8話
「これで良いだろう」
「ありがと。学年首位は頼りになるじゃない」
ウィンク1つに、ニッと笑顔を見せるリリアちゃんだ。
そんな事をされれば思わず少しだけドキッとさせられる。
「別に大した事しちゃないさ」
「何よ、素直になってもいいじゃない」
「いや、大した事した訳じゃないから大した事したとは思っていないだけだな」
人の事言えないだろうと言いたかったが、それだと少し面倒な事になるだろう。
「アンタねぇ? 結界魔法使うだけでも結構大変だし、そこから特定の人間だけ侵入させないって物凄く難しい事だけど???」
リリアちゃんが少しムスッとしながら抗議染みた事を言う。
「そんな事言われても出来るモノは出来る訳だからな。リリアちゃんだって自分が扱える魔法が大した事と思わないんじゃないか?」
俺の問いかけに対しリリアちゃんは小考し、
「悔しいけど否定しきれないわね。けれど、私が凄い魔法を扱える事は事実と言いたいけど、私より魔法が扱えないウィザード達は見下しちゃうわね」
出来ない人間を見下すか、そういわれると俺はそんな考えは無いかもしれない。
「そんなものなんだ」
「ええ、私が主としているのはレンジャーだからね。魔法は正直おまけなところがあるけど、私にとっておまけすら出来ないウィザード達はどれだけ勉強をサボっているのかって思うわよ」
「そう言われてみたらそうかもしれないな」
「ねぇ、アンタってもしかしなくても他人と言うか人間に興味が無いのかしら?」
少しばかりリリアちゃんが呆れている様に見える。
「さぁ? 出来ない人間を気にしても仕方がないし、そんな事よりも練習や勉強をした方が有意義って思うだけさ」
「それは私も同じだと思う。けど、実行したり態度に表したりしないにしろ考える事位するんじゃなくって?」
「その考える事自体しないかな。逆にリリアちゃんはしょっちゅう考えているのか?」
「そうよ? それが普通と思うわ。私はアイドル活動もやっているのよ? この学校で必要なこと以外を何もやっていない。そんな人達が私より良い成績を出せないなんて生きているだけ無駄まで思うわ」
物凄い事を言っている様無きがするが、人間の本心はこれが普通なのだろうか?
「そっか。俺はこの学校で必要な事しかやってないからな。だからその辺りの事を考える事もしないんだろうな」
俺の言葉に対しやっぱり小考するリリアちゃん。
俺の考えに違和感でも覚えているのだろうか?
「アンタ、聖人か何かかしら? 内心でも他人を見下さないなんて中々無いわよ」
「ハハッ、そんな事は無いな。聖人だったらもっとすごい事しているんじゃないか? それこそ、世の為人の為身を犠牲にしてまで尽くす、みたいな。俺はそんな事やる趣味は無いさ」
しかし、神聖魔法の適性は人間の性格に起因するとも聞く。
勿論、血筋等の才能にも大きな影響を与えるのだけど。
神聖魔法が得意な俺はリリアちゃんが言う通り聖人なのか? まさかな。
神聖魔法が得意と思うみんなはただただ勉学に興味が薄いだけで本気を出せば俺よりも凄くなれるのだろう。
俺よりいい性格の人間の方が多いはずだ。彼、彼女達が本気をだせば俺なんて簡単に抜かれてしまう。
ならばもっと勉強しなければダメか。
「うおぉぉぉぉ! 漢デビッド! これしきの試練でへこたれねぇぜ!」
どうやらデビッドがまたやって来たみたいだ。
根性だけはあるな、相変わらず。
けど、脳味噌が筋肉で出来ているアイツが俺の張った結界に気付く事は無いだろう。
「ぐぎゃあああああ!!! 身体の血が逆流するっっっっ!?!?!?!?」
デビッドが部室の入り口に展開されている結界に触ったらしい。
しかし、血が逆流するってそれは神聖属性が体内に宿る暗黒属性に接触している証拠だが。
まさかアイツ、自覚が無い馬鹿なだけで心の奥底は結構根深い闇にでも染まっているのか? アイツに限ってそんな事は無いと思いたいが付き合いは浅い以上今この瞬間俺に与えられた結果を念頭に置いた方が良いだろう。
「ねぇ、カイル、アイツもう一度吹っ飛ばした方が良いかしら? けど、さっきよりも強くすると学校の壁壊しちゃうのよね」
「別に良いんじゃない? あの様子だとその内気絶するから」
結界の力でデビッドを気絶させるつもりは無かったが、彼の奥底に眠る暗黒属性がよっぽど弱くない限り確実に気絶する。血の逆流に対して叫ぶ程だからよっぽど弱い事は無い。最も強力な結界を張った訳じゃ無いから死ぬ事は無いから問題無いが。
「そう。貴方がそう言うなら信じるわ」
リリアちゃんがツインテールの片割れをそっと撫でると机の上に紙を広げ、今日の作業を始めた。
続いて俺も魔術の勉強を開始。
暫くの間デビッドの悲鳴で煩かったが、5分位経った所で煩い悲鳴は収まった。
恐らく気絶したのだろう。
気絶位俺の神聖魔法で回復させられるが起こしたら起こしたで面倒な事が起こりそうなのでデビッドには悪いが部活動が終わるまではこのまま気絶したままで居て貰おう。
帰る時には治してやるし、運が良ければ相談しに来た生徒にでも見つけられて助けて貰えるだろう。