4話「」
「天使なのに神聖魔法が苦手かー」
と当り障りのない事を言ったつもりだが、何故かリリアちゃんは表情を強張らせ威圧的なオーラを纏い始める。
「なんか言った?」
リリアちゃんがちょっと威圧的な声を出したかと思うと、
「いれれれれ、それはよそうふぁいらっれ」
リリアちゃんが俺のほっぺたをつねって来やがった。
結構痛い。
「ええ、どうせ私は神聖魔法の扱えない天使ですよ? 悪い? 別に神聖魔法が扱えなくても堕天使になれば良いだけですけどねー?」
こんな言われ方をする以上、神聖魔法が苦手な事を随分と気にしているのか?
「わあーったわーったから、ひんへいまほーなら俺がおひえられるから」
と言えば、
「ふん。女心が分かってないわね。まぁ良いわ私は天使だから許してあげようじゃない、感謝しなさい?」
リリアちゃんが、俺の頬を抓っていた手を緩める。
これもリリアちゃんの何かに触れたのかよ。
これ、もうどうすれば良いのかわかんねーやもう。
「全く。他の候補者はどうなんだろうね。例えば丁度俺の友達にファイターに関する科目は1位の成績を収めたけどナイトも斥候も攻撃魔法も神聖魔法もからっきしダメな奴が居るんだ」
俺は同じクラスに居る、友達となったデビッドの事を出してみたが。
「……」
何故かリリアちゃんが不機嫌オーラ全開になり俺をジトーッとした目で睨みつけて来た。
「リリアちゃん? どうしたの???」
「はぁぁぁ? あの女たらしの糞男??? 入学式早々多数の女の子に声を掛けまくって、このリリア様に対して俺の女は君しか居ないって頭可笑しい事言いやがったツンツン頭??? そんな安っぽい口説き文句なんか私のファンが沢山言ってくれるんですけどーーー? そんな事も知らずに私の目の前で他の女の子を口説いておいて平気で私の前で着身にしか居ないって言っちゃう脳味噌パープリン男の話はされるだけで不快なんですけどー。あ、カイル? あくまでファイター科目で1位を取っていたから偶々リリア様の目に留まっただけよ? あんな女たらしのクズ男一切合切興味無いからね?勘違いしないで頂戴?」
ものすごい早口で捲し立てられた。
確かにデビッドはものすごい勢いで女学生との接点を持とうとしていたが。
勿論全戦全敗で、デビッドは女の子達の間では女たらしのツンツン野郎と言われているが。
「そんな事言われても知らねぇよ」
「兎に角、あんな野郎が入部しようものならゼロ距離で弓矢を放っちゃうからね!?」
……。やっぱりゼロ距離射撃するタイプなんだ。
「その辺カオス学長が決める事だろうし俺に言われても何も出来ないよ」
「いいえ、一般入部で入って来る可能性があるわ」
「あの女たらしの脳筋が、悩み事解決するぜ! 何て言わないと思うが」
「女たらしを甘く見ないで頂戴。あいつ等は女を取る為ならやりたくない事でも平気でやるわ」
まるで過去経験した事があるような言い方だけど、アイドル業をやっている以上経験した事があるのかもしれない。
「だったら副部長権限で入部拒否すれば良いんじゃないの?」
俺の提案に対しリリアちゃんが押し黙り。
「そうよ、その手があったわ! 流石学年1位、頭の回り方が違うじゃない」
どうやら名案と思ってくれた様だ。
「あ、ああ、そうだな。それで、今日はどうするんだ? 俺は折角だから魔術の勉強をしていくけど」
「部長でしょ? 私に聞くんじゃなくて貴方が決めて頂戴」
「なら好きにしてくれ。帰りたいなら帰っても良いし」
「好きにして良いのね? 分かったわ」
リリアちゃんは手提げカバンの中から紙とペンを取り出すと何かを書き出した。
結局リリアちゃんも勉強するのかと思ったが、自分が好きにすれば良いと言った以上特に気にする事も無かった。
その日は陽が落ち切り、月が顔を出すまで部室で勉強をした。
流石に今日の今日で何かを相談に来る生徒は誰も居なかった。
正直なところ、このまま誰も来てくれない方が良いと思うのだが、リリアちゃんが割とやる気みたいなのでそうもいっていないだろう。
困ったな、人生経験豊富な繋がりでもあれば良いんだけど全く持って心当たりがない。
この辺りの事を両親に相談したくても、一々田舎迄帰るのも楽じゃないから現実的ではない。
まぁ、どうせ相談しに来るのは生徒だけだろう。俺と同じ年頃の人間が抱える悩みなんてきっと大した事が無いハズだ。
そうだ。部長が俺と知った事で何を相談するかと言われたら多分学業に関してだろう。
それなら問題無い、うん、きっと大丈夫だ。