3話「」
「なぁ、人に振り向いて欲しそうな事言っておきながら、どうして君の目の前にある制服を未だに着ていないんだい? 俺がこの部屋に入ってから5分は経っているのだが。ひょっとして君は俺に下着姿を見せたい訳でつまり人に変態と言いながら君自身が変態なのじゃないかい?」
俺が冷徹な事実を指摘した訳だが。
それに対し彼女は顔を真っ赤にして、
「うるさいうるさいうるさーい。このツンデレ天使リリアちゃんの下着姿をまじまじと見つめやがる変態が人間の言葉しゃべるなーーーー」
自称天使の女学生が支離滅裂な事を言う。
俺に対してぎゃーぎゃー喚き散らす癖に未だに服を着る気配を見せないのは極めて謎なんだけど、やっぱりこの娘物凄い変態なんじゃないか?
「んな事言われたら、ゴブリン語とかコボルト語でも喋れば良いのか? それは兎も角、ツンデレ天使リリアちゃんって何? 俺知らないんだけど」
「はぁぁぁ? セザールタウン屈指のアイドルツンデレ天使リリアちゃんを知らないワケ???? アンタ今日まで何やって生きて来たのよ? 人の下着姿をまじまじと見やがる癖に女の子に一切興味無い訳???」
そう言えばなんか聞いた事ある様な? 割と知名度のあるアイドルだけど今回の定期試験で総合2位の成績を取った学生が居たって。
「何って、俺は剣技の練習に魔術の練習に斥候としての練習、要はこの学校で習える事の練習と勉強をして来たんだけど」
俺の話を聞いてリリアちゃんが少しばかり思案をする。
「もしかしてアンタ……。勉学や鍛錬にしか興味がない、どんな可愛い女の子達が話し掛けても何の反応も無い、あまりにも女に興味が無いから男と付き合っていると噂が絶えない変人のカイル・レヴィンなの?」
「いや、名前は合っているけど、俺は別に男と付き合っている事も無ければ男に興味も無いし、他の男と同じく女性に興味自体あるぞ」
「はぁ、もう良いわ。男にしか興味が無い男に私の下着姿見られても意味が無いじゃない」
リリアちゃんが深いため息を吐き出しながら言う。
一体何に失望したんだこの娘は。
「俺の話聞いてる? 別に良いけどさ。それはそうと、リリアちゃんは何故この教室に居るんだ? ここは悩み事相談部の部屋だと思うんだけど」
俺の話を聞きながら、いい加減服を着だすリリアちゃんだ。
「それは私も聞きたいわよ。アンタの方こそこの部屋に堂々と入って来てさも当たり前の様に読書を始めたワケ?」
「そりゃー、俺はカオス学長からここの部長をやってくれと頼まれたからだからだけど」
ここで俺は1つの事に気が付く。
部活動なのだから部員が居るのは当たり前の事だ、それはつまり。
「私は副部長をやれって言われたわよ、ここで心を鍛えろだってさ」
「俺と同じなのか」
「そうね。部長が誰なのか気になっていたけど、学年1位の貴方なら仕方が無いわ」
さっきまでの勢いはどこへやら。リリアちゃんからはしおらしさが滲み出ている。
「その言い回しだと部長をやりたそうに聞こえるけど」
「その通り。出来る事ならこの私がこの部活を仕切って頂点を目指してやりたいと思ってるけど、学年1位になれない分際でそれはおこがましいと思うの」
よく分からないが、先程迄の対応とは打って変わり随分と謙虚に聞こえる、二重人格と疑いたくなる位には。
「いや、別に部長だからと言って成績1位じゃ無ければダメだってことは無いと思う。正直面倒だし部長をやりたそうだからリリアちゃんに部長をやって貰いたい位だけど」
まぁ、カオス学長に怒られるかもしれないから上手くやる必要はあるかな、俺は上辺だけ部長で実験はリリアちゃんが握っているみたいな。
「はぁぁぁ? 何言ってるの??? 学年2位の私がこの部活の部長だなんてみんなが納得出来る訳無いでしょ?」
なんかすっげー怒られたんだけど。
「学年2位自体凄いと思うしみんな納得すると思うけど」
「あのね、凡人はバカでアホで能無しなの。2位の凄さなんて理解も出来無いし1位以外は価値の無い物としか思わないワケ。そんな人間が部長なんてやった日にはどうなるかわかる? 秩序も何もあったものじゃないただただ存在するだけ無意味な部活にしかならないワケ」
一応、この学園には凡人に属さない貴族子女もいるんだが……。
それにしてもリリアちゃんは随分と卑屈な気がするのは気のせいか?
「そんなこったないと思うけどなー。まぁ良いやリリアちゃんが乗り気じゃないならカオス学長に言われた通り俺が部長をやるよ」
「期待してるわよ」
と、リリアちゃんがにこやかな笑顔を見せる。
思わず吸い込まれそうになってしまったのはそれがアイドルだからだろうか。
「しっかし、部活は良いけど部長と副部長だけ? 部員は居ないみたいだけど」
まぁ、いたらいたで面倒だからいっそのこと平部員0でも良いと思うけど。
「みたいね。けど、私達みたいにカオス学長からこの部に入れと言われた人が居ても不思議じゃないけど」
「それは有り得る。例えば学年3位の人とか」
「そうなるわね。後、有り得るとするなら1教科だけ高得点を取って他は全部ダメとかじゃない?」
「1つしか得意じゃないのは心が鍛えられてないからみたいな感じ?」
「そうそうそんな感じ。学年3位って誰だか覚えている?」
「いや、全然。誰がどんな成績を収めたとか一々覚えていない。確か、神聖魔法に関する科目で俺よりも良い点を取った人が居るから有り得るとしたらその人なんじゃない?」
斥候、レンジャーに関する科目はリリアちゃんの方が俺よりも上だったが。
「神聖魔法ねぇ」
リリアちゃんが1つ溜息をついて。
「俺もあまり得意じゃないんだよね。だからまぁ、1位取った人は教会関係者なのかな?」
「貴方、神聖魔法で2位じゃなかったかしら? それで得意じゃないってよく言えたもんね」
「そうか? 得意だったら2位と大きな差を付けた1位を取れると思うけど」
「そうね貴方の言う通り。数字を出せなかった私が悪いわよ」
それはつまり?
「ちなみに、何位だったんだ?」
「はぁ、デリカシー無い事言うわね。これが胸の話だったらグーの一発位お見舞いしている所だったわ」
相当悪い順位みたいだ。
で、リリアちゃんは胸の大きさを気にしている様子だけど、個人的にはこれはこれで悪くないっ! なんてことを言ったら多分グーの一発が飛んできそう。
プロテクション張って試してみるか???
と謎の好奇心にそそられるが、グーの一発で済む保証も無い、下手すれば魔法が飛んだりゼロ距離で弓矢による攻撃が飛んできそうな気がしたから大人しくやめておく事にしよう。