暴走する「水のルール」
## 【実験1】「授業中に水中居眠り」編
「ねえ、これなら絶対バレないよ」
みぞれが俺に差し出したのは、**巨大な水風船**だった。
「……何の罰ゲームだ?」
「違うよ! これに顔を突っ込んでれば『水中』になるでしょ? だから授業中に寝てもバレないの!」
朝の教室で、みぞれはまるで世紀の発明でもしたように胸を張った。
「お前、頭まで水没させる気か……」
「カイトも試してみる? ほら、二人で一緒に――」
ポチャン!
みぞれが突然、水風船に顔を突っ込んだ。
「……っ!?」
クラスメイトが一斉にこちらを見る。
(マジでやべえ奴だ……!)
だが、次の瞬間――
「あれ? 小野寺さん、いないよね」
「さっきまでいたのに……トイレ?」
誰もみぞれの異常行動に気づかない。
(……マジかよ)
水風船から顔を上げたみぞれは、にやにやと笑っている。
「ほらね? 水中なら何しても無敵なの**」
## 【実験2】「雨の中、無銭飲食」編
「カイト、次はこっち!」
放課後、みぞれは傘もささずにコンビニへ走り、レジを通さずにパンを齧り始めた。
「おい! みぞれ!?」
店員の目が合う。
(終わった……)
だが、店員は俺を見て首を傾げた。
「お客さん、濡れてますよ? 傘お忘れじゃないですか」
……みぞれの存在を完全にスルーされている。
「ふふん、雨も『水』だもんね」
みぞれは満足そうにパンをほおばり、**ジュースのボトルまで勝手に開けた**。
「待て! そろそろやりすぎだろ!」
「大丈夫だよ。だって……」
彼女は雨の中でくるりと回った。
「『水の中』なら、何をしても許されるんだから」
## 【実験3】「プールで宿題コピー」編
「カイト、これ見て!」
プールサイドで、みぞれが隣のクラスの優等生・藤崎の答案用紙を嬉しそうに掲げている。
「……まさか盗んだのか?」
「違うよ! 藤崎さんがプールで落としていったのを水中でコピーしただけ!」
みぞれの手には、濡れた答案用紙と、完璧に写したコピー用紙があった。
「水に濡らした紙って、インクが滲んでコピーできないだろ……」
「でも水中なら、精霊の力で『写せる』んだよ! すごいでしょ?」
(……マジかよ)
俺は思わず笑ってしまった。
「お前、天才かよ」
「でしょ? ……ねえ、もっとすごいことしてみない?」
みぞれの目がきらりと光る。
(……こいつ、絶対トラブル起こす)
## 【実験4】「噴水で告白ごっこ」編
「カイト、ちょっとこっち来て!」
夕暮れの公園で、みぞれが噴水の前に立っていた。
「今度は何だ?」
「実験の最終段階! 『水中なら嘘の告白もバレない』の検証!」
……は?
「おい、待――」
みぞれは俺の手を引っ張り、噴水の中へ引き込んだ**。
ザーッ!
水しぶきが上がる。みぞれの顔がすぐ目の前だ。
「……ねえ、カイト」
「……なんだよ」
みぞれは少し照れくさそうに笑った。
「私、実はカイトのこと……」
(……っ!?)
ドキドキする胸の音がうるさい。
「**……って、冗談!」
みぞれは突然笑い出し、噴水から飛び出した。
「ほらね? 水中で嘘ついても何ともないんだよ!」
「……バカじゃねえの」
俺は少し……いや、かなりムカついた。
## 【異変】「みぞれの身体が乾かない」
その夜、みぞれからメールが届いた。
**「カイト、私……なんか変だよ」
急いで彼女の家へ駆けつけると、みぞれは浴室でずっと水を浴びていた。
「……みぞれ?」
「あ、カイト……私、なんか水から出られないみたい」
彼女の肌からは、水滴が落ちず、まるで水と同化しているように見えた。
(……これはまずい)
俺はスマホで急いで検索する。
【伝説の続き】
《願いを叶えすぎた者は、やがて「水の精霊」そのものになる》
「……みぞれ、もう『実験』はやめよう」
「でも……もっと楽しいこと、したいよ」
みぞれの瞳が、水のように青く光った。