14話:お食事会(1)
ぐっすり眠った次の日。
俺はのんびり気味とも言える10時手前くらいに目を覚まし、友梨お手製のモーニングを済ませる。
「いやぁー美味すぎて泣きそう」
「はいはい」
大げさに言う俺と、棒読みで返してくる友梨さん。結婚3年目のような会話だが、まるで違和感がない。もしや私達は前世で意気投合していた仲ではないだろうか?
などと言っているわけにもいかず。
実は午後からりゅう君と面会する約束がある。
当初の予定だと、ギルドの応接間で顔を合わせをする予定なんだけど、俺は場所を変えた。
「紅里の家でパーティー? 本気で言ってるの? 煌星」
そう。彼らは腹を空かせているはずだ。
人間、誰しもお腹の空腹には勝てまい。
そこで、我がシステムを利用し、素晴らしいおもてなしというのを見せてやろうというわけだ。
「まぁ? なんの為のカネ持ちかっていうのを──見せてやりますよ」
ふふん、コインも1.5倍に増えたし?
現金も? まだオークションは始まってないけど、ポーションの前入金で既に億単位のカネがある。
刮目せよ!! 本入金前の5億の数字を!!
〜一人芝居終了〜
「煌星? 広場の人たちはかなり人間性に難があるんだから、気をつけてね? 鈴木さんも着いていくようだけど、集団で何かしてくるかもしれないし」
今ではすっかり鈴木さんが前の友梨さんポジになってしまっている。友梨さんはというと、所謂リモートワークが主らしい。
俺はてっきり家で家事をしている俺専用の彼女(笑)と思っていたんだが、彼女はしっかり家でも働いているんだと。
⋯⋯偉いわ。
「午後からだけど、ちょっと色々準備があるから⋯⋯早めに行くね!」
「もう出るの? 早いね」
「下準備とか、色々?」
まぁ、最悪システム様々に援助してもらうしかない。とりあえずはストアに何があるか確認したいから、1人になる時間確保だ。
「鈴木さんに伝えておくね」
「ありがと!」
◆◇
それから一時間弱。
「ふぅ〜中々いいんじゃないか?」
額の汗を拭い、俺は紅里専用の家を改造し終えた。間取りは大したことないが、ワンルームのクソ広いバージョンだ。所謂ビッグワンルームってヤツで、大体20畳くらい。
とりあえず人数分の椅子と、箸なんかは用意出来てる⋯⋯おっけ。掃除も良し。
入ってすぐには、高級家具屋さんの真っ黒テーブルとイス達。カーテンやその他の装飾品はそのまま。今回のメインは、家具ではなく──。
「えー⋯⋯何これ?」
ストアで食糧について調べたら、面白いことが分かった。
──
アイテム:オーラックの煮込みうどん
評価B
レビュー(106)
必要コイン:1万2000
★ベストコメント
産まれてからこんなに美味しい煮込みうどんは食べたことがありません!!
オーラックはかなりマズイと言われていた食材ですが、料理人の腕が良くて満足。
1度食べてみてもいいんじゃないんでしょうか?
──
ーー美味そうだろ? 人数も多いし、煮込みうどんだったら普段飯をあまり食べていなくっても、ある程度は行けるだろ⋯⋯という俺の自己判断だ。
そんで面白いのは、ストアはまじで生活必需品から武器、アイテム、マジで何でも売っている⋯⋯※※ゾンみたいや。
「とりあえず⋯⋯後10人前以上は頼む必要があるな」
今回ご招待したのは家族全員。
結局りゅうだけ食べても、子供同士の喧嘩が起きそうだと判断したからだ。
「これなら喧嘩もせずに、メシを食えるだろう!」
◇◆
と、思っていたら。
「とりあえずお風呂に入りましょう」
「待ってくださいっす! 冒険者様にご挨拶する前に、しっかりとお礼の方させてください!」
このやり取りを既に5分ほどしている。
誰も部屋へと入ることなく、りゅう君は玄関で土下座を決め込む。どうすればいいんだろうか。
「全員分の食糧を俺達のような人間にくださって感謝のしようがありませんでした!」
おにぎりでそんな嬉しがるかね?
確かに、りゅう君たちの体を見ると、確かに⋯⋯肌が若干綺麗な気がするようなしないような?
「おにぎりでそこまでされてしまったら、私──かなり困ってしまうのだけど」
少しりゅう君たちに背を向けて、ちょっと時間稼ぎ。
そこまで言うならおむすびを見てみようじゃないの。急いで買ったんおにぎりでも、そこまで大それたもの──
──
アイテム:おにぎり(※球産)
評価A
レビュー(164501)
★ベストコメント
おにぎりは革命的な携帯食だと思います!様々な人種、次元、生物が喜んで食べる素晴らしい一品! いつも品薄で困っていたのですが、やっと私も一つ購入することができました!
食べた感想はもはや言わなくてもわかるでしょう!
『絶品』であります!
絶対に買えるときに買うのが大吉です!
アイテム効果
・肌質改善
・疲労改善
※あなたは現在VIP5です
※特典の一つである優先購入権が与えられますので、購入が可能です
──
やべ。想像以上に良い物を与えていたようだ。
俺の負けだ。りゅう君よ。
「礼はいいわ。とりあえずその前に⋯⋯」
「は、はいっす!」
顔を上げるりゅう君を見下ろし、俺は言った。
「一旦お風呂入りましょうか」
申し訳ない──臭うんだ。
ひとまず鈴木さんに風呂についての説明をして、最速で入ってもらうことにした。
全員、信じられないといった様子で謎に噴き出しくる暖かい水に感動していたぞ。




