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「その銀の腕輪は本当に呪いがかかっているようだな」


少しだけ落ち着いたのか、ライオネルがデュークの前に座った。

ソフィーも寄り添うように隣に座る。

メアリー達は慌てて冷めてしまったお茶を淹れなおすために動き始めた。

凄いものを見たと言うのを無言でジェシカと目で合図をしながらお茶の準備を進めて行った。



「だからそう言っている。気付いたら腕にはまっていて魔法が使えなくなった。部下にもこの腕輪を付けさせてみようとしたが勝手にすり落ち誰もその腕輪を付けることができなかった。間違いなく呪いの腕輪だ」


忌々しそうに腕輪を見つめているデュークにお茶を出すのは恐ろしかったが、これも仕事だとメアリーは勇気を振り絞って気配を消しながらお茶をお盆に載せて近づいた。


6年前に見かけた時と全く変わらないデュークに恐怖を感じながらメアリーはゆっくりとカップをテーブルに置いた。


「失礼いたします」


気配を消しながらもゆっくりと下がろうとすると、デュークがメアリーを見つめた。

アイスブルーの瞳と目が合ってメアリーは恐怖で硬直する。


「6年前に会った侍女か」


冷たい瞳で見つめられてメアリーは震えそうになりながら頭を下げた。


「は、はい。その節は道を教えていただきありがとうございました」


出来ればこのまま一生思い出してほしくなかったと思っていると、デュークはメアリーをじっと見つめた。


(こ、怖い。何か粗相があったかしら)


頭を下げているメアリーに、デュークは机の上に置いていた銀の腕輪を差し出した。


「これを付けてみろ」


「え?」


デュークの顔と目の前に差し出された銀の腕輪を交互に見て、メアリーは首がもげるほど左右に振った。


「いやいや、無理です」


王子に対して失礼だとは思ったが、呪われた腕輪など触るのも嫌だと拒否をするメアリーにデュークは腕輪を差し出してくる。


「試しにつけて見ろと言っている」


「ひぃぃ、無理です」


(デューク様の睨みつけてくるような目も恐ろしいし、呪いの腕輪も恐ろしい!)


後退りをするメアリーの腕をデュークが掴むのを見てソフィーは困ったように声をかけた。


「あ、あの。どうしたの?どうして急にメアリーにその腕輪を?」


「少し考えがある」


無理やりメアリーの腕を握って腕輪を付けさせようとしているデュークが答えた。

困惑してソフィーは隣に座るライオネルを見つめるが彼も首を横に振った。

呪いの腕輪を無理やり付けさせられようとして必死に抵抗していたが、左腕に冷たい感触がしてメアリーは目を見開いた。


自分の左腕に銀の腕輪が見事にはまっているのを見て悲鳴を上げる。


「ひぃぃぃぃ。い、いつの間に……」


デュークが付けたとは思えず腕を上げて驚いているメアリーに、ソフィーとライオネルが目を見開いていた。


「銀の腕輪が勝手に腕に付いたのを見た!」


「吸いつくようにフワッと浮いてメアリーの腕にはまったわ」


「嘘ですよね!」


そんなことがある訳がないと、泣きそうになりながら壁際に立っているジェシカを見つめると彼女も何度も頷いた。


「確かに勝手に腕輪が浮いて、メアリーの腕に付いたわ」


「そんなぁ。私も呪われたという事ですか?」


デュークに腕を掴まれたまま泣きたくなる。

そしてふと思いつく。


「私は魔法なんて使えないから、呪いの腕輪がはまっても支障がないのではないですかね?」


美しすぎるデュークに聞くのは恐ろしいので、目を丸くしているソフィーとライオネルに視線を向けると、二人仲良く首を傾げた。


「どうなのだろうか?兄上わかるか?」


ライオネルが聞くと、デュークは軽く肩をすくめる。


「さぁ、どうだろうか?」


デュークが手を離したのでメアリーは軽く左腕を振ってみた。

先ほどのキャロルのように勝手に腕輪が落ちないかと期待をしたが、何度振っても落ちない。無理やり引き抜こうとするがどうやっても外れない。


キャロルは何もしていないのにスルリと抜けたのに自分はどうやっても外れないところを見るとやはり呪いの腕輪なのかもしれないと絶望的な気分になる。


「でも、どうしてメアリーには勝手に腕輪が付いたのかしら」


信じられないと言う顔をしながらソフィーが言うと、デュークは口を噤んだ。

それを見てライオネルは眉をひそめた。


「メアリーに何か思う所があって腕輪を付けろと勧めたのだろう?」


「まぁな」


デュークはそう言うと、それ以上話さずに机の上に置かれていた紅茶に手をかざした。

手のひらが薄っすらと青く光り空気が冷たくなる。

一瞬後には湯気を立てていた紅茶が凍っているのを見てメアリーは驚いて後ずさりをした。


(魔法なんて初めて見たけれど、凄い)


空気が一瞬冷たくなった後には紅茶だけが凍っているのだ。


「魔法が使えるようになった」


満足そうに言うと、デュークはメアリーを見つめた。

アイスブルーの鋭い瞳と目が合ってメアリーは後退る。


「体調に変化は?」


静かに聞かれてメアリーは首を振った。


「特にありません」


むしろ、キャロルの姿を見ている時の方が体調は悪かったぐらいだ。

ゆっくりと左手にはまっている腕輪を見る。

細い銀の腕輪は細かい模様がしてあり、所々に赤い小さな石が嵌っていてとても綺麗だ。

ブカブカとしているが、外そうと思っても不思議なことに手から抜けることは無い。


「適正がある女性がつければ魔法が使えるようになるとは思っていた。俺の腕輪は青い石が嵌っている。男女で分けているのだろう」


デュークも左手を掲げてメアリーに見せてきた。

確かに彼の腕輪とそっくりだが嵌っている石の色が違う。

なぜ自分に適正があるのかはさっぱり分からないが、取れない物は仕方ない。

メアリーが頷いたのを見て、ソフィーが首を傾げている。


「適正って何?」


「さぁな」


決して理由を言おうとしないデュークにメアリーとソフィーは目を合わせて首を傾げた。


「メアリーの体に異変が無いのなら付けていてくれるとありがたい。魔法が使えるようになったから明日には領地に帰る」


機嫌よく言うデュークにライオネルは納得していないようだが頷いてメアリーに視線を向ける。


「そうだな。メアリーには申し訳ないがしばらく腕輪を付けていてくれ。引き続き調査は続けるから。早く腕輪が外れるといいね」


ライオネルに続いてデュークも頷いた。


「そうだな。魔法が使えるようになっただけでも良かったと思おう」


上機嫌なデュークを見ながらメアリーは頷く。


(外したくても外れないのよ!)


文句を言いたくなるが、相手は王族だ。

ぐっとこらえて頭を下げた。


「はい」


キャロルにこの腕輪を見られたら厄介だと思いメアリーはそっと侍女服の袖を伸ばして腕輪を隠した。


「もし、何か異変があれば知らせろ。体調も含めて」


睨まれるようにデュークに言われてメアリーは恐怖で震えそうになりながら頷いた。


「わかりました」


「あとこれは他言無用だ」


デュークは控えていたジェシカに視線を向けた。


「わかりました」


ジェシカもデュークに睨まれながら頷いた。





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