ムラムラしているな?)
完全にバレている。
---
✦ 五、しかし素直になれない男
イーゴリは、照れと見栄で言ってしまった。
「そんな……平らな胸でかわいそうだな?
ツァーリ」
非常に苦しい嘘である。
「……は?」
ヴェーラは固まり、一瞬で冷える気配。
「真っ平らだからな」
吾輩はヴェーラに訂正した。
(平らではない。
むしろ、しっかりある胸で、柔らかである。
知っているか?
お前の言葉に今、乙女が傷ついたぞ?)
ヴェーラは赤くなりながら
ちょっと怒ってイーゴリを睨む。
「……イーゴリ、ひどい」
「っ……お、俺は……!」
我輩は2人を見ながら思った。
(言えぬのだろう?
“羨ましい”と?
“触りたい”と?
“俺がやりたい”と?)
---
✦ 六、皇帝はすべてお見通し
吾輩は胸元で落ち着いた顔をしつつ、
内心こう思っていた。
(ふふん……
我がヴェーラの胸をもみもみしたから、
羨ましくて仕方ないのだな?熊)
イーゴリが悔しそうに目をそらすたび、
吾輩は尻尾をゆらりと揺らす。
(よいぞ。もっと焦れ。
もっと欲しがれ。
お前が素直になるまで、
我はヴェーラの胸元を占拠する)
---
✦ 七、最終的に
イーゴリはそっと呟いた。
「……ツァーリ、その……
お前ばっか……ずりぃよ……」
(ああ、やっと本音が出たな)
ヴェーラはまだ不機嫌に顔をゆがませて聞いた。
「なにがずるいの?」
「なんでもねぇ」
吾輩はヴェーラにだかれながら2人のもどかしさにせせら笑った。
(ほれ、もっと素直になれ人間)
胸元でもみもみしながら、
吾輩は満足げに目を細めた。
---
✦ 結論 ✦
吾輩は猫である。
皇帝である。
そして――
イーゴリの煩悩と嫉妬はすべて見抜いている。




