みよたみのりのこのはなだより 2022年3月26日
この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。上記小説を読みたいという方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。
もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。
山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、小学生DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。
架空のラジオ番組の文字起こしという体裁のため、文法や文中記号の使い方が本来のルールとあえて異なった形になっている点をご了承願います。原則として地の文はメインパーソナリティのおしゃべり、カギカッコ内は他の登場人物のおしゃべりです。
また、この小説は言うまでもなくフィクションです。
みなさんこんにちは、みよたみのりです。今日はスタジオに戻っての生放送です。先々週はこのはな村営スキー場から生放送で、そのあと録音した分を先週お送りしました。あっそうそう、先週分の編集はディレクターさんと、このはなFMで音響エンジニアの体験をしてる子たちでやってくれたんですけど、なんで夜のとこ流したんですか〜? お昼寝に入るとこで切ってくれればいいのに、なんで、さんごちゃんとおしゃべりしてたトコで時間いっぱいあるでしょ? なんでそこの一部をわざわざ切って、ボクたちが寝過ごして夜になってアタフタしてるとこを流すんですか〜? それに、これが編集したやつだよ、っていって聞かせてもらったやつは昼で終わってたじゃないですか〜。先週聴いててびっくりしましたよ、もう。ボクが聴いたのと違くなってるから。え? 文句はあとで聞くからオープニング閉めて? はいはい、わかりました。
それでは、コノハヤサクヤヒメに守られし神の村、このはな村からお送りします、みよたみのりのこのはなだより。今日も元気にお送りしまーす。
みよたみのりのこのはなだより。今週はスタジオに戻って来ての生放送です。
先週の録音放送では、夜のあたふたしてたトコとか、おトイレがまんしてたトコまで放送されちゃって、ホント恥ずかしいです。あのあと一時間くらいかなあ、吹雪が止んだからあの雪埋もれスポットから避難小屋に行ったんですよ。そしたら、さんごちゃんの言ったとおりで避難小屋の中の方が寒いの! それで今度は小屋の外の壁のあたりが雪の吹き溜まりになってるから、そこに入ったの。で、日曜の朝、無事に帰って来ましたー!
で、雪に埋もれるのも、雪の中に子どもだけで一晩いるのも、このはな村だから出来ることなので、マネしないでくださいね。
えー、今週もいっぱいコメントいただきました。ありがとうございます。
「どうして配信してチャンネルの名前は『このはな村だより』なのに番組は『このはなだより』なの?」
あーこれは、最初に配信決まったのがこの番組なんですよ。それでチャンネル名を「このはなだより(仮)」としておいて、あとから他の番組も追加したので、この番組以外もあるよって意味でチャンネルの名前変えました。でも考える時間なかったんで、とりあえず「村」って間に入れておこうってことになって、それからそのままなんです。なんかこの名前で落ち着いちゃったからまーいっか、って感じみたいです。
もうひとつ。
「サテライトスタジオってどんなとこなんですか? 映像がないのでどんなところでおしゃべりしているのか気になります」
そうそう、このご質問いっぱいいただいてます。ありがとうございます。
えっと、ボクたちはサテライトスタジオって呼んでますけど、村役場の分署というのがあって、そこの一階におっきなガラス窓があって、外からも中からも見えるように、建物の中に電話ボックスみたいな箱があって、その中でしゃべってます。スタジオと言ってもちっちゃいですよ。
スタジオの外はですね、ランナバウトってボクたちが呼んでる、広場みたいなところになってます。よく言うロータリーなんですけど、昔はここが村の中心で、この広場から、ほほうしゃ、せん上? に、道が広がってるんです。今は役場がお引越しして、車が入れないようにしてます。
広場のまわりは、童話に出てくるみたいな建物が建ってて、その中のひとつが役場の分署です。このはな村は外国の人たちが別荘を作るようになって発展した村で、建物はドイツとかに似ています。よく、ゲームの中に入ったみたいって言われます。屋根のとんがったおうちがたくさんです。
なんか、口で言っても伝わりにくいですけど、外出て見て回っていいですか? いい? やったー。それじゃ、曲の間に外に出る準備しまーす。
はい、外にでましたー。今日は曇ってますが、あんまり寒くないです。ボクは今日スキーウェアのサロペットにウィンドブレーカーを合わせてます。ブーツは裏地が厚めのレインブーツです。雪が解けてきてるので、防災優先です。
村役場の分署は木造の三階建てです。大正時代に建てられました。でも手入れがしっかりしてるので、今もキレイです。他にも、ぐるっと周りを見ると、昔から建っている建物がいっぱい見えます。たとえば、えっとなんだっけ、うーん、あ、ちょうどいいとこに!
ふっちゃーん! こういう景色、何みたいって言うんだっけ?
「んー? あれみーちゃん、本番中じゃねーん?」
本番だよー。でも外で放送してるのー、ここの広場の紹介しようと思ってー。なんだっけ、これ、あーるなんとかみたいな。
「RPG。そういうジャンルのゲームに似てるんさ、この広場って。あとよく聞くのは、異世界に転生した感じって言う人いるよね」
あーそうそう、そんなふうに言うの、聞いたことあるー。どんな感じか、ってのを説明したくって。この村の自慢の景色だもん。
「その割に、なになにみたいっていうの分かんなかったじゃん」
忘れるのはしょうがないでしょー? で、これからこの広場のしょうか、え?
すみません、時間無くなりました。村からのお知らせです。
村では、無料PCR検査を引き続き実施中です。対象となるのは、県内に在住の方、村内に在住・在学・在勤・および一定期間滞在する方、また、業務・見学等の目的で村内にお越しのすべての方が対象となります。
実施会場は木花村役場駐車場などの四ヶ所。検査の結果は同日中に判明し、無料の陰性証明書も即日発行可能です。詳しくはこのはな村ホームページ・村役場保健衛生課までお問合せ下さい。またこのはなFMの他の番組でも情報を発信しております。なお、四月からの新年度もこの事業は継続します。
次に、二〇二二年度、カッコ、令和四年度の村で行う成人向け検診についてのお知らせです。村では次年度におきましても、事業所等で健康診断を受けられない方向けの基本健康健診は無料といたします。その他、有料の各種がん検診・歯科検診・肝炎ウィルス検診はそれぞれ五百円から千円、また、医療機関による脳ドック・白内障および緑内障検診等につきましての検査費用の補助を引き続き行います。各種検診の対象者範囲や補助の詳細等につきましては、ホームページ又は保健衛生課までお問い合わせ下さい。
なお、次年度より医療機関による各種健診につきましては、一定の年齢以上の方は五年おきに無料となります。対象となる方については、村の広報等でお知らせ致します。
以上、村からのお知らせでした。
みよたみのりのこのはなだより、お別れの時間です。今週はスタジオのある広場からお送りしようと、番組やってる時に思いついたのですが、時間が無くなってしまいました。次回はちゃんと準備してから放送する予定です。
ではまた来週、さようなら〜。
時間が足りません。
パーソナリティのみーちゃんは番組の時間を読み違えましたが、作者は執筆スピードを読み違えました。予定より二日遅れの更新となり、申し訳ございません。
次回、このはな村の特徴的な部分に踏み込んでいきますので、今度こそしっかり計画立てて書いていきます、いきますといったらいきま、す……。