2話「ツンデレ天使☆リリアちゃん」
カオス学長が大雑把に教えてくれた部室の場所は結構な距離がある。
このセザール学園は3学年に別れた全校生徒1000人強と中々規模の大きい学園だから校舎も色々と広かったりする。
それぞれの学年は40人で1クラスとなっており、2年生までは物理戦闘、斥候に必要な技能、魔術の授業をバランス良く行う。
3年生になった所でそれぞれが得意な分野を専門的に専行しクラス分けが行われる。
その際、物理戦闘ならば皆を守る為の盾となるナイト、或いは力こそパワー、敵をなぎ倒す事を得意とするファイターに分かれる。斥候の場合はダンジョン内の罠を解除したり敵対組織の情報を探るスパイ活動を主とするか、弓矢による遠距離攻撃を得意とするレンジャーを目指すかに分かれ、魔術の場合は地水炎風と言った属性の元主に相手を攻撃する魔法か、治療や身体能力向上、物理魔法攻撃力及び防御力を向上させる魔法を主体とするかに分かれる。前者はウィザードとして、後者はプリーストとして活躍する事になる。
この学校を卒業した際、成績が優秀な生徒は国王軍に配属する事が出来る。
その名の通りセザール国の軍隊でありその待遇は中々によく、普通の人達が仕事をし得られる給料の2倍以上は貰えるらしい。
また、冒険者として冒険者ギルドに登録する卒業生も多いとの事だ。
この学校で鍛錬した生徒達は、少なくとも同じ年齢の新人冒険者達よりも遥かに強い為登録時点でそれ等の新人よりも高いランクから始める事が出来るのである。
命の危険を晒してしまうが、やはり普通に働いている同じ年齢の人達と比べ倍、3倍或いはもっと高いお金を稼ぐ事が可能である。
セザール学園の卒業生はその他学園に比べ国王軍への配属率が高くセザール国内の学園では名門に部類される。
そのお陰か貴族の子女、それだけでは無く聖女が神聖魔法の勉学や鍛錬の為に入学したり、はたまたアイドル活動をしている子女も居たりする。
何故アイドルが冒険者や国王軍を目指す学園に入学するのかと言われたら、どうやらアイドルとして箔を付けたいとかとの事だった。
俺が良く聞くのはウィザードアイドルとか軍人アイドルとかだけど稀にファイター学を専攻した脳筋☆アイドルなんて人も居たりする。
何処に需要があるのだろうか? と俺自身疑問を浮かべるのだけど意外と需要があるらしいから世の中分らないと思いはする。
そんな名門であるセザール学園の中で俺は1年生になって初めて行われる定期試験に於いて全ての教科上位、総合1位の成績を収めた。
だからわざわざ学長が直々にお褒めの言葉を掛けてくれた訳である。
さて、無事カオス学長から教えられた部屋に辿り着いた訳だが……。
『悩み事解決部! 人生の相談恋愛の相談ありとあらゆる相談に乗ります!』
部屋の中へと続く扉の前にはこのように書かれた張り紙がされていた。
しかも、コボルドの着ぐるみを身に纏い二頭身化されたカオス学長の絵のおまけつきで。
(何故瞳を輝かせているのか、この絵は)
俺は少し呆れて溜息を一つ。
ちょっと待てよ! 俺恋愛相談なんか出来ねぇよ!? そもそも恋人稲石作った事無いし!? そんな暇ないし!?!?!?!? そんな俺が何言えば良いんだ!?!?!?
いや、落ち着け落ち着け、こんなキモ……可愛い? 絵が描かれている謎の部室難敵ッと誰も来ない。そうだそうに違いない。俺はこの部屋の中で魔術の勉強なりしていれば良いんだ。何の問題も無い!
(あれ? 何で明かりがつているのだろうか)
部室に入る直前、俺はふとした疑問を抱くがどうせカオス学長が明かりを消し忘れたのだろうと判断し、気にせず部屋の中に入ったのだ。
しかしながら、その違和感をしっかり気にしろよ!!!! と後で後悔する事になるのだが。いや、人によっては悪く無いのかもしれない。
俺は部室に入り、中の様子を探る。
うん、至って普通の部屋だ。
椅子も机も配備されていて何故か魔術書が詰められている本棚まである。
まるで俺の行動パターンを読み透かしたかのように、どうせ暇だからこれで勉強しておけと言わんばかりにご丁寧な事である。
流石はカオス学長と言った所だ。
どうせ暇だから折角なので魔術の勉強をしよう、そう思った俺が本棚に近付こうとしたところで……。
「変態、死ね、消えろ!!!!」
突然女性の叫び声が聞こえた。
変態? 着ぐるみ姿のカオス学長でも居るのか? しかし、学長に対してその様な暴言を吐くとは何て強気な女性なのか。今の俺は学生服に身を纏い至ってフツーの男子学生だ。決して変態では無い。
だからと言って俺の近くに居るであろう変態に興味がある訳では無いので俺は女性の言葉を完全に無視し、炎魔法中級編と書かれた本を手に取り椅子に座り読書を始める。
「だから消えろって言ってるじゃない! 出て行け変態!!!!」
女性がもう一度叫ぶ。
まぁ、変態なんだから人の話を聞かないのも仕方が無いだろう。
俺は女性の叫びを無視し、読書に精を入れる。
暫く読書にふけっていると、何故だか女性のすすり泣きが聞えて来た。
「ねぇ、可愛い女の子が下着姿でいるんだけど? どうして君は着替え途中の可愛い女の子に視線を送りすらしないのかなー? 可愛い女の子を無視して目の前で読書に集中されると私悲しいんだけど」
どうもその変態とやらは俺の事を指しているみたいだ。
別に俺はその下着姿とやらを見ていない以上失礼な気もするが、
で、彼女は着替えの最中だったらしく下着姿だった。俺がこの部室に入ってから多分5分くらい経っているから幾ら何でも着替え終わっている。
間違い無い。
……どうせならしっかりとこの部室を観察し、その下着姿をこの目に焼き付けておくべきだった。チッ、勿体無い事をした。
まぁ良い、可愛い女の子を目に焼き付けるだけでも目の抱擁になる、悪い事じゃない。
俺は仕方が無く声の主の方へ振り向くと、
「きゃあああああ、変態!? 見るな近付くな消えろ失せろ!!!!」
…………。
未だ下着姿なままの女子生徒が両手で胸元を隠しながら喚き散らす。
因みに彼女が身に付けている下着の色は黒色だ。
ブロンドのツインテールヘアーに黒色の下着、中々悪くはない。
顔立ちも整っており美人と可愛いどっちも見られるお得な美しさ。
透き通った青色の瞳も中々魅力的だ。
何処かの貴族令嬢だろうか? 少しばかり高貴な空気を感じる事が出来る。
年齢は留年して居なければ16から18歳の間になる。
どこか少女っぽいあどけなさが残って居るから俺と同じ1年生、16歳だろうか。
身体つきは細身で中々に宜しい。
ただ、発育途中なのか胸元が可愛らしい。
それもまた良いだろうと思いながらふと学長室での感触を思い出す。
あれは大きかった。
…………。
カオス学長だけどな!!!!!!!!!!!!
さて、人を変態呼ばわりしてくれた女生徒の下着姿を無事拝む事が出来中々満足できたのは良い。
だが……。