みよたみのりのこのはなだより 2022年3月5日
この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。上記小説を読みたいという方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。
もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。
山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、小学生DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。
(この小説は言うまでもなくフィクションです)
みなさんこんにちは、みよたみのりです。今日もボクの住んでいる村、このはな村の情報をお送りします。
今日のこのはな村、お天気はくもりですが、ときどきお日様がうすーく照らしてくれて、だいぶ暖かくなって、さっきスタジオの外にある温度計を見たら、零度まで上がってましたー!
でも、今日スタジオまで来るときに、やっぱし滑るんですよー、道が。今週のはじめくらいから、ちょっとずつあったかくなってるんで、学校に行くときもちょっと怖い事あります。やっぱ、寒い時の方が歩きやすくていいですねー。
って言ってると、ええー? 寒いの大変だよーって思う人もいるかもしれないですけど、それはどういうことか、あとでお話します。
それでは、コノハヤサクヤヒメに守られし神の村、このはな村からお送りします。みよたみのりのこのはなだより、それでは今日も始まりまーす。
みよたみのりのこのはなだより、生放送でお送りしています。
先週からネット配信が始まりまして、コメントたくさんいただきました。ありがとうございます。いくつか読んでみますね。えーっと、まずこちら。
「どうして子供がパソやってんの?」
パソ、は、パーソナリティのことかな。えっと、この放送は学校の課外活動のひとつなんです。このはな村の学校では、児童や生徒がクラブ活動とか委員会とかで、社会での活動を体験できるんです。この放送はボクが一人でやってますが、何人かでやってる番組もあるし、あと映像配信やってる子もいます。あと学校のある時とかは、大人の人もしゃべりますよー。
えっとそれから、うわ、
「みのりちゃんの声、可愛い」
きゃあ、ありがとうございます。うれしいです。
またコメントは、生放送に書くことも出来ます。ただし、ディレクターさんがボクに見せてもいいものを選んで見せてくれることになってますので、少し時間がずれちゃいます。ご了承ください。
それでは、どんなコメント来てるか読んでみまーす。あ、これボクも、さいしょこの村に来た時感じました。
「零度で暖かいってマジ?」
はい、マジです。
ボクは今年の冬が、このはな村のはじめての冬だったんですが、とにかく寒いんですよ。朝はマイナス十度よりもっと寒くなるのが普通だし、昼もそんなに温度上がらないです。だからこの村で零度になると、春が来るのかなーって思います。
あ、あとこれも思いました。
「雪が解けたら、歩きやすくない?」
あっこれ、ちょうど最初にお話した、雪があるほうが歩きやすいって話に関係しますね。
あの、ボク前の学年の時まで、別のところに住んでたんです。そこも雪いっぱい降るんですけど、道路とかはどんどん雪解かしちゃうんですよ。スプリンクラーっていうのがあって、水を道路に流して解かすんです。
でも、このはな村は水で雪を解かしても、夜になると凍っちゃうから、かえって危なくって、透明な水が凍ると、凍ってるって見てわかんないことがあるから、わざと雪は残しておきます。
それで、雪が積もってる方が歩きやすいっていうのは、歩道の雪をよけちゃうと、かえって滑るんです。解けた雪がまた凍って平らな氷になっちゃうから、歩道は多めに雪を残して、靴がちょっと埋まるようにすると滑りにくいんです。
「雪かき大変でしょ?」
うーん、そうでもないですよ。さっきもお話しましたけど、わざと雪を残したりするし、それに、いくら雪かきしてもまた積もるんだから、別にいいでしょ、って感じなんですよ。この村の人って。
「どんなことして遊ぶの? 家? 外?」
えーっ、外に決まってるじゃないですかー。こーんなに雪いっぱいなんですよ? せっかく雪いっぱいなのに、家の中で遊ぶなんてもったいないです。ん?
「雪冷たいし、寒いから外出たくない」
「雪遊びのあとって服や靴がぬれて冷たいよね」
えー、そんなことないですよ。えっとね、このはな村の雪はサラサラで、手でにぎっても固まらないんです。だから濡れません。もちろん、普通の服や靴じゃダメですよ。ボクたちはみんな、普段着がスキーウェアだし、靴もスノーブーツです。ボクも今、スキーウェアを着てしゃべってま、あ、バイバーイ。えっと、今スタジオの前をちっちゃい双子の女の子が歩きながら手を振ってくれました。可愛いー。
あっそうそう、このはな村でスキーやスノボをするなら、ワンピースのウェアがオススメです。ツナギとかとも言いますけど、今通った子たちもそうだったんですけど、ちっちゃい子がよく着るような上下ワンセットのウェアです。
そうでなければ、ボクが今日そうなんですけど、ツーピースでも胸のところまで布があるのがいいですよ。このはな村の雪ってすっごいサラサラだから、パンツの上の丈が短いウェアだと、転んだとき雪が入って、すっごく冷たいです。ボクの今日着てるウェアはサロペットで、その上にフリース着てます。あっ違った。えーっとこれ、なんて言うんでしたっけ、あっそうだ、オーバーホールとかリブパンツとか言うやつです。サロペットは背中に布が無いのを呼ぶみたいです。難しいですね。
でも、スキーウェアで布が上の方まであるのは最近見ないってうちのお母さん言ってたんですけど、そうなんですか? え? あ、そーなんだー。なんか、スノボウェアの方が雪が入りやすいから残ってるけど、スキーは派手に転ばないからじゃないか、ってディレクターさんが教えてくれました。んー、でもこのはな村はスキーでも雪が入るんですよねー。あと、みんな斜面攻めるからー。結構みんなすってんころりんしてますからー。実際どうなんでしょうねー。
それで雪の中での遊びはですね、スキーやスノボもやるし、スノーシューも楽しいですね。夏は通れない畑の中の道も自由に歩けるんですよ。だから友達の家までまっすぐ行けちゃったりするんで楽です。でも真似しないでくださいね。多分、このはな村だけですから。畑の中とか勝手に歩いていいのは。
あと、雪の中って実はけっこうあったかいんですよ、知ってました? ほら、風が冷たいじゃないですか、温度がマイナスになると。でも水って零度で凍るでしょ? だからそれより冷たくはなりにくいんです、たぶん。
だからボクたちがよくやるのは、雪に埋まる遊びです。海に行くと砂に埋まったりするでしょ? あれと同じカンジです。スキーウェアと、あったかくて水を通しにくいブーツを着てれば、このはな村の雪はサラサラで水分が少ないから、ぬれて寒いってことも無いし、それに、すっごく雪がふかふかで、気持ちいいんですよ〜?
あ、これ真似しないで下さいね。ちゃんと安全なやり方があるんで、それ守らないと出られなくなっちゃいますから。どんな風に遊ぶのかは、また今度お話しします。
とにかく、このはな村の子どもは、みーんな雪が大好きです。大人も大好きです。
以上、今日のフリートークでした。
村からのお知らせです。
このはな村では、無料PCR検査を引き続き実施中です。対象となるのは、村内に在住・在学・在勤・および一定期間滞在するすべての方、また、業務・見学等の目的で村内にお越しのすべての方が対象となります。
実施会場は木花村役場駐車場などの四ヶ所。検査の結果は同日中に判明し、陰性の場合、証明書も即日発行可能です。待ち時間が発生する場合には整理券を発行し、その順に検査を行うことがありますので御了承ください。
なお、この検査で陽性反応が出た場合、濃厚接触者と判断される方を含め、速やかに村内の指定宿泊施設に待機していただいたのち、保健所等との連携により入院等の措置をとります。また、希望および症状により村内指定宿泊施設での待機を継続することもできます。指定宿泊施設には看護師が常駐し、医師による毎日の往診や、容体に変化があった際の迅速な対応が可能となっています。
なお、陽性者の療養期間の短縮が一部で可能となっていますが、木花村では引き続き十四日間の療養を要請しておりますので、ご了承ください。
みよたみのりのこのはなだより。そろそろお時間です。次回もボクがおしゃべりしますので、また聴いてくれると嬉しいです。それでは、またね〜。
更新頻度を高めようと思って、この連載を始めたのですが、その狙いは今のところ上手く行きそうです。まだ今ひとつ物語が動いていないというか、架空のラジオ番組のオンエア部分をそのまま書き起こしたようなスタイルなので動かすのは難しいのですが、次回あたりから色々変化を持たせようと計画しています。また巡り会えましたら、お読みいただけると幸いです。