その後
朝目覚めるとすぐそばに整ったデュークの顔がすぐ近くにありメアリーは悲鳴を上げそうになった。
(び、ビックリした。何度見ても寝起きで一番のデューク様の顔は心臓に悪いわ)
美しすぎて自分が傍にいるのが申し訳なくなってくる。
なぜこんな美しい人が自分を愛してくれるのだろうかと疑問に思いつつそっとベッドを抜け出そうとしたが、力強く腕を掴まれた。
「ひぃぃ」
突然掴まれ悲鳴を上げるメアリーにデュークは横になりながら面白そうに微笑んでいる。
とても寝起きとは思えない完璧な美しい顔に思わず見とれてしまうが慌てて顔を振ってベッドから飛び降りた。
デュークも諦めたようにメアリーから手を離して軽く伸びをしながら起き上がる。
先日行われた結婚式の晩から共に寝ているが、何日経ってもデュークと共にベッドに入るのは慣れない。
ドキドキしながら振り返ると、寝起きのデュークはかなり色っぽい。
上半身裸なために目のやり場に困りながらもメアリーは頭を下げた。
「おはようございます」
「おはよう。今日も休みなのにもう起きるのか?」
銀の髪の毛を横に流しながら言うデュークから目を逸らしてメアリーは頷いた。
「お昼近いですよ!」
顔を真っ赤にして言うメアリーにデュークは苦笑している。
長年の片思い(デューク談)が叶ったおかげか、毎晩デュークはメアリーを離さない。
結婚式から数日経ち、メアリーも日常生活に戻りたいと訴えてもデュークはまだ足りないようだ。
またベッドに連れ戻されそうな雰囲気を感じ取りメアリーは素早く身支度を整えるためにバスルームに向かった。
(信じられない!デューク様ってば!)
心では怒りつつも、鏡の中の自分の顔は幸せそうな顔をしていて慌てて頬を叩いてにやけている顔を正した。
「よしっ」
身支度を整えて部屋に戻るとデュークはまだベッドの上で横になっている。
日頃疲れているのだからゆっくりさせてあげたい気がしたが、さすがに昼過ぎまで寝ているのはどうだろうかと考えてメアリーはデュークの肩を揺すった。
「デューク様。そろそろ起きないと……」
「起きている……」
小さく呟いてゆっくりと起き上がったデュークにメアリーは白いシャツを差し出した。
流石にいつまでも上半身裸の姿は目のやり場に困ってしまう。
「着せてくれ」
「えーっ」
肩眉を上げながら言うデュークにメアリーは驚きながらも腕を上げているデュークにワイシャツを着せた。
両腕を通してもボタンを閉めようとしないデュークにメアリーは仕方なく前に回ってボタンを閉める。
「今日だけですよ」
毎日してあげてもいいのだがあまり甘やかすと何をされるか分かったものではない。
断りを入れるメアリーにデュークは肩をすくめた。
「言っている意味が良く分からない」
「またー!分からない振りをするのは止めてください!」
メアリーが怒るとデュークは嬉しそうに笑っている。
何が面白いのかさっぱり分からないが、彼が楽しそうならいいかとメアリーがボタンを閉め終わると今度は髪の毛を指さした。
「髪の毛も整えてくれ」
「えーっ。まぁ、いいですけれど……」
彼の長く美しい髪の毛を触るのは大好きだ。
こうして触らせてくれることが奇跡に思えてメアリーはいそいそと櫛と紐を用意する。
櫛で梳かさなくてもいいぐらいサラサラな銀の髪の毛はとても寝起きとは思えない。
ゆっくりと櫛で梳かしていく。
窓から差し込む光に当たりデュークの銀の髪の毛がキラキラと輝く。
「綺麗な髪の毛ですね」
いつまでも触っていたくなるような肌触りの言い髪の毛を撫でてメアリーが呟くとデュークは嬉しそうにニッコリと笑った。
「ありがとう。メアリーに褒められるのが世界で一番うれしい」
「そ、そんな、大げさな」
何事も大袈裟だが言葉にしてくれることは嬉しくてメアリーはこそばゆくなってくる。
美しいデュークの珍しい笑顔は心臓にも悪い。
(間違いなく、満面の笑みのデューク様を見たことがあるのは私だけのような気がするわ)
自分だけに見せるだろう彼の笑顔を見られて得したような気分になりながらサラサラの長い髪の毛を時間をかけて三つ編みにしていく。
「どうして三つ編みなのですか?」
何となくメアリーが聞くとデュークは肩をすくめた。
「一番邪魔にならない髪型だった」
「そうなんですね」
綺麗に三つ編みをして最後に紐で結ぶ。
完璧にできたと少し離れてデュークの姿を見つめた。
神々しいほどの美しさに惚れ惚れしていると、デュークは満足したのかベッドから降りた。
「仕方ないから起きるか……」
気怠そうに言ってバスルームに消えていくデュークを見送ってメアリーはため息をついた。
「これが毎朝続いたら私の心臓が持つかしら」
キラキラしている美しいデュークと毎朝こんなことをしていたらそのうちドキドキしすぎて心臓が止まってしまうのではないかと心配になってしまう。
それでも、毎朝こうしてデュークと過ごすことができるようにそっとメアリーは心の中で祈った。
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