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第二話 閃光の銀騎士

 目の前に現れた黒い異形が、周囲のマナをオドに変換しつつ吸い上げていく。その度に異形の身体は膨れ上がり、その質量は増している。


「どこまで膨れ上がるつもりなんだコイツ!」


 エルスが毒づ灯眞(とうま)いた。このままでは今居る路地を破壊しかねない。

 灯眞(とうま)もマテリアもエルスも、この異形の膨張を止めるために攻撃を加えるが、イマイチ効果が薄い。


「マスター、グングニルの使用許可を」

「出せませんねぇ。アレは街中で使うには威力が高すぎるので」


 とは言うものの、このままの手段ではジリ貧である。早急に解決策を練らないと路地が崩壊するか、最悪オドがここいら一帯を覆う事になるだろう。


(さて、どうしたものですかね。手が無いわけではないのですが……)


 灯眞(とうま)は胸中で独りごちた。だが、ここで使うには少し出し惜しみしてしまう。


 ――と。


『目標……補足。敵対目標と交戦中。オープンファイア。会長殿、そして愉快な仲間たち。離れていてくれたまえ』


 聞き覚えのある声。男性とも女性とも取れないが、その一言一言には不思議な安心感がある。にやりと薄く笑い、灯眞(とうま)はマテリアとエルスを伴って数メートル後方に下がった。


 ――刹那。


『システム:GLINT!! プラチナム・クラッカー‼』


 夜天とネオンを切り裂き、甲高い音を引っ提げて巨大な閃光が異形の真上に落下した。黒い異形が苦しそうに藻掻く。その上に馬乗りになっているのは翠銀の鎧騎士だ。剣も盾も持ってはいないことから、自身の四肢を武器としているのだろう。

 異形は何とか銀騎士を振りほどく。手痛いダメージを負ったからか異形は肩で息をしているようだが、銀騎士の方はただ静かに優雅に、目の前の異形と対峙していた。

 灯眞(とうま)が何か言おうとしたが、銀騎士はそれを手で制し、ゆっくりと言葉を発した。


『時間が押しているのは理解している。なぁに、三十秒もあれば済む』


 言うが否や、銀騎士は一足で異形との間合いを詰めた。繰り出された剛腕を身を屈めて回避し、勢いそのままにがら空きの胴体へ光を纏った拳を打ち付ける。

 まともに食らった異形は体をくの字に曲げて後方へ吹き飛んだ。しかしその先にはすでに銀騎士が回り込んでおり、今度は光を纏った右足で上空へ蹴り上げた。

 背面とふくらはぎのブースターを展開して飛び上がった銀騎士は、異形に追いつくと同時に光り輝く右手でその首根っこを掴み、その光を異形に流し込んで遥か彼方へ投げ飛ばす。

 数秒後、異形の身体はその身に宿したオドを蒸発させつつ光に包まれ、文字通り霧散した。

 銀騎士はそれを見据えて何も起こらないことを確認すると、静かに路地へ降り立った。


「いやいや助かりましたよ。一時はどうなることかと……」


 灯眞(とうま)がそう言いながら銀騎士を迎えると、鎧が瞬く間にアビスヤードへ収納され、そこには女性だけが残された。そんな彼女が、ゆっくりと立ち上がる。


 そこまで背は高くないがスタイルはよく、ボブカットのプラチナブロンドはネオンの光に晒されて尚美しい。

 ショート丈のライトグリーンのジャケットと、へそが覗く程度の長さの銀色のタンクトップ。ジャケットと同色の裾がわずかにフレアしたボトムス。少しヒールのあるショートブーツ。動きやすさを重視しているものの、そのすべてが仕立てのいいものだとわかる。

 振り返った顔は端正で気品を感じさせるが、その表情から快活な性格であることが分かった。


 しかしその肌の色は石膏のように白く、彼女が『人』ではないことを物語っていた。


「こちらも迎えが遅くなった。少々厄介事があってね。それは道すがら話すとするよ」


 人ならざる存在であるとわかっているが、その口調とコロコロ変わる表情は人のそれとまるで変わらない。


「わかりました。それでは、よろしくお願いしますよ、ローズ」

「任せてくれたまえ、会長殿」


 灯眞(とうま)達三人はローズを伴い、当初の目的地を目指した。


◆◆◆◆◆


 数メートル先で夜空を閃光が切り裂く。

 幾度となく見慣れたその煌めきは、どこか懐かしくも小賢しい。

 因縁、もしくは腐れ縁。世紀を経ても尚その煌めきは衰えない。むしろ力を増しているようにも見える。

 激しい打撃音が響き渡り、その音の元手だった物体が光を内包したままこちらに吹き飛んできた。

 刹那、炸裂する。


 しかし、その最中にいたはずの『黒い女』はその髪を一つも乱すことなく、片手間で作ったような魔術障壁の向こう側に漂っている。


「やぁねぇ……。少し塵がついちゃったわ」


 フリルの裾にほんの少しついた塵――つまるところ、ちょっとした肉片である――をつまんでふっと息を吹きかけて消滅させる。その口の端が微かに上向き、彼女は楽しそうに独りごちた。


「うふふ……。気付いていたみたいね『あのコ』……。愉しくなりそうねぇ、今回も」


 そう言って彼女は次元の狭間にその姿を消した。


 ――眠らない街、晄都ナイトメアの夜は更に深まって行くのだった。

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