魔王の面接
「おーい勇者ー」
勇者は今回のダンジョンでの戦利品でたくさん飲み食いしていた。そして俺に気がついた。
「なっ! あり得ないなんで生きて......」
「勇者様? この方は勇者様の身代わりになって亡くなったと......」
「え? ああ、アハハハ! 生きていたんだな良かったよ! 嬉しい限りだ!! 」
「あるぇ?勇者ぁ? 俺のこと突き落としてたよなぁ? 」
「そうなんですの!? 」
「そそそ、そんなわけがないじゃないか!! アハハハ......」
「あるぇ? 確か『騙されたな! 』って聞こえたよなぁ? 」
そこまで言うと、勇者は俺のところまで来て耳打ちした。
「あ、あまりあることないこと言わないほうがいいぞ? 俺の剣で切ってやるからな! 」
「お? じゃあやってみるか? 」
「ふん、いいだろう......表に出たまえ」
さてさて、この世界の勇者はどんな能力を持っているのか。
「ルールは無し。互いが死んでも文句なしだ! 君の情けない姿を通行人の皆様に見せることになってしまうがな!」
「ええよ」
「うおおお! アルティメットソード!! 」
普通の剣より長めの剣が俺に向かって振り下ろされた。まあでも
「時よ止まれい」
こちとら時間操作できるんですわ。とりあえずこの剣は没収。危ないからネ。
「時よ動けい」
「あ、あれ? 僕の聖剣は......」
「これのこと? 」
「ああそれ! 僕の聖剣! 返せって! 」
「危ないから没収な」
「くう......まあいい」
勇者は俺に向かって手をかざすと、火を出した。
「うおおおアルティメットファイアーだぁ!! 」
「あぶねぇって」
また時間を止めて、今度は背後に回った。
「な、この!! アルティメットファイアー!! 」
また時間停止で避ける。そんなことを何回も何回も繰り返した。
「はあ、はあ......」
「じゃあ今度は俺の番な」
俺は勇者にビンタした。
「アルティメット張り手」
「グブフゥッ!! 」
取り巻きの女たちのところまで吹っ飛ぶと、勇者は言った。
「た、頼む......助けて」
そして女たちのドスの効いた一言。
「「「ダサ」」」
「グフぅッ!!! 」
勇者に痛恨の一撃。ってことで俺の勝利。
「勇者に勝つなんて、すごいなあの人! 」
「カッコいいわぁ......」
「ああ、どもども」
まあでも、結局のところ会社もギルドもあまり変わらなかった。もっといい条件で働きたいんだが......
「うん? 何だこれ? 」
酒場の中に戻ると、先程まで勇者たちがいたテーブルに紙が置いてあった。
「どれどれ......魔王城の詳細か」
攻めようとしていたんだなこの強さで。すると下の方に気になる文を見つけた。
「魔王のバイト募集中か......」
この強さだったらラスボスにピッタリかもしれない。個人的に世界を救うヒーローよりも魔王の方が性に合ってる気がするし。
「魔王城行きたいなぁ」
ダンジョンでテレポートしたみたいにできた。禍々しい城だ。
「失礼しまーす」
中に入ると、スケルトンが案内をした。
「魔王って何するの? 」
「はい、魔王様は椅子に座っているだけでございます。指揮とか難しいことは我々がやるんですよ」
「へぇ......バイト募集するってことは魔王いないの? 」
「そうです。定年だったので」
「魔王に定年とかあるんだ......」
「......つきました。これより面接を行いますので、番号が呼ばれたらこの部屋に」
「はいよ」
しばらく順番を待っていると、自分の番号が呼ばれた。集団面接らしく、他の種族もいた。
「ええと、あなたは魔王になりたいですか? 」
「ゲヘヘ、なりてぇぜ! 」
「では少し魔法やスキルを見せてもらえますか? 」
「おうよ......パンチ! 」
「不採用。あなたは何かできますか? 」
ついに俺の番。
「えーっと、めっちゃ強いです」
「具体的に」
「......ここの参加者とか魔王城の魔物全員と戦っても勝てる自身があります」
俺がそう言った瞬間、周囲がクスクスと笑った。面接官も。
「そ、そうですか。フフ......じゃあやってみますか? 無理でしょうけど」
「いいですよ? 」