3.恋とお茶会
あれから週二回のお茶会が恒例となった。パトリックは「二人でお茶しなよ」と最初から頑なに参加を拒んだがなんとか毎回引き留め三人でお茶をしている。
パトリックが遅れる場合は仕方なく殿下と二人でお茶をしているが、会話の内容はもっぱらパトリックの事で私の恋の進捗を報告したりしている。
パトリックの自己肯定感の低さは相変わらずで「俺ばっかり話してごめんねっ」などと口にする。
学校一の美男美女を侍らせて何を言ってるんだと言いたくなったが、
気を取り直して
「最近流行りの歌劇がありますの!」
と口にした。
「知ってる!」パトリックが目をキラキラさせて言う。
「俺は興味ない」
皇子は素っ気なく答える。何を言ってるんだ皇子が来なければ、パトリックも来ないではないか。
「まあ!本当に素敵とお伺いしておりますのよ」
パトリックが口を開いた。
「…二人で行っておいでよ」
「こんなに仲良くなれたんだし、俺はもう用無しでしょう?」
ね?少し寂しそうにパトリックが呟くから、頭に血が昇って勢いよく立ち上がった。
「わっわたくしは!殿下を紹介してくださいなんて一言もお伝えしておりません!」
知れば知る程どんどん好きになった。
ーーこんなに素敵なのに、殿下もわたくしもこんなに信頼しているのに、信じてくださらないんだわ
堪えきれずに溢れた涙がボロボロと頬を伝って、テーブルクロスにシミを作る。
パトリックも立ち上がってオロオロとしている。皇子は「じゃあ行くわ〜」とどこかへ行ってしまった。
「…好きなんです」
「え」
チーフを差し出そうとした手が止まった。
「で、殿下もご存知でっ。仲良くなりたかったんですっ」
「…ごめんなさい」
泣きすぎて鼻が詰まって息が苦しい。
ーーもう、話してもらえないかも
俯いてギュッと目を瞑ると、
「…ごめんね」
見上げると困ったような顔をしたパトリックと目があった。
ーー嗚呼、フラれるんだわ。
またじわり、涙が膜を張る。
「勘違いしてごめん」
頬を伝う涙を拭いながらパトリックは続ける。
「二人がどんどん仲良くなるから、お邪魔かと思って」
「…まだ、間に合う?」
ーー何を言ってるんだ。最初からあなたしか眼中にないのに
頬に添えられた手をギュッと握った。