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2022年6月25日 みよたみのりのこのはなだより

 この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。上記小説を読みたいという方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。

 もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。

 山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、小学生DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。

 架空のラジオ番組の文字起こしという体裁のため、文法や文中記号の使い方が本来のルールとあえて異なった形になっている点をご了承願います。原則として地の文はメインパーソナリティのおしゃべり、カギカッコ内は他の登場人物のおしゃべりです。

また、この小説は言うまでもなくフィクションです。

 うう〜、毎日毎日ジメジメムシムシ、梅雨ってホントいや〜。


 なーんてね!


 みなさんこんにちは、みよたみのりです。梅雨真っ只中のこのはな村ですが、雨は降っても蒸し暑くはなりません。なんたってスタジオのある中央広場は標高一四〇〇メートルを超える高原地帯! 蒸し蒸しどころか、朝は寒いくらいです。なので逆に寒くて体調崩さないように、皆様お気をつけ下さいませ、と言いたいところですが、今日の天気は思いっきり晴れ! 気温が思いっきり上がる気配なので熱中症にも要注意です!

 それでは、コノハナサクヤヒメに守られし神の村、このはな村からお送りします、みよたみのりのこのはなだより、今週もよろしくお願いしまーす。


 みよたみのりのこのはなだより。先週はこのはな村の夏の天気の特徴などについてお話しました。今週はそれを踏まえて、夏のこのはな村で注意しなければいけないことについて、もっと突っ込んでいきます。

 それでなんか、今日は全国的にものすごーく暑くなっているようです。がっ! スタジオ前の温度計はもう少しで二十五度になるかなーって、まだそれくらいです。でもこれを「まだ」と言ってるうちは、このはな村に慣れていない証拠だって言うんですよ、村の人たちは。村の人はどう言うんですか、はいどうぞ。

「ええーっ!? もう、二十五度になっちゃうの? まだ六月なのに?」

 というわけで今日は、ボクの同級生でこのはな村で生まれ育った、七条美留久さんがゲストです。みるちゃん、今日はよろしくお願いします。

「よろしくお願いします。七条美留久、みるちゃんです。名前がミルクなので、略してみるちゃんと呼ばれています。今日は、このはな村で子ども達に教えられる、夏の雨から身を守る方法をお話しに来ました」

はい、しっかり聞いてみたいと思います。で、みるちゃんって呼んだほうが楽だからそうしますけど、夏の雨から身を守るって、そんなに大それたことなの? じゃなかった、大それたことなんですか?

「あ、ですますじゃなくていいんじゃない? さんごちゃんもラジオ出る時、全然普通と同じしゃべり方でしょ?」

あーうんうん、さんごちゃんは敬語知らないからしょうがないけど、でも友達同士だからカタくない方がいいよね。あ、なんかスタジオの外で騒いでる人がいるけど、そのさんごちゃんはほっといて、夏の雨について気をつけなきゃいけないことって、どんなことなの?

「うん、あたしん家はずーっと昔からこのはな村に住んでるんだけど、毎年毎年、夏になるとすっごい大雨が降るのね。だからそれに気をつけるための教科書みたいな事が伝わってるの。うちだけじゃなくて、周りのお家も全部、てゆうか、学校でも夏になると教わるよね?」

うん、教わる教わる。教えてもらったあとに、教室に貼ったり、スマホで写真撮ったりしたよ。でも改めてラジオで言っとけば、観光の人とかも知ることが出来るし、どうしてそうするのかってとこまで細かくはボクも知らないから、なんつーか、深ーく掘り下げたいっていうのかな? そんな感じ。

「あー、なんか分かる。このはな村ってすっごく変わった習慣がいっぱいあるじゃない? だから引っ越してきたみーちゃんは、なんでそうするの? こうしちゃいけないの? とかいうギモンがあるわけでしょ?」

そう、そういうことそういうこと! そこが聞きたいの! 去年は村のいろんな習慣を、言われるままにしてた感じだったから、二年目はちゃんと理由を知って色んなことして行きたいの!

「おっけー。任せてね。うちはずーっとこのはな村に住んでるから、バッチリだよ」


 では、このはな村で天気が急に悪くなったときに取る行動として、ボクたちがいつも教わってることはどんな事かを紹介します。

 夏の外での活動注意点・雷雨編

 一 雨具を瞬時に着用出来るようにして持ち運ぶか常時着用する

 二 雷雨の来る気配がしたらすぐ安全な場所に避難する 

 三 避難場所は建物の中が良いが遠い場合は無理せずより近くの安全な場所に避難する

 四 避難場所が屋外の場合すぐに雨具を着用する

 五 雨が降り出したらじっとして収まるのを待つ


 ですよね。うーん、これ全部突っ込み所ありそうなんですけど、まず、瞬時に着用って、そこまでする必要ある?

「あるよぉー。ほんっとすぐに降ってくるんだから。でぇ、あるあるなんだけど、天気が急に悪くなってからレインウェア出そうとしたらリュックの底の方に入ってて出てこない出てこないー、ってやってるうちに降り始めたりするもん。特に観光客の人がよくやってるねー。あたしは学校行く時はランドセルの防水カバーがいちばん上に入ってるから、その中にレインウェア入れてるよ。ランドセルの上の開いてるトコから手を入れてすぐ出せるようになってるから、カバーかぶせてレインウェア着て、はい完了」

あっ、それはボクもやってるよ。やってるけど、でもその前に聞きたいのは、

「ん? なに?」

どーしてレインウェア前提なの?


 「えー? だってそういうもんでしょ? 雨具って言ったらレインウェアだと思わない?」

いや、それは人によると思うけど。それより、雨が降ってきたら最初は傘差さない?

「傘? んー、普通の年の梅雨みたくシトシト雨だったら差すけど、夏はムリ。夏に降る雷雨はほんっとに怖いから。傘はぜんっぜん役に立たないもん」

う、うん。ボクも去年すんごい大雨があったの覚えてるから分かるけど、あっ、思い出した!

「え、何?」

去年、ボクとみるちゃんとさんごちゃんで遊んだ時のこと!


 「去年? 去年のいつ? あたしたち何度も遊んでるから分かんないけど」

んーとね、それにはまず、注意点のニについて聞かなきゃ。みるちゃん、雷雨の来る気配って、どんなだったっけ?

「うん、雷雨の来る気配はね、遠くからゴロゴロって小さい雷が聞こえてきたら即避難。でもこれは当たり前。あとは急に強い風が吹いてきた時も逃げ始めたほうがいいよね。変に蒸し蒸ししたり、逆にやたら冷たいのもキケン」

あと、くもってきた時も危ないよね?

「いや、くもってきた時はもう遅いことが多いかな。まだ空の半分は晴れてても、もう半分は雲で真っ黒なんてこともあるから。入道雲が近づいてきたり、なんなら太陽が雲に隠れたらもう逃げる準備した方がいいよ。夏の雨はほんっと足が速いから」

そんなに速いんだ、ってそうだったね、うん。あの時、ほんっと怖かったもん。

「で、あの時って、いつ? いつ遊んだ時?」

 それはね、注意点の三番目、避難する場所の話なんだけどね。まず建物の中がいいのは分かるよ。でも去年、さんごちゃん達と一緒に遊んでた時、ゲストハウスまでダッシュすれば間に合ったのに、ダグアウトで待ってたことあったよね。あの時、なんであそこで雨宿りしたの?

「あー、運動公園の話? いや、ゴロゴロ鳴り出したら動いちゃダメだよ。あ、ラジオ聴いてる皆さんに説明します。このはな村にも運動公園があって、広いんですがその代わり建物がほとんど無いんです。あたし達は野球場で遊んでたんですが、みんながゲストハウスって呼んでる売店とか入ってる建物までちょっと遠いんで、ゴロッて聞こえた瞬間、野球場のダグアウトに逃げ込んだんです。で、運動公園は建物はほとんど無いけど、ダグアウトとかに避雷設備が付いてるんですよ」

うん、それはわかるけど、ゲストハウスってそんな遠いっけ? 二百メートルくらいでしょ? あそこから。

「その二百メートルがキケンなんだってば。ちょっとコロコロ言ったと思ったら、いきなりどーんって来るから。山の雷は、ほんっと急に襲ってくるよ。野球場の真ん中突っ切ってく間に直撃されるかもしんない」

えー? それちょっと大げさじゃない?

「ぜんっぜん無い無い、大げさじゃない。だってあの次の日かな、神社で遊んでる時もゴロッと鳴ったさ。んで、すぐ社務所に逃げ込んで、スーンに本殿の避雷針にずばーん、って」

うん、あれは、むっちゃびびった。そうだったね、うん。それはそうと、スーンはこのはな村の方言だから訳すと、すぐ、って意味ですー。

「あっ、そーだったー。みーちゃん、とらすれ、めしめしだんけー」

翻訳ありがとう、と言っております。どういたしまして、ユルカン。


 でもよくわかった。四番目の、屋外だったらすぐに雨具、の意味。

「そゆこと。三十秒ダッシュすれば建物につくかもしれないと思っても、先にその場でレインウェア着ちゃうの。その三十秒のあいだに落雷するかもだし、突風が来て飛ばされちゃうかもだし、残り十秒で土砂降りになってびしょ濡れになったりするかもしれないし」

うんうん。このはな村って夕立どころじゃないすっごいにわか雨に、突風と雷がついてくるから、全部に気をつけないといけないもんね。それで五番目の、降り始めたらじっと待つ、ってとこにつながるんだね。

「だねー。どんなに大雨になっても、雷とか風とか鳴ったり吹いたりしてるうちは動いちゃダメだから、たとえ建物が無い野原の真ん中でも、身体を低くしてじっとしてるの。雷は高いところに落ちるから」

それよく言うねー。木の下で雨宿りってだめなんでしょ?

「だめだめ。よく言うのは、まず木から最低四メートル離れて、そこから木を見たときに四十五度以内に木のてっぺんが見えるようなところが安全なんだよ」

んーと、四メートル離れて、四十五度、って、んっ? どのくらい?

「機能がたくさんついてるコンパスで測れるよ。あ、コンパスって方位磁針のことね。マル書くやつじゃないよ」

わかってるよぉ、おとーさんミリタリーコンパスっての持ってるもん。

「おー、みーちゃんも、しっかりケアしてるね」

うん。使い方わかんないけど。

「わからんのかーいっ!」


 みよたみのりのこのはなだより、今日はこのはな村での夏の雨対策についてお送りしました。このはな村は山の中にあるというか、このはな村が山そのものみたいな厳しい自然のなかにありますので、お越しになる方はどうかお気をつけください。

 それでは、みよたみのりのこのはなだより、また来週、よろしくお願いしま〜す。


 

 だいたい土曜日に放送(した設定)分を翌週前半に出すルーティンが確立してきた感じです。継続は力なり、どんな駄文でもいいから書き続けることが大事、という一心で取り組んでいるのですが、その一心だけしか守られていないものですから、相変わらず中身が伴ってないまんまなのは困ったものでして……。

 こちらはちゃちゃっと軽く仕上げて、別の小説を書く時間を取りたいです。プロットは頭の中にいっぱいありますから、腰を据えて取り組むものと並行していきたいと思ってはいます。

 最近の夏はとにかく暑いので、高原で涼みたいですね。もっとも近年はかつての避暑地が避暑地で無くなっている、というような話も聞きますが、コンクリートに覆われた都会の灼熱よりはずっと良いはずですので……。

 作中に出てきた雷が近づいてきた時の避難方法は、夏山で雷に遭遇した際の一般的な対処法を参考にしていますが、実際の山行にあたっては最新の気象情報に十分な装備、正しい注意点を知り、守るようどうかお願いいたします。

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