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盲目 2

老紳士はそう言い黒い飲み物を高級感あふれるカップに注いでいた


「君がいた集落が産地のこの珈琲豆は実に美味しい...栽培方法を教えてほしいものだね」


 博士と言われた老紳士は高級感あふれるカップで珈琲を飲む。

 だが、集落の人達、そして私自身、作った農産物は「神」達に献上しなければいけない、しかも高級品である珈琲は飲んだことがない。

 老紳士は部屋の隅にあるスイッチを押し壁に黒い線が現れ横にスライドしキッチンスペースが出てきて、カップを置いた。


(そこを押すとキッチンが出てくる…処刑されるかもしれないのに何を考えてるんだ…)


二人は呆然としながら棒立ち。

 黒装束の幼女が激怒し、研究員の女性は顔を青ざめたままだった。


「おい 博士...あんた何言ってんだ『人』に...何を考えているんだ...!言って良い事と悪い事があるんじゃねーのか!?」


 博士と言われる老紳士は少し驚いた様子を見せ


「おいおい 何をそんなに怒っているのかね?フミネ君? 私は言ったはずだがね...これは独り言にすぎないと...それとも君たちは他人の独り言を盗み聞きするような変態なのかね?」


 そういって、彼女たちを睨むように珈琲を飲む。


「だが 君たち フミネ君 シラヌイ君そして『人』であるアタマガワ ルイ君 君達は私も独り言を聞いてしまったんだ...」


「あの...あなた方は『神』なんですか...?」


 私は身体を震わせながら聞いた。


「ああ、そうか まだ君は『処刑』対象だと思っているのかね 『処刑』をするなら意識を失ってる時点で頭に穴が開くはずだと思わないのかね…?まぁ 今は「保護」名目だが...」


「...」


 私は疑問を感じた。

 なぜ、彼らは私を「殺さない」のか?なぜ私を「保護」しているのか


「どうした?なんで『僕ちゃんを殺さないの』みたいな顔をしやがって...」


 フミネと言われた少女が私に喧嘩を売るかのように言う。私は少し苛つき、ベッドから立ち上がろうとした、彼女はもう拳を振り出していた。私の右足を狙っているようだった。


「よさないか フミネ...」


 博士が彼女の腕をつかみ、フミネは宙に舞い受け身をとった。


「ルイ君 君を殺さないのはね...君に私たちの『眼』になってほしいの...」


 シラヌイと言われた女性研究員が私に言う。奥で「痛ーい」と聞こえるが無視した


「どういう意味です...」


 言っている意味が理解できなかった。「神」の「眼」になれってどういうことだよ。

 フミネに投げ技をし、立ち上がった博士が続ける。


「『人』はそして君も何か 誤解しているようだな...我々『神』はほとんどが『盲目』そして特殊な『義眼』を装着しているのだよ...」


 義眼?盲目?意味が分からない。


「だから どういう意味ですか!?『盲目』ならどうして彼女 フミネさん...でしたっけ? は僕に弾丸を撃ち込めたんです!?」


 フミネは頭を掻きながら起き上がる。


「だから、特殊って言ってんだろ 実際には視えてねーんだよ」


 博士がフミネの様子を見た瞬間、眼がまた黒くなり「どうやら、懲りたようだな...」と言う。


「そうだ 我々『神』は空気中のごみや塵を微弱の電気を通して それを「義眼」が3Dスキャンしてレーダーみたいになっているのだよ…シラヌイすまないが後の説明を頼む 私は少し『禁書』を調べるから 少し出る」


 博士がそういって部屋を出た。

 シラヌイが紙を見せる。


「これはね カルテと呼ばれるものなの...」


 紙には凸凹したものが規則的に並んだ何かがあった。


(これで何を見るんだよ)


 シラヌイは私の思考を理解したか、少し笑い、話をつづけた


「大昔はここに患者の情報が『文字』として書いてあったらしいけど、今は平面に書いてある もしくは 描かれている物は3Dスキャンしてもなんて書いてあるのかわからないの...平面だからね...だから私たちは『点字』を利用しているのよ」


「で こいつに私たちの『眼』になれって?今は反対だ...」


 フミネが私がいるベッドに座る。


「フミネさん どうして?」


「博士とあんたの話とさっきアワセの話を聞いてて思ったことだが こいつは今 こうしてあんたらの話を聞いているが 数日前に父親を殺されて 『処刑』されるからって保護されて 保護された奴らに殺されかけて右足の開放骨折をしているんだぞ...その場には私の後輩のアワセもいた...おそらくこいつは恐怖でただ私たちの話を聞かざるをえないだけだろ...博士も、シラヌイあんたもせめて少しこいつのメンタルのことも考えてやれよ...」


 そうだ、私は二度も殺されかけた、こいつら『神』による権力と『人』を差別のせいで

 今、恐怖よりも血液が沸騰しそうなほどの怒りを感じている。何か手段があるのならこいつらを殺したいが、殺す手段は今はない。奴等は私を殺さずに私を一応『保護』名目で生かされている。それに今殺したとしても、ここがどこなのか、他に『神』がいるのか、どんな武器があるのか、そして先ほどの武道のような動き...もし仮にこの場にいる『神』を殺したとしてもすぐに鎮圧されて『処刑』される。それに私は今、右足が動かない、包帯を巻かれギブスで固定されている。痛み止めが切れ始めているのか少し右足が痛い。


「フミネさん 私たちの任務を思い出して...」


「だが...奴はまだ十二歳だぞ」


「だからいいじゃないの『文字』に興味があって 『指名手配』の子だから利用価値があるの...それに彼には『懸賞金』がある もし私たちにたてつくのなら 彼を『神』の本部に梱包して配送すれば私たちに『懸賞金』が振り込まれる 一石二鳥じゃない…」


 シラヌイは私を見てこう言った。

 この『神』は私のことを道具としてしか見ていない。


「それにフミネさん あなたは『神』とはいえ良心があるようね...」


「どういう意味だ...」


「あなたにも同じように馬鹿な『神』共にも少しは良心はあるみたいなのよ...」


「まさか...」


「僕は 助かる可能性が高く 道具として長く使えると...」


 私はこう答えた。

 シラヌイは私の方に振り向く不気味に笑っていたが、義眼だから眼が笑っているようには見えない。


「ピンポーン!正解!」


 まるで、何か喜んでいるようだった。シラヌイは続ける


「まぁ 説明が少し長くてわかりづらいだろうから 簡潔に言うわ...ルイ君にはやってほしいことがあるの...」


 私の右足をシラヌイがなぞるように触る。


「何をするんですか?」


「右足が治るまでに『文字』の勉強よ」


 私にトラックが正面衝突するような衝撃だった。


「はぁ!?」


 フミネが続けた


「だから言ってんだろ...私たちの『眼』になれって」


 シラヌイが私の顔を両手で掴み、眼をのぞき込むように見る。


「私たちの『義眼』は立体物には反応するの...だから暗闇でもそこに物さえあれば私たちは避けたり 銃で底を撃ったりするわ まぁ そこはあなたが体験したからわかると思うけど...」


「た...確か...に」


(く...苦しい)


 顔がつぶれるくらいに力強く掴んでいるので呼吸がしづらかった。

 フミネさんが続ける


「だが 平面のものは反応しない...つまりそこに『文字』が書いてあっても平面だから『文字』は読めない」



「だから 僕が『文字』を読んで 『点字』に翻訳をしろ的なことですか?」



 そう聞くと、二人は頷いた。






ーーーー数か月後



 私は完全に『文字』を読めるようになっていた。


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