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7話

「リリアちゃん、一応服着たら?」

「……そうね、下らない茶番をやっている暇はなさそうだからそうさせてもらうわ」


 茶番? って事はわざと見せていたのか? やっぱりリリアちゃんの方が変態なんじゃ?

 リリアちゃんが制服を着たところで、


「はぁ、はぁ、中々いい魔法だったぜ! 流石は学年2位のリリアちゃん! ますます惚れたぜ」


 部室の中にデビッドが入り込み、リリアちゃんに言う。


「そうですか、それは有難う御座います。ええ、お褒めの言葉非常にありがたいと思います。それで、貴方はどの様な悩み事をお持ちでやって来られたのですか?」


 リリアちゃんが感情のこもっていない声でデビッドに告げる。


「悩み事、このデビッド様に悩み事は無いぜ!」

「そうですか、それは非常に能天気なお方なのですね。悩み相談部に来訪し、悩み事が無いとおっしゃいますと、悩み事相談部の部員になりたいからここにいらっしゃったのですか?」

「おお、そうだぜ! リリアちゃん察しが良いな!」


 デビッドがキラリと歯を見せながらサムズアップをする。

 察しが良いも何も、ここに来る理由は悩み事があるか部員になりたいかの2択と思うし、前者が違うなら後者しかなくなると思うんだけど。


「この程度の事が分からない方がどうかと思いますが、私は純白な天使ですので貴方の様な能無しからすれば私を褒めて頂いたと判断し、素直に誉め言葉として受け取って差し上げます」

「そういう事だから宜しく頼むぜ!」


 デビッドはこの部活に入れたと思っている様だが、


「申し訳ありませんが、神聖なるこの部活に対し貴方の様な低能、脳味噌が筋肉だけで出来ているお方をお迎えさせる事は出来ません。また来世にお越し下さい」


 リリアちゃんの口から物凄く辛辣な言葉が吐かれる。


「そんな遠慮するなって! 俺が居ればみんなの悩み事なんて一発で解決してやるからさ!」


 リリアちゃんから辛辣な言葉を掛けられてもその話を無視していると言わんばかりに得意げな表情を浮かべるデビッドだ。


「どうしてもと仰いますなら、わたくし目に大聖女コレット様若しくはセザール王国第一王女とは言いませんが第三王女のセレス様を私にご紹介くださいませ。その上で一日程私が御自由にしていい権利を頂ければなお宜しいでしょう」


 リリアちゃんが懇切丁寧にデビッドへ説明する。

 大聖女コレットの名前だけは聞いた事がある。

 確か、ひとたび出現すれば一つの村に住む人間全て程度アンデッド化させ使役させる位造作でもない超強力なアンデッド、リッチ。モンスターランクはSであり討伐したければ冒険者ランクAの冒険者複数名で編成されたパーティ若しくはSランクの冒険者が必要となる位凶悪なモンスターである。

 で、それだけ凶悪なモンスターを簡単に浄化させるだけの強力な神聖魔法を扱えるのが大聖女コレットだったりする。

 聞いた話容姿も素晴らしく美しく、リリアちゃんも十分可愛いんだけどその上を行く美貌を持っているとの事だ。

 セザール国第三王女セレス様もまた同じく美しい御方である。

 俺みたいな平民が手に届く訳も無いから一々気にも留めていないのだが。

 しかし、リリアちゃんは何故女性であるにも拘らず女性の紹介を要請してるのだ?

 普通は男性の紹介を求めると思うのだが……。

 神聖魔法が不得手だから、神聖魔法が得意な人を紹介して貰ってそのコツを伝授されたいとか? けど、それじゃ王女様を紹介してもらう理由が……。

 セザール国には第二王子だっている訳で、別にブサイク王子様じゃなく容姿は端麗なんだけど。それとも、セレス様は魔術が得意とか? うーん、王族なら魔術位会得していても不思議じゃないしその線はあるか。

 リリアちゃんも勉強熱心なんだな。


「だ、大聖女コレット様だと!?」


 大聖女の名を聞いたデビッドが目を見開き硬直する。


「ええ、そうよ」

「お、俺に任せろ!」

「では結果を以てして再度わたくしの元にいらして下さいませ」

「い、いや、必ず紹介するぜ! だから……」


 デビッドが何を考えていたのか分からないが、あのデビッドが言葉を選んだ以上良い予感はしない。

 デビッドの考えを見透かしたかの様にリリアちゃんが、


「カイル、この脳味噌筋肉にプロテクションを」


 冷たい声で言い放った。俺はリリアちゃんに言われた通り、デビッドにプロテクションを掛ける。


「私、人間の言葉を理解出来ない猿は嫌いなの、ごめんなさいね」


 リリアちゃんは、デビッドに向け再びエアバーストを放ち、再度デビッドを派手に吹き飛ばす。


「ぐ、ぐおおおおおお! これが入部試験と言う奴か! 良いぜ! 受けてやる!」


 デビッドが風に飛ばされながら叫び声を上げている。


「来世ではせめて人間におなりなさい」


 リリアちゃんが、デビッドに向けロックバレットの魔法を放つ。

 リリアちゃんの手の平から魔法で産み出された数個の岩石が現れ、時速100km程の速度でデビッドに向け放たれた。

 普通の人間、セザール平原近郊に出現するゴブリン辺りの低レベルな魔物なら当たり所が悪ければ即死しても可笑しくない威力はある。

 だが、この学校で鍛えられている上に俺のプロテクションが掛けられているデビッドなら即死する事は無いし、リリアちゃんが込めた魔力量次第では当たっても痛いで済みそうだ。

 仮にリリアちゃんが強い魔力を込めた結果デビッドの骨が折れたとしてもアイツなら気合と根性で翌日には治せてしまうだろう。


「カイル、結界魔法は扱えるかしら?」

「出来なくは無いけど?」

「あのツンツン頭限定で侵入を阻止出来る結界は?」

「出来る」


 結界魔法も神聖魔法に属する魔法だ。

 一般的には魔物や魔族を寄せ付けない為の結界を張る魔法だが、術者が侵入させたくない人間を寄せ付けない為の結界を張る事も可能。

 魔力が無いにも等しいデビッドの侵入を阻止する結界を張る事は可能。

 ただ、気合と根性で突破される可能性が0では無いが、その時はリリアちゃんの魔法によってまたお帰り願う事になるか。


「ならお願いね」


 リリアちゃんに頼まれた俺は、部室の入り口にデビッドだけの侵入を阻止する為の結界を展開した。

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