10話三木の荒野〈2〉
やはりオドは普通じゃない。
俺はそう頭に浮かべながら先を進んでいた。
「完全に予想外だわ」
確かにオドは魔力と同じ感じくらいかと思ってたのに、やっぱりあの世界の技──どう考えても普通じゃないわ。
⋯⋯今身を持って思い知らされたわ。
そう呟く俺の前には、インベントリの画面でウルフ関連の素材と魔石が100以上あるのを見た俺の感想だ。
いくら俺があの世界の技を覚えたった言っても、こりゃ凄すぎるやろ。D級でこの攻撃力、まだまだ余裕あるぞ?こりゃ。
「自分の強さを客観視したいんだけど、等級基準を間違えたか?」
命が掛かってる世界で自分の強さがわからないなんて地獄すぎる。なんとかして自分の立ち位置が知りたい。
現時点で分かったのは、とりあえずあのレンタル訓練で動体視力の異常発達は理解できた。
⋯⋯って、あれで2%なのかよ。
さっきの流れを思い出して思わず笑いを噴き出す。
100%になったら──一体全体、どうなっちまうんだよ。
「だけど、一旦レンタルは保留かな」
とりあえず消費するコインが異様だ。
リターンも多いが、今はそれよりも、色々投資できる所に投資したいのが本音だ。
「っと⋯⋯一旦確認できたし、ここで帰ろうと思ったけど、踏破しちゃおうかなー」
確か異世界のシステム的に、初めてのみに限定はされるが⋯⋯踏破すれば初踏破報酬がもらえるはずだ。
「書類は今手にあるけど、その場で内容はわざわざ聞かなかったからボス戦前に確認しよっと。そしたら──報酬だけ貰って、さっさと帰るか〜」
目に流したオドの操作で、ダンジョンの構造は手に取るようにわかる。
多分探知系の冒険者をメインに生業としてやっている人は号泣案件だろう。
力も、速さも、身体能力すらも上げてしまうこの異界の力が邪魔すぎる。
ま、俺はパーティーなんて組まないから知らないんだけど。
「あとはこの白炎も使わないようにしないと」
二人が同じ技を使えちゃうのは、やっぱりまずいよなぁーとまぁ休憩が終わったタイミングで俺は、インベントリに荷物を突っ込んだVIPスタイルで奥へ直行。
途中様々なモンスターが現れたが、白炎を控える為に、初期スキルである極真空手を使う為に── ガンドレットを装着してウルフを対処する。
異様な視力の発達は白炎とは違うものなのでそのまま続行。
と次に即起きた問題は、この視の力のせいで、ウルフがただのチワワにしか見えなくなってしまっているという事だ。
「遅いって!」
そう。まるで犬と遊ぶ飼い主だ。
次の行動が読めて、それに反応する身体能力があるせいで、ただのダンスをしているみたいになってしまうのだ。
通常の時間の流れで追うウルフは、至って本気。俺目掛けて何度も突進をしてみたりフェイント混じりに背後に回ろうと企む。
しかし回ろうとすれば既にギラッと待っていたかのように鋭い瞳孔がウルフの前にやってくる。
それが数分。ウルフの体力は限界に近付き、その場でふらふら。見ていた俺は可哀想になったが、アイテム化する為にはやるしかないよなと拳を握って一発。
『──ギャンッ』
「これじゃどっちが魔物か分かんねぇよな」
⋯⋯こんな感じでダンジョンの奥へと進んだ。
普通に歩けばかなり大規模なダンジョンだが、枯れ木を伝って行く俺の速度は通常の3倍以上のスピードで荒野を駆け抜けた。
おかげでイーグルエリアもすぐに通り抜けて、もう最後のエリアだ。
「⋯⋯ん、あれか」
高速で動く荒野の最も奥に、黒い建物がそびえ立っていた。よく目を凝らしてみると、まるで中世の城だ。
到着して周りの異変を探すが、特に感じない。
「となると、やっぱりここがダンジョンボスがいる場所か」
俺はポケットから1枚の紙を取り出して確認する。
内容はこのダンジョンの基本情報と対処法が書かれている紙で、ギルドで公式的に売っている情報だ。
「名前はシャドウハウンドか、影の狼とも言われている⋯⋯と」
対象ランクD+のモンスターであるシャドウハウンドは光に弱い。倒し方は光で実体を出させて頭部を斬るか破裂させるか。
⋯⋯まぁ頭部をやっちゃえばいいんだな。
てなればかなり楽勝だ。
知らなかったら結構地獄だよな。
先人達に感謝だな。
書類をしまい、ガントレットをしっかり装着し直してしっかりと準備を整え、暗い城へと入っていく。
「じゃ、D+のモンスターはどれほどか見せてもらおうか」
俺はガントレットのみでダンジョンボスへと挑むという、通常ではあり得ない装備で最後の扉を開けて真っ暗な部屋へと入っていくのだった。




