1
暗い、ろうそくだけがついている部屋。
そこには、一人の女と一人の男がいた。
「決して、私が言ったということを知らちゃだめですよ、先帝に怒られますから。
大体、俺がここにいるのだって、、、。」
影の男がそういうと、
「わかっている。決して言わない!けれど、広めてもいいでしょう?
母上様がこの話が好きだということはさっき聞いた。
だったら私も好きなことはお前も理解しているはずなのに?
母上様に愛されたものはたくさんの人に知ってもらわないと。」
両親が大好きでよく似ていると呼ばれる有名な女皇帝様も、この時ばかりは興奮している。
「分かった、分かったから。この話は、、、」
この話というのは、盗賊のお姫様と先帝の運命の恋について。
運命といえるこの恋は、決してこの世界では嘘ではない話。
けれど、こっちの世界では嘘かもしれない話。
矢がある女を目掛けて飛んで行った。
その先には、もちろんこの女。通称、盗賊のお姫様。
何故そう呼ばれているって。それはね、当然盗賊の棟梁の娘だからだよ。
何故か捕まらないのか。その盗賊団。君も不思議に思うだろう。
その盗賊団の名は竜星団。どこにあるのかもわからない。
けれど、ただの盗賊ではないという。どうやらどこかのお偉い大臣がその盗賊の棟梁だとか。
しかし、その棟梁より有名なのは盗賊団の娘。すごく器量が良いと有名だ。
そのお偉い大臣とやらが、お貴族様の娘で美人なら物語に出てくるようなお姫様だろ。
それで、盗賊のお姫様って呼ばれてる。
このお姫様も盗賊団も、一筋縄ではいかない。だから、捕まえられずにいるんだ。
「いいえ、いくら大臣でも捕まえられるはずよ。その国ってこの私の国でしょ?
そんなこと許されないはずよ。先帝であるお父様の時代でもそんなこと起きえない。
父上様が悪を大っ嫌いなのはよく知っているのよ。」
こらこら、話は途中だろ。すぐに剣を手にするな。手を出すのは母親似。
それに、このお姫様はとっても父親に似て正義感が強いんだから。
二つが合わさったんじゃ、困るなんてもんじゃない。
もちろん、君の言う通り、父親である皇様は悪の存在が大っ嫌いで、なにか罪を犯してしまうと皇国にいれなくなる。悪の存在は隣の属国に送られて監視生活になるのがお決まりのパターンだろ。
「そうね、でもおかしいわよ。父上様の隣にはいつも母上様だけ。
盗賊のお姫様と先帝の運命の恋って、それなら母上様が盗賊のお姫さまってことになるわよ?」
その通り!今の国母は、盗賊のお姫様。おっと、そんな怖い顔しないでくれよ。何も悪い話をするわけじゃない。って、呆れた顔し始めているけど、、、。面白い。次から次へと顔が変わるんだな。
「触らないで。早く話してよ。」
今は、頭にハテナがたくさん浮かんでる顔。って、そんな誘うような顔しても何もあげないよ。
分かった。分かったから。話はするから泣かないでくれ。
「わかったわよ。この話が本当ならありがとう。私の知らない両親はまだいるのね!
でも、理解できないわよ。もし、それが本当なら母上様は、さっきも話をしてたじゃない。
属国に行くことになるわ。なんで、そうはならなかったのよ。」
だって、お前の言う父上様は竜星団が大好きだったからさ。捕まえなかったんだよ。
なぜなら、盗賊団といっても義賊団。善のために悪を滅ぼす。それをモットーにしているのさ。
「皇様。なにか、ありましたか?」
どうやら、声が聞こえてしまったようです。皇様。衛兵が声をかけてきましたよ。
ということで、今回はここまでだ。終わり、終わり。そろそろ寝ないとね。
良い子は寝ないと成長しないからね。困っちゃうよ。
「てことは、母上様は寝なかったってこと?よく言うわよね、お前。母上様は悪い子だって。
いやよ。寝ないわよ。母上様に言いつけてやるんだから。」
だからこそ終わりにするんだよ。どうするんだよ、母親に言うって。
説明下手でウソの付けないお前のことだ。
言ってもせいぜい全部ばれてこの話をするのを止められるか、遅くまで起きて影である俺を引き留めたお前を叱るだけだ。
だから、おやすみ「僕のお姫様」。
「ええ、おやすみなさい。私のさいあい。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
続きはまた後日。