恋を自覚したのは(後日談・パトリック視点)
あの日、二人での観劇を勧めたのは単なるおせっかいなわけではない、とだけ言っておこう。
「婚約しましょう」
あれから泣き止んだエリザベスはハキハキとそうと口にした。
家柄も申し分ないし、何より王子が後押ししているということであっという間に婚約は結ばれた。
恒例となったテラスでのお茶会はそのまま続いている。王子はあれから気を使ってか参加しなくなったが、時々茶菓子をつまみに来る。
「すぐに婚約なんて、強引すぎましたでしょうか」
目の前のエリザベスがしょんぼりとしている。
「かわいい」
思わず口から溢れた。
エリザベスの肩がびくりと震えて目が合った。
目に見えて狼狽えている。
「だって私が無理矢理…」
遮って続ける。
「や、ちゃんと好きだと思っているし」
と答えると益々真っ赤になった。
ーー自分は好きだと口にするくせに、俺に言われるとは考えもしないのか
不器用すぎないか
と可愛くて笑ってしまう。
「好きだよ」
目を見つめていってみる。
あの日二人での観劇を勧めたのは、これ以上2人でいるところをみるのが、仲良くなっていくのをみるのが耐えられなさそうだったから。とはまだいわないでおくことにした。




