みよたみのりのこのはなだより 2022年4月9日オンエアー
この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。上記小説を読みたいという方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。
もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。
山奥にあるという設定の、架空の小さな村。このはな村は火の神、木花咲耶姫の伝説に基づく穏やかな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、小学生DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。
ルールの通りにしたせいで、怪我をしたことがあります。なんか、理不尽。
みなさんこんにちは、みよたみのりです。今日はスタジオに戻っての生放送です。先週はこのスタジオの目の前にある円形広場からお送りしたのですが、最後に雪山に埋められてしまって、番組の最後がドタバタしちゃって申し訳ありませんでした。あのあと、何あれいじめ? みたいなコメントもありましたが、この村の子どもは嫌がることを友達とかに無理やりさせることは無いので安心してください。ボクもいきなり雪に埋められた時はビックリしたけど、なんだかんだであのあと、さんごちゃんを引きずり込んで、そしたらさんごちゃんがまた別のコをつかまえて、といった感じでみんな埋められちゃいました。まだ雪はいっぱいあるので、まだいろいろ遊べますよ。
それでは、コノハヤサクヤヒメに守られし神の村、このはな村からお送りします、みよたみのりのこのはなだより。今日も元気にお送りしまーす。
みよたみのりのこのはなだより。今週はスタジオに戻って来ての生放送です。そして今週から、オープニングのひと言をつけることにしました。今日のお話のポイントみたいな感じです。
それから、今週はリモートでゲストを招待することにチャレンジします。と言っても、パソコンで相手をつなぐだけだし、それからこれ、昨日のうちに録音しちゃいましたので、よく考えたら生でもないです、てへ。とにかく面白そうなことを色々試している最中ですので、ご了承ください。
今日出演してくれるのは、このはな村役場の宮嵜さんです。今年新たにこのはな村に引っ越して来た皆さんに、村で取り組んでいることを教えてもらいます。では、その時の様子をお聞きください。
宮嵜さーん、こんにちはー。
「こんにちは。このはな村役場の宮嵜です。今日はよろしくお願いします」
こちらこそ、よろしくお願いします。宮嵜さんは、村の職員としてどんなことをやっていますか?
「はい、私は村役場にあります、資料室の管理を中心に仕事をしております。資料室は村の歴史や自然・文化などに関連する資料を集めた場所ですが、この二年ばかり来館の方が減っていますので、他にも村の色々な業務を兼ねています。この番組への出演も、村の情報を発信するという大事な業務の一つです」
わー、すごい仕事をされてるんですねー。ではさっそく、新しくこのはな村にお住まいになった皆様へのお知らせを教えて下さい。
「はい。このはな村にお住まいの皆様、こんにちは。そして、新たにこのはな村にお住まいになった皆様、ようこそいらっしゃいませ。今日は、新しくこの村に住み始めた皆様が非常に気になっていることのひとつではないかと思います、ごみの出し方についてお話します」
はい。ごみの出し方は、市区町村によって違ってますから、重要なことですね。この村のごみを出す時のルールの説明、さっそくお願いします。
「はい。このはな村では、ごみの種類を主に「もやすごみ」「資源ごみ」「プラスチック・ビニール等のごみ」「金属などのごみ」「危険なごみ」「粗大ごみ」に分類し、原則として平日の月曜日から土曜日まで収集しています」
はい。ちなみに、何曜日に何のごみを収集するんですか?
「全種類です」
は、はい?
「全、種類です」
えーっ? 全種類とは、どういうことですか? 普通は何曜日はもやすごみ、何曜日が資源ごみとか、曜日で分けてますよね? てゆうか、それじゃ分別がちゃんと出来ないんじゃないですか?
「いやいや、そこがポイントなんですよ、実はですね」
「……って、この小芝居、要る? みのりちゃん」
要るんですよぉ。こうやって聴きやすく、わかりやすく、このはな村でのごみの捨て方をですね、説明してもらおうと。
「みのりさん、顔赤くなってんじゃないですか?」
な、な、な、なってませんってば! 恥ずかしく、なんか、ないですっ! とーにかく! 全種類のごみを毎日収集ってどういうことか、説明してくださいっ!
「はーい、わかりました。えー、このはな村では先ほど挙げた方法に従ったごみの分別さえしてくれれば、原則どの日にごみを出しても構いません。これが、他の町や村との大きな違いです」
そーですねー、って一度小芝居から素に戻りますけど、ボクもびっくりしましたよ、最初は。なんで平日全ての曜日にごみを出せるのかって。
「これは小さな村だからできるんですが、普通のごみ収集車は村では使っていないんです」
あー、あれですよね。収集車って車の後ろでなんかグルグル回ってごみをつぶしてくやつ。
「それです。でも人口が少ないから、わざわざごみをつぶさなくても間に合うんです。ですからトラックの荷台を板で分けて、ごみの種類ごとに分ければ、毎日の収集が可能なんです」
ごみ収集の車が何台か来ることもありますね。
「それもやってますね。ごみの種類ごとに車を分ければ分別も簡単ですから。これも小さい村だから出来ることです。人口が多いと収集車がもっとたくさん必要になってきますから」
なるほどー。でも便利ですよね、いつでもどの種類のごみを出していいって。
「はい。さまざまな仕事の方がいて、生活のリズムもそれぞれ違いますから、何曜日の何時までにこの種類のごみを出してほしいとは言えないんですよ。例えばこの村は小さな宿泊施設が多いので、忙しい時期は毎日のようにごみが出ます。もちろん民間のごみ処理会社に回収を依頼すれば小まめに持って行ってくれますが、それぞれの事業所が遠くからそれらの収集車を呼ぶよりは、まとめて村で収集した方がごみ処理にかかる総合的なコストは減るという考えです」
そうですよねー、うちもペンションだから、いつも助かってます。
そう言えば分別っていえば、この村に来て、うちのお手伝いでごみの分別した時に、すごく楽だなって思ったんですけど、なんか違うんですか?
「違う、というと?」
うーん、何というか、分けやすい、んですよ。他のとこだとこれはどのごみ? みたいのを結構考えたりしましたから。
「あーはいはい、きっとそれは、分別の基準を分かりやすくしているからだと思います」
なるほどー。詳しく言うと、どんな感じですか?
「そうですね、まず、もやすごみと言ったら、みのりさんは何を思い浮かべますか?」
あー、それは簡単です。紙とか、野菜とかの食べられないところとかの生ごみですよね。あ、でも、紙でも新聞とかは資源ごみか。あとお菓子の箱とか、牛乳のパックとかも分けて出す、はずなんだけど、そういえば分けてないかも。えーとそれからそれから、紙の箱はリサイクルだけど、あれ、洗剤の箱ってどうなんだろ?
「ははは、困ってますね。そう、もやすごみってどこまでがそうなのか、基準が難しいし、市町村によっても考え方が違うんですよ。そこでこのはな村では、紙は原則もやすごみでOK、資源ごみとして、きれいな新聞・雑誌・チラシ・ダンボール等なら出してもよい、というふうに決めています」
へー。でも、出しても良い、ってあまり聞かない気がしますよ。なんか他の町とかだと、紙の紙はキホン資源ごみで、リサイクルしにくい物だけもやすごみ、みたいな感じですよね。
「そうなんです。それがごみを出す際の第一の関門だと考えて、このはな村では『迷ったらもやすごみ』というふうにしています。で、結果、この方がリサイクルの効率が良くなったんですね。以前は、紙類はなんでも資源ごみだと思ってごみを出される方も結構いらしたのですが、リサイクルできない紙類も混ざったりして、それを取り除くのに却って手間がかかる事もあるんですよ」
うんうん、あっそれで今、洗剤の箱はもやすごみだよ、ってコメントが来ました。中の洗剤がリサイクルの邪魔になるってことみたいですね。でも、汚れた紙はリサイクルできないよって説明したれると、洗剤だったらキレイだからいいよね? って思いません?
「そう、その辺が伝え方の難しいところなんです。要はリサイクルをスムーズにするためにはこうして下さい、ということを伝えたいんですが、それには洗剤なら、紙以外の物質が付着しているとリサイクルしにくいと説明できるんです。ですがそうすると、ならばお菓子の紙箱はプラスチックでコーティングされてるじゃないか、はては印刷してるインクはどうなんだ、といった事にもなりますし、それらについては勿論対策済みなのですが、それはどうやっているのか、ではなぜ洗剤では対策をしないんだ、というふうに、疑問がキリなく湧き出てきます。それなら、やり方が分かる方だけ分別すればいいし、新聞のような一目で資源ごみだと分かるもの以外は、とりあえずもやすごみでいいよ、ということにしたのです」
なるほどー。つまり、捨てる側の気持ちを考えたんですね。
「捨てる側もそうですし、ごみを処理する側のことも考えてのことです。中途半端に分別されるよりも、これはすぐにリサイクルできる、というものだけまとめてくれた方が取り扱いしやすいんです。それに、ごみ処理というのは危険が伴う仕事でもありますが、危険は少しでも減らしたいし、減らさないといけない、最終的には危険ゼロを目指さないといけないんです」
おおー、すごいー。やっぱりごみの収集って、危険があるんですか?
「あります。例えば衛生面、つまり細菌やウィルスなどに感染するかもしれませんし、また心配なのは怪我です。中途半端な分別によってですね、これは以前あった事故なのですが、牛乳のパックを資源として出してくれたのは良いのですが、その中に折れたカッターの刃が混じっていて、作業員が切り傷を負ってしまったんです。それ以降、村では牛乳などの紙パックは資源ごみとして回収をしておりません」
そうそう、ですよねー! ボク、前住んでたとこで牛乳パックを中身洗ってからカッターで切り開いてるとき、指切っちゃったことありますもん。今だったら、なんであんなことしなきゃいけなかったのかなー、って思います。
「そう、捨てる方の怪我も多いのではないかと思います。ですから村では牛乳パックは原則もやすごみです。もともとこの村では、牛乳は牧場から瓶で買うことが多いというのもあります。あと、ペットボトルのフィルムもなかなかくせ者でしてね。目が悪くなると『ここからはがせます』という字が小さくて読めないんです。それと最近はだいぶ減りましたが、封筒の透明な窓、わかりますか? 中の手紙に宛名が印刷してあって、それを中に入れてからも封筒の外から読めるものなんですが、あれが薄いプラスチックでできていたものがあったんです。でも封筒は紙ですから、分別しないといけない。ところが綺麗に分けようとしたら指に切り傷ができた、なんて例もあります。ですから、捨てる人やそれを処理する人が安全にごみを取り扱えるように、というのが村の基本的な考え方なんです」
うんうん、それとっても大事ですよね。
ありがとうございます。それでは、このはな村のごみの分別の仕方について、もう一度簡単に教えてください。
「はい。まず資源ごみは新聞・雑誌・段ボール・びん・缶・ペットボトルです。資源ごみの中の紙類は何か余計なものがついてる場合にはもやすごみで。またびん・缶・ペットボトルは軽く中をゆすいでから捨てて下さい。それぞれ専用の回収ボックスがあります。次にペットボトル以外のプラスチックごみ。容器包装プラスチックは別という市町村が多いですが、このはな村ではプラスチック類は全て同じ捨て方で構いません。また、ビニールや発泡スチロールなどもプラスチック類に含まれますので、ご注意下さい。金属や、それを含むもの等につきましては、もえないごみとなります。また、危険なごみには、体温計・電池・割れたガラスや陶器・ライター・スプレー缶・注射針・裁縫針・刃物類などとなっておりますので、これらについては他のごみと絶対に混ぜないようお願いします」
ありがとうございました。本日は、このはな村役場の宮嵜さんに、ごみの捨て方についてお聞きしました。
はい、宮嵜さんのお話でした。このはな村のごみの出し方は、各ごみ捨て場にも書いてありますので参考にしてください。分け方がシンプルになっている分、しっかりと分けてごみを出すようお願いします。
みよたみのりのこのはなだより、そろそろお別れの時間です。ごみの分別についてはそれぞれの町や村で色々な賛否両論があるみたいですね。なかには分別をとても細かくしていった結果、リサイクルで黒字になって、それを元に奨学金を作った町もあるようです。その町では住民の皆さんがごみステーションに集まってみんなでやり方を教え合いながら進めているので、このはな村のように、ごみを出す時間が家によってバラバラで、人口も少ないところでは難しいんだそうです。リサイクルは基本悪いことではないので、これからもしっかりルールを守ってごみを出していきたいです。
ではまた来週、さようなら〜。
って、あっ、六年生になりましたー、って言うの忘れてた。
またも火曜日更新になってしまった……。このままズルズルとずれていって一周遅れになるのが一番怖い……。
自らの性格を鑑みるに、こまめに締切を設けておいて、ようやくこのように数日遅れで発表する始末ですから、少なくとも締切は無くすわけにはいかない、でも締切にこだわると、他にも短編とか書きたい構想もあるのにそっちがお留守になっていけない、なんて具合に色々考えた末、とりあえず来週は遅くとも月曜までには続き書け、とにかくつまらん駄作だろうがとにかく書け、の精神でやっております、はい。




