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20話:ユニークダンジョン?

「着いた」


 ギルドにやってきた目的はただ一つ。


 "ギルドで販売されている金の相場を知るためにやってきた!"


 はい、そこの「馬鹿だなーお前」と思っている人の顔をしているあなた!

 

 馬鹿にしてもらっては困る。 

 目立つつもりはない。


 ⋯⋯じゃあどうするかって?


 決まっているじゃないか。三神さんにぷち相談しに来たというわけ。


 たまたま手に入れたんだということをそれとなく伝えることで⋯⋯俺はちょこっと売るということを実現させるのです!


「我ながら良い案だ」


 とにかく、今日の素材を含めて色々売却していかないとな!


 そう意気込んで俺はギルドの中へと突入。

 中に入ると、前と同じ時間ではなく人が多い時間帯に来てしまったので、かなり賑やかだ。


 「結構並んでるな」


 それはもうかなりの長蛇の列で、まともに並んでいたら、数時間は掛かる勢いだな。

 どうしようかなと悩んでいると、遠くから何か聞こえてくる。


「黄河さーん!」

「ん?」


 声の主を探していると、端っこの方で手を振る三神さんの姿を発見した。これはラッキー。

 俺は三神さんの元へと向かう。


「お疲れ様です」

「お疲れ様です、お久し振りですね!」


 そうか、もう1ヶ月以上も前の事だもんな。


「本当ですよね、三神さんはお変わりないですか?」

「この通り、ピンピンですよ!」


 そう言ってきめ細かそうなプルプル二の腕を見せてくる。可愛らしい女性がこういう事をするとすごい空気が和むな。


 無意識に鼻の下を伸ばしていると、三神さんが不思議そうに話題を変えてきた。


「そういえば黄河さん、この一ヶ月間は何をしていたんですか?」


 げっ。なんて言おう。

 家でゲーム三昧して呑気にしていました〜!

 ⋯⋯なんて言えるわけがない。

 しかも、俺の個人番号なんかの情報も知っているから下手に大学のうんぬんかんぬんは通じない。


 まずい、非常にまずいぞこれは。


「あはは、ちょっと実家に帰っていまして」

「え? でも、黄河さん⋯⋯特殊な家庭パターンでは?」


 あ、俺は馬鹿か!

 経歴もある程度バレているんだった!


「あ、ご存知だったんですね! そうなんですよ、実は施設時代にいた知り合いの一人(オイゲン)と仲良く電話しながら(ゲームのレベリング)冒険者についての話をしていたんですよね! 色々あってからでは遅いと思ったらしくて」


 刮目せよ! これが接客技術で得たトーク術なのだ!


「あ、なるほど! そうだったんですね! 確かに冒険者についての知識は必要ですもんね。 その知り合いに感謝ですね、現場での知識は結構後になればなるほど活きますから」


 あー、なんか申し訳ない気分なんだけど。

 ごめんなさい三神さん。


「あ、そうでした、黄河さんこのまま私が対応しますよ⋯⋯恐らく待ち時間とんでもないので」

「え? いいんですか?」


 それはありがたい!


 俺は多摩動物公園ダンジョンで得たドロップ品と依頼達成の提出物と書類を渡した。


「あ、キラーラビットの角をやったんですね」

「ええ、キラーラビットは良かったんですけど、あの墓場は何とかして欲しかったですよ」


 そう言うと三神さんの反応が微妙な表情をしながらこちらを見ている。

 何かおかしなことを言っただろうか?


「え、どうかしましたか?」

「多摩動物公園ダンジョンに行ったんですよね?」

「ええそうですけど」

「オカシイな⋯⋯多摩動物公園には墓場なんて"無いはずですが"」


 ⋯⋯?? ん、へっ?


「ど、どういうことですか?」

「多摩動物公園ダンジョンの推奨レベルは2から3です。初心者ならば必ず行っておいた方が良いダンジョンで合っています」


 あのベテラン間違ってなかったんだな。

 てなると、あの墓場は一体⋯⋯?


「ほ、ほんとなんです!」

「ちょっと待ってくださいね、担当に確認しますね」


 三神さんが慌てて受話器で誰かに問い合わせている。

 時折顔を険しくさせ、信じられないという表情をみせてから受話器を置いた。


「ど、どうでした?」

「いえ⋯⋯一先ず黄河さんが行った情報があったので問題自体はありませんでした。しかし、問題はその墓場の方ですね」


 それから三神さんの話を聞いた。

 どうやら三神さんの話によると、多摩動物公園ダンジョンは、俺の予想通り動物と仲良くうふふ♡しながらモンスターを倒していくという夢のような場所だったのだ。

 

 では、俺が見たあの墓場と骨だらけのモンスター達は──一体?


「黄河さん、その⋯⋯黄河さんが見たという風景や特徴などを教えて頂けると有り難いのですが」

「は、はい!」


 すぐに説明した。

 

・墓場の中は同じような絵面が続いていて、骨だらけの動物達がウロウロしていたこと。

・キラーラビットが一部墓場の場所で湧いた事。

・そして謎のライオンと一戦交えて勝利したこと。


 どの話も三神さんは興味深そうに聞いていた。


「その墓場では毒やその他耐性などは分からなかったですか?」


 毒? 耐性? やべ。そんな事初心者にはムズすぎる問題なんだけど。


「ご、ごめんなさい。自分がなんともないんで、そこまでは」

「失礼しました。初心者ダンジョン以外ですと、炎のダンジョン等に存在する──特定属性の耐性が必要なダンジョンが存在するので、もし今後黄河さんと似たような状況があった場合、次の冒険者が助かる確率が上がるので、今後似たような⋯⋯まぁほとんどないとは思うのですが、その辺も調べていただけるとこちらとしたは凄く助かります」


 確かに。確認しよっと。


「ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ要らない情報を」

「そんな事はありません。この情報はかなり貴重ですよ?もしかしたらユニークダンジョンの可能性があります」

「ユニークダンジョン? ですか?」


 ━━ユニークダンジョン。

 通常ダンジョンとは違い、特殊な条件が付いているダンジョンの事。

 ボスを含め、様々なドロップが貴重な物だったり、はたまた特殊な職業やスキルを得るためのアイテムが落ちていたりと⋯⋯それは見つけた奴は幸運としか言いようがないモノもあるそうだ。


「あれが⋯⋯ユニークダンジョンですか?」

「はい、可能性がかなり高いはずです。何か特別な事があったりしませんでしたか?」

「ん〜」


 俺は少し考えるも、何もそれらしい出来事を思い出せない。

 変なライオンと戦って、丘の上で飯を食ったくらいの記憶しかないもんな。


「ない、と思いますが、身に覚えがないだけで何かがあるのかもしれません」

「そうですか、念の為上に報告させていただきますが問題ありませんか?」


 まぁ業務だもんなと思い、俺は頷く。


「ありがとうございます。もし今後も何かあった場合は、直接来てもらう必要があるのでよろしくお願いします」

「了解です!」

「黄河さんみたいな人が増えればいいのに」

「どうかしたんですか?」


 聞くと、こういう類の話をすると十中八九揉めるんだと。要は権利の話や見つけたんだから金をよこせなどの横暴が起きるそうだ。⋯⋯聞いて呆れる。


「それは受付の方も毎日大変ですね」

「そんなこと言ってもらえて幸せです」

「今度何か差し入れします」

「⋯⋯黄河さん、指名とかは考えていませんか?」

「指名ですか?」

「はい、ギルド関連のアプリの利用が制限は入るのですが、指名していただくと私が完全サポート体制出来る制度です」

「なるほど、制限というのは?」

「アプリで済ましてしまうとサポートの意味がなくなってしまうので、ギルドに来てもらっての報告や必要に応じて来てもらう形が増えてしまうという話です」


 結構面倒くさい形になりそうだな。

 だけど完全サポートも有り難い話だ。

 

 ⋯⋯迷う。どうしたものか。

 そんな俺の表情を見透かした三神さんは、続けて口を開く。


「後は順番を待っていただく必要やギルド内でのスムーズさは段違いに変わると思います」


 あー、それならいるかも知れない。

 俺なんてまだまだ新米だし、情報や力量もまだまだ足りないし。


「ちょっと考える時間を貰ってもいいですか?」

「勿論ですよ!」


その後も話を続けていくと、査定も終わったそうで。


「今回の報酬と売却していただいたのと合わせると」


 三神さんが電卓をこちらに向けてくる。

 その金額なんと『10万2000円』。


「な、何か間違えたのでは?」

「そうなんですよ。私も不思議なんですが、報酬は二万円前後なので、後の値段はキラーラビットの極小魔石だったのですが⋯⋯確かに解体スタッフもおかしな事を言っていたんですよね」

「なんと仰っていたのですか?」

「そのまま言いますと、

「確かに見た目は極小魔石だった。しかし、一つ問題がある。

 それは⋯⋯この極小魔石の貯蓄量が桁違いだ。このレベルなら小魔石の中クラス程はあるはずだ」なんて仰っていましたから、私も驚きでした」


 やっぱりか。

 あのキラーラビット⋯⋯ドロップ率が明らかに悪かった。何度倒しても全然落とさないからこっちも途中焦りっぱなしだったし。


「とにかく了解しました。査定ありがとうございます!」


 そう言って踵を返そうとした俺だったが、途中で肝心なことを思い出して受付へと戻る。


「すみません、一つ聞きたいことがあります!」


 前のめりになって俺は三神さんに重要な相談をするのだった。

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